複素数のルートを求める2通りの方法

定理

複素数のルートは2つある。それらは複素数平面で原点対称な位置に存在する。

複素数の累乗根について解説します。

複素数のルート

a\sqrt{a}aa が実数のときにしか定義されませんが,複素数 cc に対しても「二乗して cc になる複素数 zz」を求めたいことがしばしばあります。

つまり,方程式: z2=cz^2=c を解く問題を考えます。

これは複素数係数の二次方程式とみなせるので,代数学の基本定理より解は一般に 22 つあります。

以下では例として c=ic=i の場合を考えます。 ii のルートを考える問題です!

ii のルートを計算で求める

まず簡単に思いつくのは z=a+biz=a+bi とおいて連立方程式を解く方法です。

i のルートを求める方法1

(a+bi)2=i(a,b(a+bi)^2=i\:(a,b は実数)を解けばよい。

展開する: a2b2+2abi=ia^2-b^2+2abi=i

実部と虚部を比較する: a2b2=0,2ab=1a^2-b^2=0, 2ab=1

この連立方程式の解は,

(a,b)=(12,12),(12,12)(a,b)= \left( \dfrac{1}{\sqrt{2}},\dfrac{1}{\sqrt{2}} \right) , \left( -\dfrac{1}{\sqrt{2}},-\dfrac{1}{\sqrt{2}} \right) の2つなので,ii のルートは ±12(1+i)\pm\dfrac{1}{\sqrt{2}}(1+i)

ii のルートを複素数平面で求める

次に,複素数平面を用いたスマートな解法です。

  • 複素数平面上で動径が rr, 偏角が θ\theta である点 zz(r,θ)(r,\theta) と書くことにします(極形式)。
  • すると,z=reiθ=r(cosθ+isinθ)z=re^{i\theta} = r (\cos \theta + i \sin \theta) と表されます。(中辺は知らなくてもよいが,気になる人は →オイラーの公式と複素指数関数
  • 22 つの複素数(r1,θ1),(r2,θ2)(r_1,\theta_1), (r_2,\theta_2) の積は (r1r2,θ1+θ2)(r_1r_2, \theta_1+\theta_2) となります。(これは,極形式と加法定理を知っていれば簡単に導出できます →複素数平面における極形式と回転
  • よって,(r,θ)(r,\theta) のルートのうちの1つは z1=(r,θ2)z_1=\left( \sqrt{r},\dfrac{\theta}{2} \right) であることが分かります。
  • また,角度に 2π2\pi 足しても同じ角なので,z2=(r,θ2+π)z_2= \left( \sqrt{r},\dfrac{\theta}{2}+\pi \right) がもうひとつのルートであることが分かります。
iのルートを求める方法2:

複素数平面上で考えると ii は動径が 11,偏角が π2\dfrac{\pi}{2} なので,

二乗して ii になる数は,

z1=1(cosπ4+isinπ4)=12(1+i)z2=1(cos54π+isin54π)=12(1+i)\begin{aligned} z_1 &= 1 \cdot \left( \cos\dfrac{\pi}{4}+i\sin\dfrac{\pi}{4} \right)\\ &=\dfrac{1}{\sqrt{2}} (1+i)\\ z_2 &= 1 \cdot \left( \cos\dfrac{5}{4}\pi+i\sin\dfrac{5}{4}\pi \right)\\ &= -\dfrac{1}{\sqrt{2}} (1+i) \end{aligned}

22 つ。

ちなみに,z1z_1 の方を複素数の平方根の主値と言います。

複素数平面を用いるメリット

連立方程式を解く方法だと三乗根以上の場合に拡張しにくいですが,複素数平面を用いる方法だと三乗根以上の場合にも対応できます。

また,複素数平面を用いることで,特定の複素数の累乗根が全て同一円周上に等間隔にあることが分かり,楽しいです。→1のn乗根の性質と複素数平面

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT114では,3乗の場合の具体的な計算例と,計算ミスを減らすための工夫も解説しています。

複素数のかけ算が偏角の足し算に対応するというのが複素数平面の最も顕著な性質です。

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