最終更新:2017/01/09

三重対角行列の特殊形の固有値は綺麗

分野: 線形代数  レベル: 大学数学

$\begin{pmatrix}1&2&0&0&0\\3&4&5&0&0\\0&6&7&8&0\\0&0&9&10&11\\0&0&0&12&13\end{pmatrix}$ のように,
対角成分とそれに隣接する成分(副対角成分)以外が $0$ であるような正方行列を三重対角行列と言う。

三重対角行列について

三重対角行列の例

やや抽象的ですが「自分と自分の両隣の現在の値の重みつき和」が1ステップ先の状態となるような系を,行列を用いて表現すると,三重対角行列が登場します。

なんとなく応用数学や物理で登場しそうな気がしますね。

三重対角行列は一般の行列よりも扱いやすいです。例えば,漸化式を用いることで行列式が $O(n)$ で計算できます。Tridiagonal matrix (Wikipedia)

特殊形の固有値(前半)

三重対角行列の中でも対角成分が全て $a$,副対角成分が全て $b$ であるようなものを $T(a,b)$ と書くことにします。

この記事の残りでは $T(a,b)$ の固有値,固有ベクトルについて考えます(美しいですよ!)。
→固有値,固有ベクトルの定義と具体的な計算方法

補題:
$\overrightarrow{x}$ が $T(0,1)$ の固有値 $\lambda$ に対する固有ベクトルとする。
このとき,$\overrightarrow{x}$ は $T(a,b)$ の固有値 $a+b\lambda$ に対する固有ベクトルとなる。

つまり,$T(0,1)$ の固有値と固有ベクトルが分かれば $T(a,b)$ の固有値と固有ベクトルも分かるというわけです。

証明

同じサイズの単位行列を $I$ とすると,
$T(a,b)=aI+bT(0,1)$
となる。

よって,$T(0,1)\overrightarrow{x}=\lambda \overrightarrow{x}$ のとき,
$T(a,b)\overrightarrow{x}=(a+b\lambda)\overrightarrow{x}$
となる。

特殊形の固有値(後半)

というわけで,サイズ $n$ の $T(0,1)$ の固有値と固有ベクトルについて考えてみましょう。

$\lambda_i=2\cos\left(\dfrac{i\pi}{n+1}\right)$
$x_{i,j}=\sin\left(\dfrac{ij\pi}{n+1}\right)$
とおくと,
$i=1,2,\cdots,n$ に対して,$\overrightarrow{x_i}=(x_{i,1},x_{i,2},\cdots,x_{i,n})^{\top}$ は $T(0,1)$ の固有値 $\lambda_i$ に対する固有ベクトルとなる。

固有値は単位円の上半分を $n+1$ 当分して $x$ 座標を見る(そして2倍する)というイメージです。三角関数が登場するのが面白いです。

証明

$T(0,1)\overrightarrow{x_i}=\lambda_i\overrightarrow{x_i}$
を証明すればよい。

つまり,

  • $x_{i,2}=\lambda_ix_{i,1}$
  • $x_{i,j-1}+x_{i,j+1}=\lambda_ix_{i,j}\:(j=2,\cdots,n-1)$
  • $x_{i,n-1}=\lambda_ix_{i,n}$

を確認すればよい。

1つめと3つめは $\sin 2\theta=2\sin\theta\cos\theta$ から分かる。2つめは三角関数の和積公式から分かる。

なお,$\overrightarrow{x_i}$ の長さは $\sqrt{\dfrac{n+1}{2}}$ になります。位相が等差数列である三角関数の和の公式を使って計算できます。

ちなみに $\begin{pmatrix}1&2&3\\4&1&2\\5&4&1\end{pmatrix}$ のように左上右下ラインが同じ成分であるような行列を,テプリッツ行列と言います。記事の後半で扱った行列は「対称三重対角テプリッツ行列」です。
分野: 線形代数  レベル: 大学数学