楕円の面積公式の3通りの導出

楕円の面積公式

楕円の面積 SS は,

円周率×長軸の長さ×短軸の長さ

で計算できる。つまり,S=πabS=\pi ab

楕円の面積

楕円は,円を引き伸ばしたような図形です。楕円の面積についてわかりやすく説明します。後半では,公式を3通りの方法で導出します。

楕円の面積と円の面積

a=ba=b の場合,楕円(つぶれた円)は円(まんまるの円)になります。その場合,楕円の面積公式は S=πa2S=\pi a^2 となり,円の面積公式と一致します。

楕円の面積を求める例題

公式

x2a2+y2b2=1(a,b>0)\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1 \:(a, b > 0) で表される楕円の面積 SSS=πabS=\pi ab

例題1

x29+y216=1\dfrac{x^2}{9}+\dfrac{y^2}{16}=1 で表される楕円の面積を求めよ。

解答

a=3,b=4a=3,b=4 として公式を使うと S=π×3×4=12πS=\pi\times 3\times 4=12\pi

原点が中心でない場合

例題2

(x+10)29+(y1)216=1\dfrac{(x+10)^2}{9}+\dfrac{(y-1)^2}{16}=1 で表される楕円の面積を求めよ。

解答

平行移動しても楕円の面積は変わらないので,x232+y242=1\dfrac{x^2}{3^2}+\dfrac{y^2}{4^2}=1 の面積を求めればよい。

よって,楕円の面積公式より答えはπ34=12π\pi \cdot 3\cdot 4=12\pi

証明

ここから,楕円の面積公式の3通りの証明を紹介します。

  1. グラフの拡大を用いる方法
  2. 愚直に定積分を計算する方法
  3. ガウスグリーンの定理を使う方法

1は積分を知らなくても理解できますが,円の面積公式は認めてしまいます。残り2つは定積分を用いる方法です。どちらも積分のよい練習問題です。

1. グラフの拡大を用いた楕円の面積公式の導出

曲線 f(x,Ay)=0f(x,Ay)=0f(x,y)=0f(x,y)=0yy 軸方向に 1A\dfrac{1}{A} 倍に引き伸ばしたものという定理を使います。→関数のグラフの拡大・縮小の証明と例

証明

楕円の式: x2a2+y2b2=1\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1 の両辺を a2a^2 倍すると, x2+(aby)2=a2x^2+\left(\dfrac{a}{b}y\right)^2=a^2 となる。

これは,円:x2+y2=a2x^2+y^2=a^2yy 軸方向に ba\dfrac{b}{a} 倍に拡大したものである。

図形を縦に ba\dfrac{b}{a} 倍に拡大すると面積も ba\dfrac{b}{a} 倍になるので,楕円の面積 SSπa2×ba=πab\pi a^2\times\dfrac{b}{a}=\pi ab となる。

ちなみに,同様な議論により,目標の楕円は「半径 bb の円を xx 軸方向に ab\dfrac{a}{b} 倍に拡大したもの」と見ることもできます。楕円は「円を xx 軸方向,または yy 軸方向に拡大したもの」という理解は重要です。

2. 定積分を用いた楕円の面積公式の導出

積分を知っていれば素直な方法です。重要な置換積分を用いて計算します。

証明

楕円の面積

楕円の方程式を yy について解くと,

y=±b1x2a2y=\pm b\sqrt{1-\dfrac{x^2}{a^2}} となる(楕円の上半分がプラスの符号,下半分はマイナスの符号に対応している)。

よって,楕円の面積 SS は青い部分の面積の 44 倍なので,

S=40ab1x2a2dx S= 4\int_0^{a}b\sqrt{1-\dfrac{x^2}{a^2}}dx

ここで,x=acosθ(0θπ2)x=a\cos\theta\: (0\leqq \theta\leqq \dfrac{\pi}{2}) と置換すると,

dxdθ=asinθ\dfrac{dx}{d\theta}=-a\sin\theta であるので,

S=4π20b1cos2θ(a)sinθdθ=40π2absin2θdθ=40π2ab1cos2θ2dθ=πab[sin2θ]0π2=πab\begin{aligned} S &= 4\int_{\frac{\pi}{2}}^0 b\sqrt{1-\cos^2\theta} (-a) \sin\theta d\theta\\ &= 4\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} ab\sin^2\theta d\theta\\ &= 4\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} ab\dfrac{1-\cos 2\theta}{2}d\theta\\ &= \pi ab- \Big[ \sin 2\theta \Big]_0^{\frac{\pi}{2}}\\ &= \pi ab \end{aligned}

3. ガウスグリーンの定理を用いた楕円の面積公式の導出

発展的な内容です。楕円は x=acost,y=bsintx=a\cos t,\:y=b\sin t と媒介変数表示されることを使います。媒介変数表示された曲線の面積を求める際は,ガウスグリーンの定理が活躍します。→ガウスグリーンの定理の入試への応用

証明

上記のように楕円を媒介変数表示すると,x=asint,y=bcostx'=-a\sin t,\:y'=b\cos t なので,ガウスグリーンの定理より,

S=02π12(abcostcost+absintsint)dt=02π12abdt=πab\begin{aligned} S &= \int_0^{2\pi} \dfrac{1}{2} (ab\cos t\cos t+ab\sin t\sin t) dt\\ &= \int_0^{2\pi}\dfrac{1}{2}abdt\\ &= \pi ab \end{aligned}

置換積分などは必要なく,愚直に定積分をするよりはるかに楽です!

関連する話題

楕円で困ったらとりあえず拡大・縮小で円にして考えるのが良いです。

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