2015/08/20

直交行列の5つの定義と性質の証明

分野: 線形代数  レベル: 大学数学

直交行列の同値な5つの定義,同値であることの証明,性質および具体例を解説します。

直交行列の定義

実正方行列(サイズを $n\times n$ とする)$U$ に対して以下の5つの条件は同値です。この条件のいずれか一つ(従って全部)を満たすとき $U$ を直交行列と言います。
(同値であることの証明は記事末に)

1. $U^{\top}=U^{-1}$
2. $U$ の $n$ 本の行ベクトルが正規直交基底をなす
3. $U$ の $n$ 本の列ベクトルが正規直交基底をなす
4.任意の $x\in \mathbb{R}^n$ に対して $\|Ux\|=\|x\|$
5.任意の $x,y\in\mathbb{R}^n$ に対して $Ux\cdot Uy=x\cdot y$

補足

・5つとも重要です,覚えましょう。

  • 「正規直交」とは,全てのベクトルの長さが $1$ で異なる二本のベクトルの内積が $0$ であることを意味します。
  • 4は「変換でベクトルのノルム(長さ)が変わらない」,5は「変換で二つのベクトルの内積が変わらない」ことを表しています。
  • 直交行列の概念を複素行列に拡張したものをユニタリー行列と言います。

直交行列の性質

・直交行列の行列式は $\pm 1$ である。

証明

「積の行列式=行列式の積」であることと $\det U=\det U^{\top}$ を使うと,
$1=\det I\\=\det U\det U^{-1}\\=\det U\det U^{\top}\\
=(\det U)^2$
よって $\det U=\pm 1$


・直交行列の逆行列も直交行列

証明

直交行列の定義1〜3を使う。
$U$ が直交行列
→ $U$ の列ベクトルが正規直交基底をなす
→ $U^{\top}$ の行ベクトルが正規直交基底をなす
→ $U^{-1}$ の行ベクトルが正規直交基底をなす
→ $U^{-1}$ が直交行列


・対称行列は直交行列で対角化できる。
→対称行列の固有値と固有ベクトルの性質の証明
ちなみに複素数バージョンだと「エルミート行列はユニタリー行列で対角化できる」となります。

直交行列の例

・二次元の回転行列
$\begin{pmatrix}\cos\theta&-\sin\theta\\\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix}$

・置換行列(各行,各列に $1$ が一つずつある行列)
$\begin{pmatrix}0&1&0\\1&0&0\\0&0&1\end{pmatrix}$

・アダマール行列(の定数倍)
$\dfrac{1}{4}\begin{pmatrix}1&1&1&1\\1&-1&1&-1\\1&1&-1&-1\\1&-1&-1&1\end{pmatrix}$

5つの定義が同値であることの証明

まず1,2,3の同値性を証明して,最後に1→5→4→3を証明することで5と4を仲間に入れます。

・1と2が同値であること
$U$ の第 $i$ 行(横ベクトル)を $u_i^{\top}$ とおくと,$UU^{\top}$ の $ij$ 成分は $u_i^{\top} u_j$ となる。よって,1と2の条件はいずれも $u_i^{\top} u_j$ が $i=j$ のとき $1$,$i\neq j$ のとき $0$ であることを表している。

・1と3が同値であること
1と2が同値であることの証明とほぼ同じ($U^{\top}U=I$ を考える)。

・1ならば5
$Ux$ と $Uy$ の内積は,$x^{\top}U^{\top}Uy$
であり,$U^{\top} U=I$ なのでこれは $x$ と $y$ の内積と一致する。

・5ならば4
5で $y=x$ とすると $\|Ux\|^2=\|x\|^2$,つまり $\|Ux\|=\|x\|$ を得る。

・4ならば3
$U$ の $i$ 列目を $u_i$ とおく。
$x=e_i$(第 $i$ 成分が $1$ で残りが $0$ であるような縦ベクトル)を4に入れると $\|u_i\|=1$ が分かる。次に $x=e_i+e_j\:(i\neq j)$ を4に入れると $\|u_i+u_j\|=\sqrt{2}$ が分かる。両辺二乗すると,$u_i\cdot u_j=0$ が分かる。

僕は置換行列が結構好きです。
分野: 線形代数  レベル: 大学数学