2014/06/12

多変数のガウス積分

分野: 解析  レベル: 大学数学

多変数のガウス積分:
$\displaystyle\int \exp(-\dfrac{1}{2}x^{\mathrm{T}}Ax+b^{\mathrm{T}}x)dx=\sqrt{\dfrac{(2\pi)^n}{\det A}}\exp (\dfrac{1}{2}b^{\mathrm{T}}A^{-1}b)$


完全に大学内容ですが,1次元のガウス積分の発展として解説します。多変数の正規分布にまつわる積分です。一次元の場合と比較しつつどのように拡張されるのかぼんやりと理解していただければと思います。

大学数学で重要となる概念のオンパレードです!

  • 二次関数を行列,ベクトルで表す(二次形式)
  • 正定値行列,行列の平方根
  • 多変数の置換積分(ヤコビアン)

二次関数の行列表示

目標は指数の中身が多変数の二次関数であるような場合の積分を実行することです。

多変数($n$ 変数)の二次関数は一般的に,
$\displaystyle\sum_{i=1}^n\sum_{j \geq i}^na_{ij}x_ix_j+\displaystyle\sum_{i=1}^nb_ix_i+c$
と表すことができます。

シグマが入り乱れていて煩雑なので行列とベクトルを用いた表示に変換します:
$-\dfrac{1}{2}x^{\mathrm{T}}Ax+b^{\mathrm{T}}x+c$

$A$ は対称行列,$b,x$ はベクトルです。 $c$ は定数項なので今回はほっときます。
ここで,ガウス積分が発散しないための必要十分条件として「 $A$ が正定値である」ことが課せられます。そのため $A^{\frac{1}{2}}$ が定義できます。

また,左辺は$-\infty$ から $\infty$ まで全ての変数($x_1,x_2,\cdots,x_n$)で積分します。

ガウス積分の準備:平方完成

一次元の場合の二次関数が平方完成できたのと同様に,多変数の場合も平方完成することができます:

$-\dfrac{1}{2}x^{\mathrm{T}}Ax+b^{\mathrm{T}}x
=\\-\dfrac{1}{2}(A^{\frac{1}{2}}x-A^{-\frac{1}{2}}b)^{\mathrm{T}}(A^{\frac{1}{2}}x-A^{-\frac{1}{2}}b)+\dfrac{1}{2}(b^{\mathrm{T}}A^{-1}b)$

ちなみに1変数の場合は$-\dfrac{1}{2}ax^2+bx=-\dfrac{1}{2}(\sqrt{a}x-\dfrac{b}{\sqrt{a}})^2+\dfrac{1}{2}\dfrac{b^2}{a}$

多変数のガウス積分

方針:置換積分を用いて公式を証明します。多変数の場合の置換積分なのでヤコビアンが必要になります。

証明

$I=\displaystyle\int \exp(-\dfrac{1}{2}x^{\mathrm{T}}Ax+b^{\mathrm{T}}x)dx\\
=\displaystyle\int \exp(-\dfrac{1}{2}(A^{\frac{1}{2}}x-A^{-\frac{1}{2}}b)^{\mathrm{T}}(A^{\frac{1}{2}}x-A^{-\frac{1}{2}}b)+\dfrac{1}{2}b^{\mathrm{T}}A^{-1}b)dx\\
=\exp(\dfrac{1}{2}b^{\mathrm{T}}A^{-1}b)\int \exp(-\dfrac{1}{2}y^{\mathrm{T}}y)(\det A)^{-\tfrac{1}{2}}dy$
ただし,ここで $y=A^{\frac{1}{2}}x-A^{-\frac{1}{2}}b$ と置換し,ヤコビアンが$(\det A)^{-\tfrac{1}{2}}$ であることを用いた。
よって,一次元のガウス積分に帰着される:
$I=(\det A)^{-\tfrac{1}{2}}\exp(\dfrac{1}{2}b^{\mathrm{T}}A^{-1}b)\int \exp(-\dfrac{1}{2}(y_1^2+y_2^2+\cdots +y_n^2))dy\\
=(\det A)^{-\tfrac{1}{2}}\exp(\dfrac{1}{2}b^{\mathrm{T}}A^{-1}b)(\sqrt{2\pi})^n$

高校数学の考え方が自然に拡張されるのが美しいです
分野: 解析  レベル: 大学数学