2015/09/08

勾配ベクトルの意味と例題

分野: 解析  レベル: 大学数学

偏微分係数を並べたものを勾配ベクトルと言う。

ベクトル解析の基本的な概念「勾配ベクトル」について解説します。

勾配ベクトルとは

・二変数関数 $f(x,y)$ に対して,その偏微分を並べた二次元ベクトル $\left(\dfrac{\partial f}{\partial x},\dfrac{\partial f}{\partial y}\right)$ を勾配ベクトル(グラディエント, gradient)と言い,$\nabla f$ と書きます。

例題

$f(x,y)=\log (x^2+y^2)$ の$(x,y)=(1,2)$ における勾配ベクトルを計算せよ。

解答

$x$ で偏微分すると $\dfrac{2x}{x^2+y^2}$,これは $x=1,y=2$ のとき $\dfrac{2}{5}$
$y$ で偏微分すると $\dfrac{2y}{x^2+y^2}$,これは $x=1,y=2$ のとき $\dfrac{4}{5}$
よって,勾配ベクトルは$(\dfrac{2}{5},\dfrac{4}{5})$


  • より一般に,$n$ 変数のスカラー値関数 $f(x_1,x_2,\cdots,x_n)$ について,$n$ 次元ベクトル $\nabla f=\left(\dfrac{\partial f}{\partial x_1},\cdots,\dfrac{\partial f}{\partial x_n}\right)$ を勾配(ベクトル)と言います。 $n=1$ のときはただの傾きです。
  • 以下では勾配ベクトルの大きさ(ユークリッドノルム)を $\|\nabla f\|$ と書きます。

勾配ベクトルの意味

(向きの意味)勾配ベクトルの向きは,今いる点からちょっと動いたときに関数の値が一番大きくなる向きである。

(大きさの意味)($C$ が小さいもとで)その向きに $C$ 進むと関数値は $C\|\nabla f\|$ くらい増える。

数学的に厳密な命題ではありませんが,勾配ベクトルの意味を端的に表しています。

(説明)
二変数関数の場合について説明する。

$(x_0,y_0)$ からちょっと動いた点$(x_0+\Delta x,y_0+\Delta y)$ における関数 $f$ の値は,
$f(x_0+\Delta x,y_0+\Delta y)=f(x_0,y_0)+f_x(x_0,y_0)\Delta x+f_y(x_0,y_0)\Delta y$ と一次近似できる。→二変数関数のテイラー展開の意味と具体例

ここで(以下の不等式から)移動距離 $\sqrt{(\Delta x)^2+(\Delta y)^2}$ が一定値 $C$ のもとでは,関数の増分 $f_x(x_0,y_0)\Delta x+f_y(x_0,y_0)\Delta y$ は $C\|\nabla f\|$ 以下であることが分かる:

$\{(\Delta x)^2+(\Delta y)^2\}\|\nabla f\|^2\\
\geq \{f_x(x_0,y_0)\Delta x+f_y(x_0,y_0)\Delta y\}^2$
コーシーシュワルツの不等式

等号成立条件は移動する向き$(\Delta x,\Delta y)$ が勾配ベクトルと同じ向きのとき。

ちなみに上の証明から,今いる点からちょっと動いたときに関数の値が一番小さくなる向きが$-\nabla f$ であることも分かります(最急降下方向)。

具体例

さっきの例:$f(x,y)=\log (x^2+y^2)$ について,勾配ベクトル場 $\left(\dfrac{2x}{x^2+y^2},\dfrac{2y}{x^2+y^2}\right)$ を図示してみます。

青が等高線,赤が勾配ベクトルです(矢印の始点における勾配ベクトルを表現している)。

勾配ベクトルの図示

〜向きについて〜
原点から遠ざかる向きです。これは原点が谷になっていて外に行けば行くほど関数値が増えることを表しています。

〜大きさについて〜
原点に近いほど大きいです。原点に近いほど急勾配であること(少し進むだけで関数値が大きく変化する)を表しています。

等高線と勾配ベクトルは垂直です。(→法線ベクトルの求め方と応用

山を登るときは勾配ベクトルを感じましょう。
分野: 解析  レベル: 大学数学