2014/03/04

シュワルツの不等式の応用公式

分野: 不等式  レベル: 数学オリンピック

シュワルツの不等式の応用例として頻出な形を紹介します。

分数の和を下から抑える公式:
$b_i>0 (i=1\cdots n)$ のとき,以下の不等式が成立する。
$\sum\dfrac{a_i^2}{b_i}\geq \dfrac{(\sum a_i)^2}{\sum b_i}$
等号成立条件は $\overrightarrow{a}$ と $\overrightarrow{b}$ が平行であること。

シグマの和は $1$ から $n$ まで取る。


特に $n=2, 3$ の場合が頻出です:
$\dfrac{a_1^2}{b_1}+\dfrac{a_2^2}{b_2}\geq \dfrac{(a_1+a_2)^2}{b_1+b_2}$

$\dfrac{a_1^2}{b_1}+\dfrac{a_2^2}{b_2}+\dfrac{a_3^2}{b_3}\geq \dfrac{(a_1+a_2+a_3)^2}{b_1+b_2+b_3}$

左辺のような分数の足し算を評価するときに威力を発揮する公式です。
一般的に3つ以上の分数の和は何も考えずに通分すると式が非常に複雑になってしまう場合が多くそのような問題は厄介なのですが,この公式を用いればうまくいく場合が多いです。

証明

シュワルツの不等式 $\sum x_i^2\sum y_i^2\geq (\sum x_iy_i)^2$ において,$x_i=\dfrac{a_i}{\sqrt{b_i}}, y_i=\sqrt{b_i}$ とおいて両辺を $\sum b_i$ で割ればよい。

この公式はシュワルツの不等式の特殊ケースで,上記のように簡単に証明できるのですが,この特殊ケースは頻出なので丸々覚えておくことをオススメします。(もちろん記述式の場合はシュワルツの不等式を用いてこの公式を証明する必要があります)

この公式はどのような場合に威力を発揮するか

この公式が適用できるのは以下の2つの条件が満たされたときのみです。
条件1、分数の和を下から抑えたい場合
条件2、分子が何かの2乗の形になっている場合

また,条件2は式変形をうまくすれば強引に満たすことができます。
つまり,分子が平方の形でない分数も,$\dfrac{y}{x}=\dfrac{y^2}{xy}$ とすれば分子を平方の形にすることができます。

公式の応用例

数学オリンピックエストニア予選の問題です。

問題1

$a, b, c >0, a^2+b^2+c^2=3$ のとき, $\dfrac{1}{1+2ab}+\dfrac{1}{1+2bc}+\dfrac{1}{1+2ca}\geq 1$ を証明せよ。

方針:左辺は分数の和の形で厄介です。分数の和を下から抑えたいので公式を使います。この例ではありがたいことに分子が1で平方の形になっています。

解答

公式より,$\dfrac{1}{1+2ab}+\dfrac{1}{1+2bc}+\dfrac{1}{1+2ca}\geq \dfrac{(1+1+1)^2}{3+2(ab+bc+ca)}$
よって,$\dfrac{9}{3+2(ab+bc+ca)}\geq 1$ つまり,
$ab+bc+ca\leq 3$ を示せばよいが,
これは有名な不等式 $ab+bc+ca\leq a^2+b^2+c^2$  より導かれる。

問題2

$a, b, c >0$ のとき, $\dfrac{b}{2a+b}+\dfrac{c}{2b+c}+\dfrac{a}{2c+a}\geq 1$ を証明せよ。

方針:前問と同様に左辺は分数の和の形です。分数の和を下から抑えたいので公式を使います。公式を使うために分子を強引に平方の形にします。

解答

$\dfrac{b}{2a+b}+\dfrac{c}{2b+c}+\dfrac{a}{2c+a}=\dfrac{b^2}{2ab+b^2}+\dfrac{c^2}{2bc+c^2}+\dfrac{a^2}{2ca+a^2}\\
\geq \dfrac{(a+b+c)^2}{a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca}\\
=1$
より題意は示された。

次は,1991アジア太平洋数学オリンピック(APMO)の第3問です。

問題3

正の実数 $a_i,b_i\:(i=1,2,\cdots,n)$ が $\displaystyle\sum_{k=1}^na_k=\sum_{k=1}^nb_k$ を満たすとき以下の不等式を証明せよ:
$\dfrac{a_1^2}{a_1+b_1}+\dfrac{a_2^2}{a_2+b_2}+\cdots +\dfrac{a_n^2}{a_n+b_n}\geq\dfrac{a_1+a_2+\cdots +a_n}{2}$

方針:$n$ 変数でもビビる必要はありません。分数の和でしかも分子が平方の形。上記の公式を使ってくださいと言わんばかりの形です。

解答

左辺 $\geq\dfrac{(a_1+a_2+\cdots +a_n)^2}{a_1+b_1+a_2+b_2+\cdots +a_n+b_n}\\
=\dfrac{(a_1+a_2+\cdots +a_n)^2}{2(a_1+a_2+\cdots +a_n)}\\
=\dfrac{(a_1+a_2+\cdots a_n)}{2}$

ヘルダーの不等式を使ったさらに発展的な公式

シュワルツの不等式を一般化するとヘルダーの不等式になります。そこで,シュワルツの応用公式の一般化としてヘルダーの応用公式の一般化が考えられます。

各変数が正のとき,以下の不等式が成立する。
$\sum\dfrac{a_i^{p+1}}{b_i^p}\geq \dfrac{(\sum a_i)^{p+1}}{(\sum b_i)^p}$

$p=1$ の場合が冒頭の公式です,ヘルダーの不等式を使えば証明できます。数オリでまれに役立つのでこちらも覚えておきましょう。

多くの場面で重宝する大好きな公式です。

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