2015/05/24

ベクトルの内積を用いた余弦定理の証明

分野: 座標,ベクトル  レベル: 入試対策

ベクトルの内積を用いて余弦定理を証明することができるが,循環論法にならないように気をつける必要がある。


証明方法は単純で,しかも「鋭角三角形の場合」などと場合分けする必要もありません。ただし、循環論法を防ぐための議論がやや入り組んでいます。とりあえずノリだけ知りたい方は「本題:余弦定理の証明」の部分をご覧ください。

循環論法を防ぐために

多くの教科書ではベクトルの内積について,以下のように扱っています。

1(内積の定義). $\overrightarrow{a}=(a_1,a_2),\overrightarrow{b}=(b_1,b_2)$ の内積を,なす角 $\theta$ を用いて $\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\cos\theta$ と定義する。

2(成分表示の導出).余弦定理を使うと,上のように定義した内積は $a_1b_1+a_2b_2$ と一致することが分かる。

3(分配法則の導出).成分表示を用いることで,分配法則 $\overrightarrow{a}\cdot(\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c})=\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}+\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{c}$ が分かる。

つまり,この流儀の場合,余弦定理の証明に内積の分配法則を使ってしまうと循環論法になるのです。

余弦定理の証明に向けて

そこで「ベクトルの内積を用いて余弦定理を証明する」という目的のために,以下のような手順を踏みます。

STEP1(内積の定義).内積を $\overrightarrow{a}\cdot\overrightarrow{b}=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\cos\theta$ で定義する。
STEP2(分配法則の導出).成分表示を経由することなく,ベクトルの分配法則を証明する。
STEP3(余弦定理の証明).内積の定義と分配法則を用いて余弦定理を証明する。

以下では,STEP2,3を順に解説します。

分配法則の導出

内積の分配法則

証明

$\overrightarrow{a}$ と $\overrightarrow{b}$ のなす角を $\theta$ とおく。
$\overrightarrow{a}\cdot \overrightarrow{b}=|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\cos\theta=$赤×青
同様に,
$\overrightarrow{a}\cdot \overrightarrow{c}=$赤×緑
$\overrightarrow{a}\cdot (\overrightarrow{b}+\overrightarrow{c})=$赤×紫
これと,青+緑=紫 より分配法則が成立する。

本題:余弦定理の証明

いよいよ本題,余弦定理の証明です!
三角形 $ABC$ において,$BC,CA,AB$ の長さをそれぞれ $a,b,c$ とおきます。
第二余弦定理:$a^2=b^2+c^2-2bc\cos A$ を証明します。

証明

$a^2=|\overrightarrow{BC}|^2\\
=|\overrightarrow{AC}-\overrightarrow{AB}|^2$
(内積の定義を用いると,)
$=(\overrightarrow{AC}-\overrightarrow{AB})\cdot (\overrightarrow{AC}-\overrightarrow{AB})$
(内積の分配法則を用いると,)
$=\overrightarrow{AC}\cdot\overrightarrow{AC}+\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AB}-2\overrightarrow{AC}\cdot\overrightarrow{AB}$
(もう一度内積の定義を用いると,)
$=b^2+c^2-2bc\cos A$

循環論法になってしまっている記述をときどき見かけます。ご注意下さい。
分野: 座標,ベクトル  レベル: 入試対策