区分求積法の難問~京大2003後期~

f(x)f(x)0x10\leq x\leq 1 で連続微分可能なとき

limnk=12n(1)kf(k2n)=12{f(1)f(0)}\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{2n}(-1)^kf\left(\dfrac{k}{2n}\right)\\=\dfrac{1}{2}\{f(1)-f(0)\}

一見複雑ですが美しい公式です。公式の自然な証明と,応用例として京大2003後期第5問を解説します。

なお,ff が連続微分可能とは,ff が連続かつ ff' が存在して連続という意味です。

公式の観察

上記の公式を覚える必要はありませんが,考え方はしっかり理解しておきましょう。きっとどこかの難関大学でまた出題されます!

公式を証明する方法はいくつかありそうですが,ここでは 「リミットとシグマを見たら区分求積法を連想すべし」という発想から証明します。

区分求積法を直接は使えないので工夫する必要があります。そこで,とりあえずシグマの部分を具体的に書き下してみます:

f(12n)+f(22n)f(32n)+f(42n)-f\left(\dfrac{1}{2n}\right)+f\left(\dfrac{2}{2n}\right)-f\left(\dfrac{3}{2n}\right)+f\left(\dfrac{4}{2n}\right)-\cdots

この形を見て以下の2つの基礎知識を組み合わせます!(これを思いつくのが一番むずかしい)

  • 正負が交互に現れるので二項ずつまとめて評価したくなる
  • 関数の差は平均値の定理で簡単に評価できる

具体的には例えば,平均値の定理より

f(22n)f(12n)=12nf(c1)f\left(\dfrac{2}{2n}\right)-f\left(\dfrac{1}{2n}\right)=\dfrac{1}{2n}f'(c_1)

と評価できます(c1c_112nc122n\dfrac{1}{2n}\leq c_1\leq \dfrac{2}{2n} を満たす定数)。

以上に注意して公式を証明します。

区分求積法を使う公式の証明

証明

平均値の定理より,

f(2k2n)f(2k12n)=12nf(ck)f\left(\dfrac{2k}{2n}\right)-f\left(\dfrac{2k-1}{2n}\right)=\dfrac{1}{2n}f'(c_k)

と書ける。ただし,2k12nck2k2n\dfrac{2k-1}{2n}\leq c_k\leq\dfrac{2k}{2n}

よって,k=12n(1)kf(k2n)=k=1n12nf(ck)\displaystyle\sum_{k=1}^{2n}(-1)^kf\left(\dfrac{k}{2n}\right)=\displaystyle\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{2n}f'(c_k)

これで区分求積法が使える:

limnk=12n(1)kf(k2n)=limn12k=1n1nf(ck)=1201f(x)dx=12(f(1)f(0))\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{2n}(-1)^kf\left(\dfrac{k}{2n}\right)\\ =\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{1}{2}\sum_{k=1}^{n}\dfrac{1}{n}f'(c_k)\\ =\dfrac{1}{2}\displaystyle\int_0^1f'(x)dx\\ =\dfrac{1}{2}(f(1)-f(0))

※2行目から3行目は区分求積法に慣れていれば自明ですが,ピンとこない人は図を書いてみると分かります。

※3行目から4行目は微分して積分すると元に戻ることを使っています。→なぜ定積分で面積が求まるのか

区分求積法の難問

2003年京大後期第5問です。

京大の後期は良問・難問が豊富です。

問題

以下の極限を求めよ:

limnk=12n(1)k(k2n)100\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{2n}(-1)^k\left(\dfrac{k}{2n}\right)^{100}

上記の公式(または考え方)を覚えていれば一瞬で解ける問題です。

解答

上記の公式で f(x)=x100f(x)=x^{100} とすると,

求めたい極限は 12(11000100)=12\dfrac{1}{2}(1^{100}-0^{100})=\dfrac{1}{2}

であることが分かる。

また,次の問題もどこかの入試問題だった気がします。

問題

以下の極限を求めよ:

limnk=12n(1)klog(1+k2n)\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{2n}(-1)^k\log\left(1+\dfrac{k}{2n}\right)

公式において f(x)=log(1+x)f(x)=\log(1+x) とすれば極限値が log22\dfrac{\log 2}{2} であることが分かります。

大学入試問題を一般化するのも楽しいです。

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