2014/09/29

シムソンの定理とその2通りの証明

分野: 複素数  レベル: 数学オリンピック

シムソンの定理

シムソンの定理:
三角形 $ABC$ と点 $D$ がある。 $D$ から直線 $BC,\:CA,\:AB$ に下ろした垂線の足を $P,\:Q,\:R$ とおく。
このとき,$D$ が三角形 $ABC$ の外接円上にあるならば,$P,\:Q,\:R$ は同一直線上にある。この直線をシムソン線と呼ぶ。


シムソンの定理の構図は覚えておくと数学オリンピックでまれに役立ちます。シムソンの定理とシムソンの定理の逆の証明を二通り解説します。

シムソンの定理の特殊な場合

・自明な場合1: $D$ が三角形の頂点と一致する場合。例えば $D=A$ の場合,$Q,\:R$ は $A$ と一致するので,シムソンの定理は成り立ち,シムソン線は $A$ を通り $BC$ に垂直な直線です。

・自明な場合2: $D$ が三角形の頂点のちょうど反対側にある場合。例えば $BD$ が三角形 $ABC$ の外接円の直径となる場合(このときの $D$ を $E$ とおく)。 $P=C,\:R=A$ となり,シムソンの定理は成り立ち,シムソン線は直線 $CA$ となります。

シムソンの定理

・シムソンの定理の証明を考えます。以上の自明な場合を除くと,対称性より $D$ が弧 $CE$(の内点)にある場合のみ考えればOKです。このとき,$CE$ と $PD$ は平行なので $P$ は円の外側にあり,$AE$ と $RD$ は平行なので $R$ は円の内側にあります。

ついでに以下のシムソンの定理の逆も証明します。

シムソンの定理の逆:
上記の設定において $P,\:Q,\:R$ が同一直線上にあるなら $D$ は三角形 $ABC$ の外接円上にある。

シムソンの定理とその逆の証明1

まずは図形的に証明します。

方針:直角二つで同一円周上の4点が作られることに注目します。シムソンの定理の条件を言い換えて定理と逆を同時に証明します。

シムソンの定理の証明

証明

まず,$D$ が三角形 $ABC$ の外接円上にある
⇔ $\angle BCD+\angle BAD=180^{\circ}$

また,$P,\:Q,\:R$ が同一直線上にある
⇔ $\angle PQD+\angle RQD=180^{\circ}$

この2つが互いに必要十分条件であることを言えばよい。
円周角の定理の逆より $A,\:D,\:Q,\:R$ は同一円周上にあるので,$\angle BAD+\angle RQD=180^{\circ}$
同様に $P,\:D,\:Q,\:C$ は同一円周上にあるので,$\angle PQD=\angle PCD=180^{\circ}-\angle BCD$

以上2つの式より,
$\angle BCD+\angle BAD+\angle PQD+\angle RQD=360^{\circ}$ となり題意は示された。

シムソンの定理とその逆の証明2

計算を使えば場合分けは不要です。直交座標では同一円周上にあるという条件が扱いにくいので複素数平面で考えます。複素数平面に慣れていないと多少計算に苦労しますが,やるべきことはは一本道です。

証明

三角形 $ABC$ の外接円の半径は $1$ としても一般性を失わない。 $A(\alpha),\:B(\beta),\:C(\gamma),D(\delta)$ とおく。 $\overline{\alpha}=\dfrac{1}{\alpha},\overline{\beta}=\dfrac{1}{\beta},\overline{\gamma}=\dfrac{1}{\gamma}$ に注意する。

$D$ から $BC$ に下ろした垂線の足 $P$ の複素座標は,
$p=\dfrac{1}{2}(\beta+\gamma+\delta-\beta\gamma\overline{\delta})$ である。(注)
同様に,$Q$ の座標は,
$q=\dfrac{1}{2}(\gamma+\alpha+\delta-\gamma\alpha\overline{\delta})$
$R$ の座標は,
$r=\dfrac{1}{2}(\alpha+\beta+\delta-\alpha\beta\overline{\delta})$

よって,$p-q=\dfrac{1}{2}(\beta-\alpha)(1-\gamma\overline{\delta})$
$q-r=\dfrac{1}{2}(\gamma-\beta)(1-\alpha\overline{\delta})$

したがって,$P,\:Q,\:R$ が同一直線上にある
⇔ $\dfrac{p-q}{q-r}$ が実数
⇔$(p-q)(\overline{q}-\overline{r})=(q-r)(\overline{p}-\overline{q})$
⇔$(\beta-\alpha)(1-\gamma\overline{\delta})(\overline{\gamma}-\overline{\beta})(1-\overline{\alpha}\delta)\\=(\gamma-\beta)(1-\alpha\overline{\delta})(\overline{\beta}-\overline{\alpha})(1-\overline{\gamma}\delta)$

ここで,$\overline{\gamma}-\overline{\beta}=\dfrac{1}{\gamma}-\dfrac{1}{\beta}=\dfrac{\gamma-\beta}{\beta\gamma}$ などに注意して両辺を適当に割り算すると,

上記の条件
⇔ $\alpha(1-\gamma\overline{\delta})(1-\overline{\alpha}\delta)=\gamma(1-\alpha\overline{\delta})(1-\overline{\gamma}\delta)$
⇔$(1-\gamma\overline{\delta})(\alpha-\delta)=(1-\alpha\overline{\delta})(\gamma-\delta)$
⇔$(\alpha-\gamma)(1-\delta\overline{\delta})=0$
⇔ $|\delta|=1$
となり題意は示された。

注の部分は基本的な計算で確認できます。補題として覚えておくとよいでしょう。詳しくは,複素数平面の基本的な公式集の一番下側。

図形的な証明の方が美しいですが,計算による証明の方が機械的です。どちらも強くなりたいものです。
分野: 複素数  レベル: 数学オリンピック