2016/01/12

上三角行列と下三角行列の性質

分野: 線形代数  レベル: 大学数学

$n\times n$ の正方行列 $A=(a_{ij})$ について,
「 $i > j$ ならば $a_{ij}=0$ 」を満たす行列を上三角行列
「 $i < j$ ならば $a_{ij}=0$ 」を満たす行列を下三角行列
という。

上三角行列,下三角行列について

上三角行列(Upper triangular matrix)は対角成分よりも下側の成分が $0$ である行列です。
3×3の例:$U=\begin{pmatrix}a_{11}&a_{12}&a_{13}\\0&a_{22}&a_{23}\\0&0&a_{33}\end{pmatrix}$

下三角行列(Lower triangular matrix)は対角成分よりも上側の成分が $0$ である行列です。
3×3の例:$L=\begin{pmatrix}a_{11}&0&0\\a_{21}&a_{22}&0\\a_{31}&a_{32}&a_{33}\end{pmatrix}$

上三角行列と下三角行列まとめて三角行列と呼びます。

三角行列の行列式

三角行列の行列式は対角成分の積に等しい。

$\det \begin{pmatrix}u_{11}&u_{12}&u_{13}\\0&u_{22}&u_{23}\\0&0&u_{33}\end{pmatrix}=u_{11}u_{22}u_{33}$
という感じです。

以下,上三角行列 $U=(u_{ij})$ についてのみ証明します(下三角行列も同様)。

証明

置換による行列式の定義より,
$\det U=\displaystyle\sum_{\sigma}\mathrm{sgn}(\sigma)\prod_{i=1}^nu_{i\sigma(i)}$

右辺について,$\sigma$ が恒等置換であるとき以外は(対角成分より下側の成分を1つ以上選ぶことになるので)$0$ となる。

よって,$\det U=\displaystyle\prod_{i=1}^nu_{ii}$

このことから,三角行列について「対角成分が全て $0$ でない $\iff$ 正則(逆行列を持つ)」が分かります。

三角行列の固有値

三角行列の固有値は対角成分に等しい。

$\begin{pmatrix}u_{11}&u_{12}&u_{13}\\0&u_{22}&u_{23}\\0&0&u_{33}\end{pmatrix}$ の固有値は $u_{11},u_{22},u_{33}$
という感じです。

証明

先ほどの証明と同様な議論により
$\det (U-\lambda I)=\displaystyle\prod_{i=1}^n(u_{ii}-\lambda)$
となるので,固有値は $u_{11},u_{22},\cdots,u_{nn}$

三角行列の積

上三角行列の積は上三角行列
下三角行列の積は下三角行列

$\begin{pmatrix}a_{11}&a_{12}\\0&a_{22}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}b_{11}&b_{12}\\0&b_{22}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}a_{11}b_{11}&a_{11}b_{12}+a_{12}b_{22}\\0&a_{22}b_{22}\end{pmatrix}$
という感じです(一般の場合の証明も簡単なので略)。

三角行列の逆行列

(正則な)上三角行列の逆行列は上三角行列
(正則な)下三角行列の逆行列は下三角行列

$\begin{pmatrix}a_{11}&a_{12}\\0&a_{22}\end{pmatrix}$ の逆行列は $\dfrac{1}{a_{11}a_{22}}\begin{pmatrix}a_{22}&-a_{12}\\0&a_{11}\end{pmatrix}$
という感じです(一般の場合の証明は略)。

つい行列の記事ばかり書きたくなってしまいます。
分野: 線形代数  レベル: 大学数学