2015/10/27

直交多項式の意味といくつかの例

分野: 解析  レベル: 大学数学

どの二つを取っても互いに直交するような多項式の集合を直交多項式系と言う。

多項式が直交するとは

(この記事では)非負関数(重みのようなもの)$w(x)$ と積分区間 $[a,b]$ が与えられたとき,二つの多項式 $f(x)$ と $g(x)$ の内積を $\displaystyle\int_a^b f(x)g(x)w(x)dx$ と定義します。

高校数学で習うベクトルの内積の成分表示:$\displaystyle\sum_{i}f_ig_i$ を拡張したような形になっています。

そして,二つの多項式の内積が $0$ であるとき「直交する」と言います。例えば,$a=-1,b=1,w(x)=1$ のとき,$f(x)=x$ と $g(x)=x^2$ は直交します。なぜなら、 $\displaystyle\int_{-1}^1f(x)g(x)dx=\dfrac{1}{4}-\dfrac{1}{4}=0$ となるからです。

直交多項式の例(チェビシェフ多項式)

直交多項式系とは,どの二つを取っても互いに直交するような多項式の集合です。

実は,高校数学でもそれなりになじみ深いチェビシェフ多項式も直交多項式の一つです!

チェビシェフ多項式 $T_n(x)\:(n=0,1,2,\cdots)$ は直交多項式系である。ただし,重みは $w(x)=\dfrac{1}{\sqrt{1-x^2}}$,積分区間は $[-1,1]$

(第一種の)チェビシェフ多項式は $\cos n\theta$ を $\cos\theta$ で表すときに登場する多項式です。→チェビシェフ多項式

証明

目標は,異なる $m,n$ に対して $I=\displaystyle\int_{-1}^1T_m(x)T_n(x)\dfrac{1}{\sqrt{1-x^2}}dx=0$ を証明すること。 $x=\cos\theta$ と置換すると,
$I=\displaystyle\int_{\pi}^{0}T_m(\cos \theta)T_n(\cos \theta)\dfrac{(-\sin \theta)}{\sin\theta}d\theta\\
=\displaystyle\int_0^{\pi}\cos m\theta\cos n\theta d\theta$
これは,コサインの積和公式を使って計算すると $0$ になることが分かる。
三角関数の積の積分と直交性の計算と同じ)

直交多項式の例(それ以外)

  • ルジャンドル多項式:$f_n(x)=\dfrac{1}{2^nn!}\left(\dfrac{d}{dx}\right)^n(x^2-1)^n$
    $w(x)=1,[a,b]=[-1,1]$ に対する直交多項式系です。電磁気の多重極展開などで登場します。
  • エルミート多項式:$f_n(x)=(-1)^ne^{x^2}\left(\dfrac{d}{dx}\right)^ne^{-x^2}$
    $w(x)=e^{-x^2},[a,b]=[-\infty,\infty]$ に対する直交多項式系です。量子力学で調和振動子を扱うときなどに登場します。

他にもたくさんあります!

直交多項式と漸化式

以下,$f_n(x)$ は $n$ 次式とします。

直交多項式系 $f_n(x)\:(x=0,1,2,\cdots)$ は $f_{n+2}(x)=(A_nx+B_n)f_{n+1}(x)+C_nf_n(x)$ という三項間漸化式を満たします。

例えば,第一種チェビシェフ多項式の漸化式は,
$f_{n+2}(x)=2xf_{n+1}(x)-f_n(x)$
です($A_n,B_n,C_n$ がたまたま $n$ に依存していない)。これは三角関数の加法定理からすぐに分かります。

直交多項式系によって $A_n,B_n,C_n$ は変わりますが,常にとある三項間漸化式が成立するというのが美しいですね。

直交多項式はかっこいい名前が多いです。
分野: 解析  レベル: 大学数学