2015/09/10

対称式の基本定理の証明

分野: 式の計算  レベル: マニアック

対称式の基本定理:
対称式は基本対称式で表せる。その表し方は一通りである。

対称式,基本対称式

対称式の基本定理の例

〜二変数の場合〜
$x,y$ についての対称式は $e_1=x+y$,$e_2=xy$ で表せます。例えば $x^2+y^2=e_1^2-2e_2$ です。
→2変数の対称式と基本対称式の4つの性質

〜三変数の場合〜
$x,y,z$ についての対称式は $e_1=x+y+z$,$e_2=xy+yz+zx$,$e_3=xyz$ で表せます。

高校数学では三変数の場合まで覚えておけば十分でしょう。

辞書式順序

対称式の基本定理の証明の準備です。二つの単項式について以下のような強さの関係(辞書式順序)を考えます。

  • $x_1$ の次数が大きい方が強い
  • $x_1$ の次数が同じなら $x_2$ の次数が大きい方が強い
  • それも同じなら $x_3$ の次数が大きい方が強い
  • 以下同様

例えば $x_1^3x_2^2x_3$ の方が $x_1^3x_2^2x_4$ よりも強いです。

対称式の基本定理の証明

$n$ 変数の対称式 $f(x_1,x_2,\cdots,x_n)$ が基本対称式 $e_1=x_1+x_2+\cdots +x_n,$ $\cdots,e_n=x_1x_2\cdots x_n$ で表せることを証明します。

一意性の証明もほぼ同様にできるので省略します。

証明

$k$ 次の項のみの対称式 $f(x_1,\cdots,x_n)$ が基本対称式で表せることを証明すればよい(一般の対称式は $\displaystyle\sum_{k}$ $k$ 次の項のみの対称式,と書ける)。

$f(x_1,\cdots,x_n)$ の中で一番強い項を $Ax_1^{c_1}x_2^{c_2}\cdots x_n^{c_n}$ とする。 $f$ は対称式なので $c_1\geq c_2\geq \cdots \geq c_n$ である。

ここで,以下のようにうまく基本対称式をかけ合わせることで,一番強い項を作り出せる(→注)
$Ae_n^{c_n}e_{n-1}^{c_{n-1}-c_n}\cdots e_1^{c_1-c_2}$
そして,この式には $x_1^{c_1}x_2^{c_2}\cdots x_n^{c_n}$ よりも強い項は登場しない。

よって,$f(x_1,\cdots,x_n)-Ae_n^{c_n}e_{n-1}^{c_{n-1}-c_n}\cdots e_1^{c_1-c_2}$ は $f(x_1,\cdots,x_n)$ より一番強い項が真に弱い多項式である。

また,この操作で「 $k$ 次の項のみの対称式」という性質は保たれる。よって,この操作を繰り返すといつかは必ずゼロになる。

つまり,$f(x_1,\cdots,x_n)$ から「基本対称式で表される多項式」を有限回引くことでゼロになるので,$f(x_1,\cdots,x_n)$ は基本対称式で表せる。

注:例えば $3x^5y^3z^3w^2$ を作り出すためには,
$3e_4^2e_3e_1^2\\
=3(xyzw)^2(xyz+xyw+xzw+yzw)(x+y+z+w)^2$
とすればOKです。

対称式の基本定理を知っている高校生は多いと思いますが,証明できる人はかなり少ないと思います。
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