コッホ曲線の次元,曲線の長さなど

コッホ曲線と呼ばれる有名なフラクタル図形について解説します。コッホ雪片の長さ,面積は大学入試問題に出そうなレベルです。

コッホ曲線とは

コッホ曲線とコッホ雪片

1つの線分からスタートして,各線分に図のような「操作」をする(真ん中をボコっと膨らませる,膨らませた部分は正三角形)ことを無限回繰り返してできる図形をコッホ曲線と言います。

また,コッホ曲線を右側の図のように3つつなぎ合わせた図形をコッホ雪片と言います。図では表現できていませんが,本当は表面が無数にボコボコしています。

コッホ曲線の次元

コッホ曲線の次元について,大雑把な議論ですが2通りの解釈を説明します。

〜位相次元〜

コッホ曲線は「曲線」なので 一次元と考えるのは自然ですね。

〜ハウスドルフ次元〜

正方形を 12\dfrac{1}{2} 倍に縮小したものを4つ集めるともとの正方形を作れます。立方体を 12\dfrac{1}{2} 倍に縮小したものを8つ集めるともとの立方体を作れます。一般に,dd 次元のものを 1k\dfrac{1}{k} 倍に縮小したものでもとの図形が作れるとき,必要な個数は kdk^d 個であって欲しい気がします。

コッホ曲線の場合,13\dfrac{1}{3} 倍に縮小したものを4つ集めるともとの大きさのコッホ曲線を作れます。

つまり,コッホ曲線の次元 dd3d=43^d=4 を満して欲しい気がします。

このように考えると d=log341.26d=\log_3 4\fallingdotseq 1.26 となります。

曲線よりは詰まっているけど面には及ばない,というイメージです。

コッホ曲線の長さ

以下,スタートの線分の長さを 11 とします。

定理

コッホ曲線,コッホ雪片の長さは無限大である。

証明

コッホ曲線について証明すればよい。一回の操作で各線分の長さは 43\dfrac{4}{3} 倍になるので,

nn ステップ後の曲線の長さは (43)n\left(\dfrac{4}{3}\right)^n

これは nn\to\infty とすると無限大に発散する。

より一般に,コッホ曲線の任意の二点間の長さは無限大であることが分かります。

コッホ雪片の面積

コッホ雪片の面積は 253\dfrac{2}{5}\sqrt{3} である。

証明

一回の操作で一つの線分が4つの(長さが 13\dfrac{1}{3} 倍の)線分になる。

よって,nn ステップ後の線分の本数は 34n3\cdot 4^n であり,各線分の長さは 13n\dfrac{1}{3^n} である。

よって,n+1n+1 ステップ目で増える面積 Sn+1S_{n+1} は,一辺が 13n+1\dfrac{1}{3^{n+1}} である正三角形 34n3\cdot 4^n 個ぶんである。つまり

Sn+1=34n34(13n+1)2=312(49)nS_{n+1}=3\cdot 4^n\cdot \dfrac{\sqrt{3}}{4}\cdot \left(\dfrac{1}{3^{n+1}}\right)^2\\ =\dfrac{\sqrt{3}}{12}\left(\dfrac{4}{9}\right)^n

最初の正三角形の面積は 34\dfrac{\sqrt{3}}{4} なので,コッホ雪片の面積は,

34+n=0Sn+1=34+3121149=3485\dfrac{\sqrt{3}}{4}+\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}S_{n+1}\\ =\dfrac{\sqrt{3}}{4}+\dfrac{\sqrt{3}}{12}\cdot \dfrac{1}{1-\frac{4}{9}}\\ =\dfrac{\sqrt{3}}{4}\cdot\dfrac{8}{5}

となりコッホ雪片の面積が求まった。

もとの正三角形の面積の 1.61.6 倍です!

曲線の長さは無限なのに面積は有限です。