2014/05/16

対称性を用いた定積分の難しい問題の解法

分野: 積分  レベル: 最難関大学

$A=B$ のとき,$A=\dfrac{A+B}{2}$
という自明な等式を用いて定積分を計算できる場合がある


このタイプの定積分の計算は入試でたまに出題されます。(たいてい誘導がついています)

具体例:三角関数の定積分

sinのn乗,cosのn乗の積分公式で紹介したように,$\sin$ の積分と $\cos$ の積分には対称性があります。

この事実を利用した,「不定積分を求めるのは難しいけど定積分なら求まる」ようなエレガントな例を紹介します。

問題1

$I=\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\dfrac{\sin xdx}{\sin x+\cos x}$ を求めよ。

解答

対称性より,$I=\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\dfrac{\cos xdx}{\sin x+\cos x}$ となる。(厳密には $y=\dfrac{\pi}{2}-x$ と置換すればよい)
よって,
$I=\dfrac{1}{2}(I+I)\\
=\dfrac{1}{2}(\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\dfrac{\sin xdx}{\sin x+\cos x}+\int_0^{\frac{\pi}{2}}\dfrac{\cos xdx}{\sin x+\cos x})\\
=\dfrac{1}{2}\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}1dx\\
=\dfrac{\pi}{4}$

ちなみに,がんばれば不定積分を求めることもできます。→三角関数の有理式の積分

具体例:指数関数の定積分

問題2

$I=\displaystyle\int_{-1}^1\dfrac{dx}{1+e^{-2x}}$ を求めよ。

解答

分母分子に $e^x$ をかけると問題1のような形になる:
$I=\displaystyle\int_{-1}^1\dfrac{e^x}{e^x+e^{-x}}dx$
また,対称性より $I=\displaystyle\int_{-1}^1\dfrac{e^{-x}}{e^x+e^{-x}}dx$
(厳密には $y=-x$ と置換する)
よって,
$I=\dfrac{1}{2}(I+I)\\
=\dfrac{1}{2}\displaystyle\int_{-1}^11dx\\
=1$

Putnam Competitionの問題に挑戦

このテクニックは積分だけでなくシグマ計算にも使えます。

次の問題はPutnam Competition(PC,パトナム競争)と呼ばれる数学コンテストの過去問です。

問題3(PC 1994 A-4)

$I=\displaystyle\sum_{m=1}^{\infty}\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{m^2n}{3^m(n3^m+m3^n)}$ を求めよ。

証明

与式を眺めると,分母分子を $mn$ で割ることで綺麗な形になることが分かります:
$I=\displaystyle\sum_{m=1}^{\infty}\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{1}{a_m(a_n+a_m)}$
ただし,$a_n=\dfrac{3^n}{n}$ とおいた。
よって,対称性と上記のテクニックを用いると,
$2I=\displaystyle\sum_{m=1}^{\infty}\sum_{n=1}^{\infty}(\dfrac{1}{a_m(a_n+a_m)}+\dfrac{1}{a_n(a_n+a_m)})\\
=\displaystyle\sum_{m=1}^{\infty}\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{1}{a_ma_n}\\
=(\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{n}{3^n})^2$
ただし,最後の変形では2つのシグマの分解公式を用いた。
→シグマ計算を機械的に行うための3つの公式の最後の方)
ここで,等比×等差数列の和を求めると,
$\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{n}{3^n}=\dfrac{3}{4}$ となる。
→等比×等差の和を求める2通りの方法
以上から,$I=\dfrac{9}{32}$

PCはアメリカとカナダの大学生のための数学コンテストです

Tag: 各地の数オリの過去問

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