第一余弦定理とその3通りの証明

第一余弦定理

第一余弦定理

三角形 ABCABC に対して,

  • a=bcosC+ccosBa=b\cos C+c\cos B
  • b=ccosA+acosCb=c\cos A+a\cos C
  • c=acosB+bcosAc=a\cos B+b\cos A

めったに見ない第一余弦定理の解説と証明です。

第一余弦定理について

  • 通常「余弦定理」と言えば第二余弦定理 (a2=b2+c22bccosAa^2=b^2+c^2-2bc\cos A などのこと)を指します。第二余弦定理は非常に重要です。
  • 第一余弦定理は一瞬で導ける(以下の証明1)上にめったに使わないので覚える必要はありません。
  • 役に立つ定理ではないですが,第一余弦定理をいろいろな方法で証明することは三角関数のよい練習になります。

以下では第一余弦定理: a=bcosC+ccosBa=b\cos C+c\cos B を3通りの方法で証明します。

  1. 垂線を用いる図形的な方法
  2. 第二余弦定理を用いる方法
  3. 正弦定理を用いる方法

垂線を用いた第一余弦定理の証明

最も分かりやすいですが,場合分けが必要な方法です。

証明

第一余弦定理の証明

AA から BCBC に下ろした垂線の足を HH とおく。

  • HH が線分 BCBC 上にある場合(HHBBCC と重なる場合も含む)
    a=CH+BH=bcosC+ccosBa=CH+BH=b\cos C+c\cos B

  • HH が頂点 BB に関して CC と反対側にある場合
    cosB<0\cos B <0 に注意すると,
    a=CHBH=bcosC+ccosBa=CH-BH=b\cos C+c\cos B

いずれの場合も第一余弦定理は成立する。

「第一余弦定理は垂線を下ろせば直ちに示せる」と覚えておきましょう。

第二余弦定理を用いた第一余弦定理の証明

次の方法は,場合分けは不要で機械的な計算で証明できます。しかし,第一余弦定理より難しい第二余弦定理を仮定する必要があります。

証明

第二余弦定理より,

bcosC+ccosB=ba2+b2c22ab+cc2+a2b22ac=a2+b2c22a+c2+a2b22a=2a22a=ab\cos C+c\cos B\\ =b\cdot\dfrac{a^2+b^2-c^2}{2ab}+c\cdot\dfrac{c^2+a^2-b^2}{2ac}\\ =\dfrac{a^2+b^2-c^2}{2a}+\dfrac{c^2+a^2-b^2}{2a}\\ =\dfrac{2a^2}{2a}\\ =a

正弦定理を用いた第一余弦定理の証明

さきほどと同様,場合分けは不要な方法です。ただし,さらにむずかしい加法定理を仮定する必要があります。

証明

正弦定理より,asinA=bcosCsinBcosC=ccosBsinCcosB\dfrac{a}{\sin A}=\dfrac{b\cos C}{\sin B\cos C}=\dfrac{c\cos B}{\sin C\cos B}

ここで,

qp=sr\dfrac{q}{p}=\dfrac{s}{r} のとき qp=q+sp+r\dfrac{q}{p}=\dfrac{q+s}{p+r}

に注意すると(→加比の理と傾きによる証明),

asinA=bcosC+ccosBsinBcosC+sinCcosB()\dfrac{a}{\sin A}=\dfrac{b\cos C+c\cos B}{\sin B\cos C+\sin C\cos B}\:(※)

また,加法定理より右辺の分母は sin(B+C)=sin(180A)=sinA\sin (B+C)=\sin(180^{\circ}-A)=\sin A なので,

()(※) の両辺の分母は等しい。よって,a=bcosC+ccosBa=b\cos C+c\cos B を得る。

この方法を逆に使うと,第一余弦定理を仮定することでサインの加法定理が導けます!

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ちなみに余弦定理は2つありますが正弦定理は1つしかありません。