2014/09/06

累乗平均の不等式の具体例と証明

分野: 不等式  レベル: 数学オリンピック

累乗平均の不等式(power mean inequality):
任意の非負の実数 $x_k$ たちと正の実数 $p$ に対して
$f(p)=\left(\dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{k=1}^nx_k^p\right)^{\frac{1}{p}}$
とおくと $f(p)$ は単調増加


$f(p)$ は $x_k$ たちの「 $p$ 乗平均」や「 $p$ ノルム」と呼ばれる重要な量です。

累乗平均の不等式の具体例

一般形だと分かりにくいのでまずは $n=2$ で様子を見てみます:
$f(p)=(x_1^p+x_2^p)^{\frac{1}{p}}$

・ $p=1$ と $2$ の場合を考えると,
$\dfrac{x_1+x_2}{2}\leq\sqrt{\dfrac{x_1^2+x_2^2}{2}}$

・ $p=1$ と $3$ の場合を考えると,
$\dfrac{x_1+x_2}{2}\leq\sqrt[3]{\dfrac{x_1^3+x_2^3}{2}}$

・次に,一般の $n$ に対して $p=1$ と $2$ の場合を考えると,
$\dfrac{x_1+x_2+\cdots+x_n}{n}\leq\sqrt{\dfrac{x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2}{n}}$

等号成立条件はいずれも「全ての $x_k$ たちが等しい」ことです。 $p=1$ と $2$ の場合の大小関係(二乗平均と相加平均の不等式)がよく用いられます。

以下では累乗平均の不等式を証明していきます。

累乗平均の不等式の証明(片方が1ノルム)

目標は,任意の $p,\:q\:(p\geq q)$ に対して $f(p)\geq f(q)$ を示すことです。とりあえず重要そうな $q=1$ の場合の証明を試みます。

イェンゼンの不等式(凸関数の不等式)に慣れていれば $g(x)=x^p$ にイェンゼンの不等式を使いたくなるところです。

証明の前半部分

まず $q=1, p\geq 1$ の場合を証明する。
$g(x)=x^p$ とおくと,
$p\geq 1$ のとき $g(x)$ は下に凸なのでイェンゼンの不等式より
$\dfrac{g(x_1)+g(x_2)+\cdots +g(x_n)}{n}\geq g\left(\dfrac{x_1+x_2+\cdots+x_n}{n}\right)$
すなわち,
$\dfrac{x_1^p+x_2^p+\cdots +x_n^p}{n}\geq \left(\dfrac{x_1+x_2+\cdots+x_n}{n}\right)^p$
両辺の $p$ 乗根を取ると $f(p)\geq f(1)$ となる。

累乗平均の不等式の証明(一般の場合)

示したい不等式は,任意の非負の実数 $x_k$ たちと $p,q\; (p\geq q)$ に対して,
$\left(\dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{k=1}^nx_k^p\right)^{\frac{1}{p}}\geq \left(\dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{k=1}^nx_k^q\right)^{\frac{1}{q}}$
でした。
ここで,うまく変数変換をすると小さい方を $1$ ノルムの形にして先ほどの形に帰着することができます!

証明の後半部分

$y_k=x_k^q$ とおいて題意の不等式の両辺を $q$ 乗すると,示すべき不等式は以下のようになる:
$\left(\dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{k=1}^ny_k^{\frac{p}{q}}\right)^{\frac{q}{p}}\geq \left(\dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{k=1}^ny_k\right)$

この両辺は $y_k$ たちの $\dfrac{p}{q}$ ノルムと $1$ ノルムの形であり,先ほどの結果から
$f(\dfrac{p}{q})\geq f(1)$ なので確かに成立する。
※ $\dfrac{p}{q} \geq 1$ に注意

それなりに使うそれなりに有名なそれなりに美しい不等式です。
分野: 不等式  レベル: 数学オリンピック