2014/03/26

行列・関数・多項式に共通する有名な性質

分野: 式の計算  レベル: 最難関大学

このページで紹介する性質は以下の自明な恒等式が元になっています:
$X=\dfrac{X+Y}{2}+\dfrac{X-Y}{2}$


この恒等式は「対称的なものと交代的(反対称的)なものに分解するための恒等式」としていろいろな場面で登場します。この恒等式を背景とした入試問題もたまに出題されるので頭のすみっこに置いておきましょう。

行列:対称行列と交代行列の和に分解する

任意の行列は対称行列と交代行列の和に分解できる

与えられた行列を対称行列と交代行列の和で表す問題が出題されたこともあります。この事実は覚えておきましょう。

証明

$A=\dfrac{A+A^T}{2}+\dfrac{A-A^T}{2}$
と分解できるが,$\dfrac{A+A^T}{2}$ は対称行列,$\dfrac{A-A^T}{2}$ は交代行列であることがそれぞれの転置を取ることで確認できる。

関数:奇関数と偶関数の和に分解する

任意の関数は偶関数と奇関数の和に分解できる

この性質を背景とする入試問題もたまに出題されるので覚えておきましょう。

証明

$f(x)=\dfrac{f(x)+f(-x)}{2}+\dfrac{f(x)-f(-x)}{2}$
と分解できるが,$g(x)=\dfrac{f(x)+f(-x)}{2}$ は $g(-x)=g(x)$ より偶関数,$h(x)=\dfrac{f(x)-f(-x)}{2}$ は $h(x)=-h(-x)$ より奇関数である。

多項式 $x^3+2x^2+x-1=(2x^2-1)+(x^3+x)$
多項式を偶数次の項と奇数次の項に分解するのはよく知られています。

指数関数 $e^x$
指数関数でさえも偶関数と奇関数の和で表すことができちゃいます。
$e^x=\dfrac{e^x+e^{-x}}{2}+\dfrac{e^x-e^{-x}}{2}$
実は,左辺の偶関数部分はカテナリー(懸垂線)と呼ばれる有名な曲線です。偶関数の部分は $\cosh x$ 奇関数の部分は $\sinh x$ とも表され,双曲線関数とも呼ばれます。

2変数多項式:対称式と交代式の和に分解する

任意の2変数関数は対称式と交代式(反対称式)の和に分解できる

この性質を利用する入試問題はあまり出題されませんが,知っていて損はないでしょう。

証明

$f(x,y)=\dfrac{f(x,y)+f(y,x)}{2}+\dfrac{f(x,y)-f(y,x)}{2}$
と分解できるが,第一項は $x$ と $y$ に関して対称であり,第二項は $x$ と $y$ に関して反対称である。

$x^2y=\dfrac{x^2y+xy^2}{2}+\dfrac{x^2y-xy^2}{2}$

以上のように,複数分野にまたがる共通の性質を確認することができました。複数分野に共通する性質を抜き出すことを抽象化と言います。

複数の分野に共通する性質を知っていると
1、様々な分野を統一的に議論できる
2、他にもこの共通する性質を持つものが存在するのではないか?という視点を持ち理論を拡張することができる
という嬉しい事があります。

大学の数学は共通する性質を探っていく抽象化がどんどん行われていきます。共通する性質を追求すればするほど,具体的な議論から抽象的な話になっていくので難しく感じますが,抽象的な議論をする際も常に具体例をイメージしておくことが重要です。

抽象数学は難しいですが理解できればいろいろな分野を統一的に扱えます。

Tag: とにかく美しい数学公式まとめ

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