2015/05/20

Kiepertの定理とその証明

分野: 平面図形  レベル: 数学オリンピック

キエペルトの定理

Kiepert(キエペルト,キーペルト)の定理:
三角形 $ABC$ の外側(または内側)に相似な二等辺三角形 $ABF,BCD,CAE$ をつくる。このとき,$AD,BE,CF$ は一点 $X$ で交わる。

垂心,フェルマー点,ナポレオン点などを包含している非常に美しい定理です。

証明

以下,二等辺三角形の底角を $\theta$ とし,三角形 $ABC$ の面積を $|ABC|$ などと表します。

Kiepertの定理を証明します。チェバの定理の逆を用います。

証明

$AD$ と $BC$ の交点を $P$,$BE$ と $CA$ の交点を $Q$,$CF$ と $AB$ の交点を $R$ とおく。 $\dfrac{AR}{RB}\dfrac{BP}{PC}\dfrac{CQ}{QA}=1$ を示すのが目標。

ここで,
$\dfrac{AR}{RB}=\dfrac{|ACF|}{|BCF|}=\dfrac{AC\sin(A+\theta)}{BC\sin(B+\theta)}$

同様に,$\dfrac{BP}{PC}=\dfrac{AB\sin(B+\theta)}{AC\sin(C+\theta)}$
$\dfrac{CQ}{QA}=\dfrac{BC\sin(C+\theta)}{AB\sin(A+\theta)}$

よって,目標の式の左辺を計算するといい感じに約分されて $1$ になる。

なお,この証明は三角形と円の幾何学という本を参照しています。この本は図形マニアに超オススメです。

Kiepert双曲線

以下,三角形 $ABC$ は二等辺三角形でないとします(例えば $AB=AC$ だと $A=D$ となることがあるのでそのような特殊ケースは除外したい)。

$\theta$ を動かすと,三直線の交点 $X$ も動きます。 $\theta$ を動かしたときに $X$ が動く軌跡は直角双曲線になることが知られており,これをkiepert hyperbola (キエペルト双曲線)と言います。

なお,軌跡が直角双曲線になることの証明は座標計算でできます。ただし,計算がかなり大変&双曲線の回転を扱う必要があります。

いろいろな点を含むこと

特定の $\theta$ の値について考えてみます。

・ $\theta=0^{\circ}$:重心
$D,E,F$ は各辺の中点になります。

・ $\theta\to 90^{\circ}$:垂心
めちゃくちゃ大きい二等辺三角形が三つあるのをイメージしてください。このとき,例えば $AD$ と $BC$ は(極限で)直交することが分かります。

・ $\theta=\pm 60^{\circ}$:フェルマー点
マイナスのときは二等辺三角形を内側に作ると解釈してください。 $\theta=60^{\circ}$ のとき,フェルマー点と一致します。→三角形のフェルマー点の3通りの証明

・ $\theta=\pm 30^{\circ}$:ナポレオン点
これも三角形の「中心」の一つとして有名な点です。

・ $\theta=-A$:頂点 $A$
Kiepert双曲線は三角形 $ABC$ の各頂点を通ることも分かります($A$ が鋭角の場合と鈍角の場合で図が変わることに注意)。

久しぶりの図形&数学オリンピックレベルの記事です!
分野: 平面図形  レベル: 数学オリンピック