2015/11/27

正多角形が作図可能であるための条件

分野: 整数問題  レベル: マニアック

正 $n$ 角形が定規とコンパスで作図可能 $\iff$ $n=2^Np_1\cdots p_k$ となる $0$ 以上の整数 $N$ と互いに異なるフェルマー素数 $p_1,\cdots,p_k$ が存在する。

定理の主張について

フェルマー素数とは,$0$ 以上の整数 $k$ を用いて $2^{2^k}+1$ と表すことができる素数です。→フェルマー数とその性質

例えば,$2^{2^0}+1=3$,$2^{2^1}+1=5$,$2^{2^{2}}+1=17$ などはフェルマー素数です。

正三角形の作図は中学数学で習います。正五角形の作図も高校数学で理解できます。→正五角形の対角線の長さと作図方法
なんと正十七角形も作図できるのです!

正多角形が作図可能である必要十分条件

正 $n$ 角形が作図可能
$\iff$ 長さ1の線分が与えられたときに長さ $\cos\dfrac{2\pi}{n}$ の線分が作図可能
$\iff$ $\cos\dfrac{2\pi}{n}$ が整数の四則演算とルートで表現できる

説明

一つ目の $\Rightarrow$ について。正 $n$ 角形が作図できるとき,長さの比が $1:\cos\dfrac{2\pi}{n}$ である2本の線分が作図できることから分かる。

sakuzu

一つ目の $\Leftarrow$ について。長さ $1$ の線分 $OA$ が与えられたときに長さ $\cos\dfrac{2\pi}{n}$ の線分 $OB$ が作図できるとき,$B$ を通り $OA$ と垂直な直線と中心が $O$ で半径が $OA$ である円の交点の1つ $C$ が作図できる。 $AC$ は正 $n$ 角形の1辺である。よって,正 $n$ 角形が作図できる。

二つ目の $\Rightarrow$ について。やや難しいので割愛。

二つ目の $\Leftarrow$ について。(整数の四則演算とルートで表現できる任意の数 $l$ に対して)長さ1の線分が与えられたとき,長さ $l$ の線分は作図可能。→平方根の長さを作図する2通りの方法

正十七角形の作図

任意のフェルマー素数 $p$ に対して $\cos\dfrac{2\pi}{p}$ は整数の四則演算とルートで表現できることが知られています。証明はかなり難しいです。例えば高木貞治の「初等整数論講義」という本に載っています。

この結果と先ほどの必要十分条件より正 $p$ 角形は作図可能ということです。

ちなみに,
$\begin{eqnarray}
\cos\dfrac{2\pi}{17}&=&\dfrac{1}{16}\left(-1+\sqrt{17}+2\sqrt{\dfrac{17-\sqrt{17}}{2}}\right)\\
&+&\dfrac{1}{4}\sqrt{\dfrac{17+3\sqrt{17}}{4}-\sqrt{\dfrac{17+\sqrt{17}}{2}}-\dfrac{1}{2}\sqrt{\dfrac{17-\sqrt{17}}{2}}}
\end{eqnarray}$
です。

正十七角形の作図の具体的な手順についての動画もおすすめです。

冒頭の定理の導出

(以上の事実は認めてしまった上で)冒頭の定理の $\Leftarrow$ を導出します。以下の2つの事実を証明すればOKです。

  1. 正 $n$ 角形が作図可能なら正 $2n$ 角形も作図可能。
  2. 互いに素な数 $p_1,p_2$ に対して正 $p_1$ 角形と正 $p_2$ 角形が作図可能なら正 $p_1p_2$ 角形も作図可能。

導出

1について。 $\cos\dfrac{2\pi}{n}$ が整数の四則演算とルートで表現できるなら,半角の公式から $\cos\dfrac{2\pi}{2n}$ も整数の四則演算とルートで表現できる。

2について。 $p_1$ と $p_2$ は互いに素なので $p_1A+p_2B=1$,つまり $\dfrac{1}{p_1p_2}=\dfrac{B}{p_1}+\dfrac{A}{p_2}$ を満たす整数 $A,B$ が存在する。→一次不定方程式ax+by=cの整数解

よって,加法定理より
$\cos\dfrac{2\pi}{p_1p_2}=\cos\dfrac{2\pi B}{p_1}\cos\dfrac{2\pi A}{p_2}-\sin\dfrac{2\pi B}{p_1}\sin\dfrac{2\pi A}{p_2}$
である。

よって,$\cos\dfrac{2\pi}{p_1}$ と $\cos\dfrac{2\pi}{p_2}$ が整数の四則演算とルートで表現できるなら,$\cos\dfrac{2\pi}{p_1p_2}$ も整数の四則演算とルートで表現できる。

$\cos\dfrac{2\pi}{17}$ はかなりインパクトありますね。
分野: 整数問題  レベル: マニアック