2014/06/08

ミンコフスキーの不等式とその証明

分野: 不等式  レベル: マニアック

ミンコフスキー(Minkowski)の不等式:
$1\leq p\leq\infty$ のとき,
$\|x+y\|_p\leq\|x\|_p+\|y\|_p$

三角不等式の一般化です。

$p=2$ の場合の証明くらいは入試で出題されるかもしれません。ここでは一般的な場合のミンコフスキーの不等式を紹介します。

ミンコフスキーの不等式の意味

ミンコフスキーの不等式における $x,y$ はスカラーに限らず一般的には,「 $n$ 次元ベクトル」または「連続関数」です。以下では $n$ 次元ベクトルの場合について説明します。連続関数($L_p$ 空間)の場合はシグマをインテグラルに変えるだけで全く同じ議論ができます。

$x=(x_1,x_2,x_3,\cdots,x_n)$ と表します。

$\|x\|_p=(\displaystyle\sum_{k=1}^n|x_k|^p)^{\frac{1}{p}}$ は $x$ の大きさを表す指標で,$p$ ノルムと呼ばれます。 $p=2$ の場合はいつも用いるベクトルの長さに一致します。(ユークリッドノルム)

以上を踏まえた上でミンコフスキーの不等式の例を挙げてみます:

$n=2,p=2$ の場合
$\sqrt{(x_1+y_1)^2+(x_2+y_2)^2}\leq\sqrt{x_1^2+x_2^2}+\sqrt{y_1^2+y_2^2}$

これは平面における三角不等式そのものです。両辺を二乗してコーシーシュワルツの不等式を用いると証明できます。

ミンコフスキーの不等式の証明の流れ

一般の場合の証明の流れは以下のようになります:

ステップ1:ヤングの不等式の証明
ステップ2:(狭義の)ヘルダーの不等式の証明
ステップ3:ミンコフスキーの不等式の証明

この流れは非常に有名で,3つの有名不等式の証明を含んでいます。
ステップ1に関してはヤングの不等式の3通りの証明を参照してください。

以下では,ヤングの不等式:
$\dfrac{a^p}{p}+\dfrac{b^q}{q}\geq ab$  $(a,b > 0,p,q > 1, \dfrac{1}{p}+\dfrac{1}{q}=1)$
を用いてステップ2,3に進んでいきます。

ステップ2:ヘルダーの不等式の証明

ヘルダーの不等式:$p,q > 1, \dfrac{1}{p}+\dfrac{1}{q}=1$ のとき,
$\displaystyle\sum_{k=1}^n|x_ky_k|\leq\|x\|_p\|y\|_q$

注:ヘルダーの不等式には代数でよく用いられる別の表現もあります。→ヘルダーの不等式のエレガントな証明と頻出形

証明

$x_i,y_i$ についての斉次式なので $\|x\|_p=\|y\|_q=1$ の場合についてのみ証明すればよい。(例えば $x$ を $a$ 倍すると $p$ ノルムも $a$ 倍され,右辺と左辺の比は変わらない)
ヤングの不等式に $a=|x_i|,b=|y_i|$ を代入すると,
$|x_iy_i|\leq\dfrac{|x_i|^p}{p}+\dfrac{|y_i|^q}{q}$
これを $i=1$ から $n$ まで足し合わせると,
$\displaystyle\sum_{k=1}^n|x_ky_k|\leq\dfrac{\|x\|_p^p}{p}+\dfrac{\|y\|_q^q}{q}=\dfrac{1^p}{p}+\dfrac{1^q}{q}=1=\|x\|_p\|y\|_q$
となりヘルダーの不等式を得る。

ステップ3:ミンコフスキーの不等式の証明

これは知らないと思いつきません。左辺の $p$ 乗を評価していきます。

証明

$\|x+y\|_p^p=\displaystyle\sum_{k=1}^n|x_k+y_k|^p\\
\leq \displaystyle\sum_{k=1}^n|x_k||x_k+y_k|^{p-1}+\sum_{k=1}^n|y_k||x_k+y_k|^{p-1}$
ここで,右辺第一項はヘルダーの不等式より,上から
$\|x\|_p\||x+y|^{p-1}\|_q\cdots$ ※
で抑えられる。(ただし,$q=\dfrac{p}{p-1}$)
※を変形すると,
$\|x\|_p(\displaystyle\sum_{k=1}^n|x_k+y_k|^{p})^{\frac{p-1}{p}}\\
=\|x\|_p\|x+y\|_p^{p-1}$
第二項も同様に評価できるので結局,
$\|x+y\|_p^p\leq \|x\|_p\|x+y\|_p^{p-1}+\|y\|_p\|x+y\|_p^{p-1}$

この両辺を $\|x+y\|_p^{p-1}=M$ で割るとミンコフスキーの不等式を得る。
($M=0$ のときは左辺$=0$ となり自明に成立)

ミンコフスキーの不等式の証明は簡単そうに見えてわりと大変でした、おそらく入試には出ないでしょう
分野: 不等式  レベル: マニアック