2014/08/02

いろいろな三角不等式(絶対値,複素数,ベクトル)

分野: 不等式  レベル: 入試対策

三角不等式:
$x$ の「大きさ」を $\|x\|$ と書くとき,いろいろな「大きさ」に対して以下の不等式が成立する
$\|x+y\|\leq\|x\|+\|y\|$

高校数学のいろいろな場面で登場する三角不等式を統一的に見てみます。

実数,複素数,ベクトル,ミンコフスキーの不等式、

実数の絶対値の三角不等式

実数 $x$ の「大きさ」は絶対値で測るのが自然です。実際以下の不等式が成立します。

任意の実数 $x,y$ に対して
$|x+y|\leq|x|+|y|$

厳密に証明しようとすると以外に場合分けが煩雑です。証明の概略を以下に示します。

証明:
$x$ と $y$ が同符号のときは左辺と右辺は等しい。
異符号のときは右辺は左辺以上。
(例えば $x\geq 0,y\leq 0$ のとき左辺は $x+y,-x-y$ のいずれか,右辺は $x-y$)

複素数の絶対値の三角不等式

複素数 $z=a+bi$ の大きさは絶対値 $\sqrt{a^2+b^2}$ で測るのが自然です。実際以下の不等式が成立します。

任意の複素数 $z_1,z_2$ に対して
$|z_1+z_2|\leq|z_1|+|z_2|$

証明は愚直に成分計算で行えます。

証明:
$z_1=a_1+b_1i, z_2=a_2+b_2i$ とおくと
左辺の二乗は$(a_1+a_2)^2+(b_1+b_2)^2$
右辺の二乗は $a_1^2+b_1^2+a_2^2+b_2^2+2\sqrt{(a_1^2+b_1^2)(a_2^2+b_2^2)}$
整理すると,示すべき不等式は,
$a_1a_2+b_1b_2\leq \sqrt{(a_1^2+b_1^2)(a_2^2+b_2^2)}$
これはコーシーシュワルツの不等式より成立。

ベクトルの三角不等式

ベクトル $\overrightarrow{a}=(a_1,a_2,a_3)$ の大きさは高校数学では $\sqrt{a_1^2+a_2^2+a_3^2}$ で測るのが一般的です。
実際以下の不等式が成立します。

三次元のベクトル $\overrightarrow{a},\overrightarrow{b}$ に対して
$|\overrightarrow{a}+\overrightarrow{b}|\leq|\overrightarrow{a}|+|\overrightarrow{b}|$

  • 証明は複素数の場合と同様に成分計算とコーシーシュワルツの不等式でできます。
  • 実数の三角不等式は一次元ベクトルの三角不等式と同じものです。
  • 複素数の三角不等式は二次元ベクトルの三角不等式と本質的に同じものです。
  • 三次元をより高次元の $n$ 次元ベクトルに拡張しても三角不等式が成立します。
  • ベクトルの長さを $\sqrt{a_1^2+a_2^2+a_3^2}$ で測るのではなくて,より一般的に $\sqrt[p]{a_1^p+a_2^p+a_3^p}$ で測ることもできます。実はそのときにも三角不等式が成立します。(→ミンコフスキーの不等式とその証明

三角不等式の差バージョン

三角不等式で $x+y=X, x=-Y$ と置き直すと $y=X+Y$ となります:
$\|X\|-\|Y\|\leq\|X+Y\|$
こちらも入試で頻出の形です。和のバージョンとまとめて覚えておきましょう:

「小さい順に大きさの差,和の大きさ,大きさの和」
$\|x\|-\|y\|\leq\|x+y\|\leq\|x\|+\|y\|$

(もちろん実数,複素数,ベクトル,なんでも使えます。)

約一週間ぶりの更新になってしまいました,大変お待たせいたしましたm(__)m
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