2014/04/05

関数方程式の解き方のコツ:全射と単射

分野: 関数方程式  レベル: 数学オリンピック

関数 $f(x)$ について全射,単射の定義:
全射:行き先の候補となるどんな元 $y$ を持ってきても $f(x)=y$ となる $x$ が存在する
単射:$f(x)=f(y)$ なら $x=y$


数学オリンピックで頻出の関数方程式の問題(→コーシーの関数方程式の解法と応用)では関数の全射,単射の性質を利用することが非常に多いです。

全射かつ単射な関数を全単射といいます。全射,単射は高校数学では扱わず,専門用語っぽくてとっつきにくいですが,イメージを理解すれば難しくありません。

このページでは,全単射のイメージ,具体例,関数方程式への応用を紹介します。

全射のイメージと具体例

行き先の候補となるどんな元 $y$ を持ってきても $f(x)=y$ となる $x$ が存在する性質を全射と言います。ここでいう「行き先の候補」とは問題によりますが,実数全体 $\mathbb R$ または有理数全体 $\mathbb Q$ の場合が多いです。

全射は「行き先を全て埋め尽くす関数」というイメージです。

1次関数 $f(x)=ax+b\:(a\neq 0)$ は全射
なぜなら,任意の実数 $y$ に対して,$x=\dfrac{y-b}{a}$ とおけば $f(x)=y$ となるから。

放物線 $f(x)=x^2$ は(実数全体で考えると)全射でない
なぜなら,$y=-1$ とすると,どんな実数 $x$ を持ってきても $f(x)=y$ とできないから。

単射のイメージと具体例

$f(x)=f(y)$ なら $x=y$ となる性質を単射と言います。全射よりも分かりやすいと思います。
単射は「行き先がかぶらない関数」というイメージです。

1次関数 $f(x)=ax+b\:(a\neq 0)$ は単射
$f(x)=f(y)$ のとき $ax+b=ay+b$ となり,$x=y$ となる。

三角関数 $f(x)=\sin x$ は単射でない
なぜなら,$x=0,y=\pi$ とすると,$f(x)=f(y)=0$ だが $x\neq y$ である。

注意:例えば,$\sin x$ は $0\leq x\leq \dfrac{\pi}{2}$ の区間で考えれば単射になる。つまり,考える定義域,終域によって全射性,単射性は変わってくるが,関数方程式の多くの問題では定義域と終域が一致しており,実数全体または有理数全体となっている。

そこで以下では定義域と終域が共に実数全体,または共に有理数全体の場合であることを暗黙の了解としている。

関数方程式への応用

関数の全射,単射は関数方程式を解く際に強力な武器になります:

(1)関数方程式から全射性または単射性を示すのは比較的容易である
(2)全射性,単射性からもとの関数についての様々な性質が導ける


(1)関数方程式から全射性または単射性を示す
様々なパターンがありますが,たとえば以下の3つの事実は覚えておきましょう。
・1次関数が全単射であること
・ $f(g(x))$ が全射→ $f(x)$ が全射
・ $f(g(x))$ が単射→ $g(x)$ が単射
(証明は定義に従えば簡単です)

$f(f(x))=x+5$ という関数方程式から $f(x)$ は全単射であることが分かる。


(2ー1)全射だと嬉しい
全射の定義の $y$ を自分で好きに決めることができるので,関数方程式を変形することができます。特に,$y=0$ とする場合が多いです。

$f(f(x))=f(x)+2f(0)$ という関数方程式において,$f(x)$ が全射なら,$f(a)=0$ となる $a$ が存在するので,もとの関数方程式に $x=a$ を代入すると $f(0)=2f(0)$ より $f(0)=0$ が分かります。


(2−2)単射だととても嬉しい
関数が単射だと $f$ を外すことができます。

$f(f(x))=f(x+x^3)$ という関数方程式において,$f(x)$ が単射なら,$f(x)=x+x^3$ が分かります。

数オリの問題に挑戦

2002 IMO Shortlistからです。

問題

実数から実数への関数 $f$ で,任意の実数 $x,\:y$ に対して以下を満たす関数を全て求めよ:
$f(f(x)+y)=2x+f(f(y)-x)$

方針:関数が全射であることを証明してそれを利用します。

解答

関数方程式において,とくに $y=-f(x)$ とおくと,
$f(0)-2x=f(f(-f(x))-x)$
となるので,$f(x)$ は全射。なぜなら,$x$ が実数全体を動くとき,左辺は実数全体を動くので,$f$ の値域は実数全体。

よって. $f(a)=0$ となる $a$ が存在するので,もとの関数方程式に $x=a$ を代入する:
$f(y)=2a+f(f(y)-a)$
ここで,$z=f(y)-a$ をひとかたまりと見る。 $f$ が全射なので任意の $z$ に対して $z=f(y)-a$ を満たす $y$ が存在することに注意すると,任意の実数 $z$ について,
$z+a=2a+f(z)$,つまり $f(z)=z-a$ が得られる。

よって,解の候補としては傾きが $1$ の一次関数 $f(x)=x-A\:(A$ は任意の実数)のみ。
実際これは解となっていることが簡単に確認できる。

関数方程式の問題を見たら関数の単射性か全射性が示せないか考えるようにしましょう

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