2015/01/12

テント写像とその性質〜東大入試の背景〜

分野: いろんな関数  レベル: 最難関大学

テント写像:
$a$ をパラメータとして,
$f(x)=a\:\mathrm{min}(x,1-x)$
で表される関数(写像)をテント写像と言う。

東大入試(後期)のテーマにもなった $a=2$ の場合のテント写像について考察します。

テント写像

テント写像のグラフ

今回考える関数は,$[0,1]$ 上で定義された以下のような関数です。
$ f(x) = \left\{ \begin{array}{ll}
2x & (0\leq x\leq \frac{1}{2}) \\
2(1-x) & (\frac{1}{2} <x\leq 1)
\end{array} \right.$

グラフは右図のようになります。この形がテントっぽいのでテント写像と言います。

合成

次に $y=ff(x)$ のグラフについて考えてみます。

テント写像の合成

$0\leq x\leq \dfrac{1}{2}$ の範囲で $f(x)$ の値は $x$ の値に比例して $0$ から $1$ まで増加します。よって,$ff(x)$ の値は $0\leq x\leq \dfrac{1}{4}$ まで増加してそこから減少します。
$\dfrac{1}{2}\leq x\leq 1$ についても同様に考えることで $y=ff(x)$ のグラフは図のようになることが分かります。

同様に,$y=fff(x)$ のグラフはテントが $4$ つあるようなグラフになります。

さらに一般に, $f(x)$ を $n$ 回合成した関数 $y=f^n(x)$ はテントが $2^{n-1}$ 個あるようなグラフになります。

初期値鋭敏性

先ほど見たように $y=f^n(x)$ は激しく($n$ に関して指数的に)ギザギザしています。

そのため,$f^n(x)$ の値は $x$ を少し変えただけでも大きく変わってしまいます。このような性質を初期値鋭敏性と言います。

初期値鋭敏性はカオス力学系と呼ばれるものの一つの性質(定義)です。「カオス」という数学の分野があるくらい深い話題です。

周期点

関数 $y=f(x)$ を何回か作用させると元に戻ってくる点を周期点と言います。

周期点の集合は,全ての正の整数 $n$ に対して,$x=f^n(x)$ の解(固定点,不動点)を集めたものとみなすことができます。

テント写像の固定点

そこで $x=f^n(x)$ について考えてみます。これは $y=f^n(x)$ と $y=x$ の交点に対応するので,先ほど書いたグラフより全部で $2^n$ 個あることが分かります。

よって,周期点は無限個あることも分かります。

東大の問題との関連

・2002年東大後期第三問はテント写像を題材とした問題でした。
(5)まであり,(1)から(3)までは $y=f^n(x)$ のグラフが書ければ解けたも同然の問題。(4),(5)はやや難しいですが,テント写像の話題を知っていればかなり有利でしょう(マニアックなテーマなのでほとんどの受験生が知らなかったと思いますが)。

・ $y=f(x)$ のグラフから合成関数 $y=f^n(x)$ のグラフをイメージするというのは重要な考え方です。2004年東大文系第3問,理系第4問はこの考え方を知っていれば一瞬で解ける問題でした。

JMOの予選を受けた方,お疲れ様でした!

Tag: 東大入試数学の良問と背景知識まとめ

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