2014/03/05

Nesbittの不等式の6通りの証明

分野: 不等式  レベル: 数学オリンピック

Nesbittの不等式:
$a, b, c>0$ のとき以下の不等式が成立する。
$\dfrac{a}{b+c}+\dfrac{b}{c+a}+\dfrac{c}{a+b}\geq \dfrac{3}{2}$


Nesbittの不等式はわりと有名で他のもっと難しい不等式の証明に使われることもあるので覚えておくとよいでしょう。このページではNesbittの不等式を様々な方法で証明しつつ,不等式の証明テクニックを確認します。

分母を払ってNesbittの不等式を証明

方針:まずはセオリー通り,分母を払って整理します。この程度の不等式なら気合いで整理することができます。その後は一工夫必要ですが,対称式なので3つに分解する方法が使えます。また,Schurの不等式や,Muirheadの不等式を使うこともできます。

証明1

Nesbittの不等式を分母を払って整理する:
$2(a^3+b^3+c^3)\geq a^2b+ab^2+b^2c+bc^2+c^2a+ca^2\cdots (1)$
この不等式を示せばよいが,
$a^3+b^3-a^2b-b^2a=(a+b)(a-b)^2\geq 0$ より $a^3+b^3\geq a^2b+ab^2$ が成立するので,
同様な不等式を2つ作り3つの不等式を辺々加えることで求める不等式を得る。

証明2

分母を払うところまでは同じ。
(1)を見た時に,対称式かつ3次の斉次式なので,$r=1$ の場合のSchurの不等式が使えそうだと思う:
$a^3+b^3+c^3+3abc\geq a^2b+ab^2+b^2c+bc^2+c^2a+ca^2$
よって,あとは $a^3+b^3+c^3\geq 3abc$ を示せばよいが,これは有名な因数分解公式から分かる(相加相乗平均からも分かる):
$a^3+b^3+c^3-3abc=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\\
=\dfrac{1}{2}(a+b+c)\{(a-b)^2+(b-c)^2+(c-a)^2\}\geq 0$

証明3

分母を払うところまでは同じ。
(1)を見た時に,対称式かつ斉次式なので,Muirheadの不等式が使えそうだと思う:
$[3,0,0]\succeq [2,1,0]$ よりMuirheadの不等式から$(1)$ が成立する。

シュワルツの不等式を用いた証明

方針:通分するなんて泥臭いことをしたくないという人にオススメ,分数の和を下から抑えたいので,シュワルツの不等式の応用公式を用います。

証明4

シュワルツの不等式から,
$\dfrac{a}{b+c}+\dfrac{b}{c+a}+\dfrac{c}{a+b}\\
=\dfrac{a^2}{ab+ac}+\dfrac{b^2}{bc+ba}+\dfrac{c^2}{ca+cb}\\
\geq \dfrac{(a+b+c)^2}{2(ab+bc+ca)}$
よって,$\dfrac{(a+b+c)^2}{2(ab+bc+ca)}\geq \dfrac{3}{2}$ を示せばよいが,これは整理すると以下の有名な不等式と同値。
$a^2+b^2+c^2\geq ab+bc+ca$

イェンゼンの不等式を用いた証明

方針:斉次式なので $a+b+c=1$ と規格化して考えることができます。(不等式の証明のコツ2)整理すると $f(a)+f(b)+f(c)$ という形が出てきてイェンゼンの不等式が使えそうです

証明5

斉次式なので $a+b+c=1$ として考えればよい:$\dfrac{a}{1-a}+\dfrac{b}{1-b}+\dfrac{c}{1-c}\geq \dfrac{3}{2}$ を示せばよいが,
$f(x)=\dfrac{x}{1-x}$ とおくと,$f(x)$ は $0 <x <1$ で凸関数なのでイェンゼンの不等式より,$f(a)+f(b)+f(c)\geq 3f(\dfrac{a+b+c}{3})=3f(\dfrac{1}{3})=\dfrac{3}{2}$

置き換えを用いた証明

方針:分母がうっとおしいので丸ごと文字でおいてしまいます。

証明6

$b+c=x, c+a=y, a+b=z$ とおいて整理すると,証明すべき不等式は,
$\dfrac{y+z-x}{2x}+\dfrac{z+x-y}{2y}+\dfrac{x+y-z}{2z}\geq \dfrac{3}{2}$
整理すると,
$\dfrac{y}{x}+\dfrac{x}{y}+\dfrac{z}{y}+\dfrac{y}{z}+\dfrac{x}{z}+\dfrac{z}{x}\geq 6$
となるが,これは相加相乗平均の不等式から成立する。

証明1,6が比較的素直だと思います。証明4,5は分数の数が増えても適用できそうですね。ちなみに,Nesbittの不等式の項数を増やしたShapiroの不等式というものもあるようです。

Nesbittの不等式は一見,重箱の隅をつつくような不等式ですが,意外と知っていると役立つことが多いです

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