nのn乗根の最大項と極限

入試でもしばしばテーマになる数列「nのn乗根」について,覚えておくべき性質を3つ解説します。

a1=1,a2=2,a3=33,a_1=1,a_2=\sqrt{2},a_3=\sqrt[3]{3},\cdots という数列です。以下の問題が最終ゴールです。

問題

ana_n が最大となるのは nn がいくつのときか?

nのn乗根の極限

性質1

limnnn=1\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sqrt[n]{n}=1

証明

nn=n1n\sqrt[n]{n}=n^{\frac{1}{n}} だが,指数部分に文字があるので,対数を取って式を扱いやすくする:

lognn=logn1n=lognn\log\sqrt[n]{n}=\log n^{\frac{1}{n}}=\dfrac{\log n}{n}

そこで,以後は f(x)=logxxf(x)=\dfrac{\log x}{x} という関数を考える。

すると,上記の性質1は limxf(x)=0\displaystyle\lim_{x\to\infty} f(x)=0 (※)

と同値。これは「多項式は対数関数より早く発散する」という事実から明らか。

※をきちんと証明するなら例えば,

  • まず ex1+x+x22e^x\geq 1+x+\dfrac{x^2}{2} を示す。→マクローリン型不等式(指数関数)
  • 次に,はさみうちの原理から limxxexlimxx1+x+x22=0\displaystyle\lim_{x\to\infty}\dfrac{x}{e^x}\leq\lim_{x\to\infty}\dfrac{x}{1+x+\frac{x^2}{2}}=0 がわかる。
  • 最後に xxlogx\log x と置くと※を得る。

log x/xのグラフの概形

次は数列 ana_n の増減を調べるために y=f(x)y=f(x) のグラフについて考えます。

性質2

f(x)=logxxf(x)=\dfrac{\log x}{x} のグラフの概形は y=logxy=\log x のグラフを用いて描くことができる。

きちんとグラフを描くには微分して増減表を書く必要がありますが,微分しなくても大雑把なグラフの概形はイメージできます。

y=logx/xのグラフの概形

logxx\dfrac{\log x}{x} は「グラフ y=logxy=\log x 上の点 (x,logx)(x,\log x) と原点を結ぶ直線の傾き」であることに注意すれば概形をイメージできます。

  1. xx00 に近いとき傾きは -\infty から出発(赤)
  2. x=1x=1 で傾き 00 になる(黒 xx 軸)
  3. x=ex=e で傾き最大(紫)
  4. その後ゆるやかに減少して 00 へ収束(青)

注:「傾きが最大になるのが x=ex=e のとき」というのは微分を用いて分かることです。結局微分を使う必要があるのですが,あらかじめグラフの概形が分かっていると微分で計算ミスをしたときにすぐ気づけます。

nのn乗根の最大項

グラフが描ければ冒頭の問題に解答できます。 ana_nama_m の大小関係は f(n)f(n)f(m)f(m) の大小関係と同じなので。 f(n)f(n) が最大となる nn を求めればよいわけです。

それはグラフより n=2n=2 または n=3n=3 の場合です。(n=3n=3 の方が大きそうですが)実際に近似的に値を計算すると,

2=1.41,33=1.44\sqrt{2}=1.41,\sqrt[3]{3}=1.44 となり a3a_3 が最大です。

log33log2=log32log236>0\log \sqrt[3]{3}-\log \sqrt{2}=\dfrac{\log 3^2-\log 2^3}{6}> 0 からも大小関係が分かります)

性質3

33\sqrt[3]{3} が一番大きい

関連する有名問題

問題

eπ>πee^{\pi} > \pi^e を証明せよ。

この問題の両辺をよく見ると ee>ππ \sqrt[e]{e} > \sqrt[\pi]{\pi} を示せばよいことが分かります。あとは簡単ですね!

→ 有名不等式 e^π > π^e の証明

冒頭の問題の答えが直感で予想できればかなりセンスがよいです。

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