内接球の半径を求める公式と例題・証明

内接球の半径を求める公式

内接球

多面体において表面積を SS,体積を VV,内接球の半径を rr とおくと,

V=13rS V=\dfrac{1}{3}rS

内接球とは,多面体のすべての面に接する球のことです。

内接球の半径の求め方について,例題・公式の証明・補足を述べます。

正四面体の内接球の半径

公式の証明は後でします。まずは,V=13rSV=\dfrac{1}{3}rS を使って内接球の半径を求めてみましょう。

例題

1辺の長さが aa である正四面体の内接球の半径 rr を求めよ。

解答

正四面体の表面積を SS,体積を VV とすると V=13rSV=\dfrac{1}{3}rS なので,SSVV を求めればよい。

SSVV の求め方は 正三角形の面積,正四面体の体積 で解説している。値を覚えておくとよい。具体的には,

  • 1辺の長さが aa である正三角形の面積は 34a2\dfrac{\sqrt{3}}{4}a^2 なので S=34a24=3a2S=\dfrac{\sqrt{3}}{4}a^2\cdot 4=\sqrt{3}a^2
  • V=212a3V=\dfrac{\sqrt{2}}{12}a^3

よって,内接球の公式 V=13rSV=\dfrac{1}{3}rS から

212a3=133a2r \dfrac{\sqrt{2}}{12}a^3=\dfrac{1}{3}\cdot\sqrt{3}a^2\cdot r

これを rr について解く:

r=612a r=\dfrac{\sqrt{6}}{12}a

このように,表面積と体積がわかれば内接球の半径を求めることができます。一般の四面体,正八面体,正二十面体なども同様にして内接球の半径を求めることができます(ただし,表面積や体積を求めるのが少し大変になります)。

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT72では,このような問題で計算ミスをしないためのコツも解説しています。

内接球の半径を求める公式の導出

次は,内接球の半径を求める公式 V=13rSV=\dfrac{1}{3}rS の証明です。

証明が難しいと感じた方は,後述の「2次元バージョンの場合」を先にごらんください。

証明

四面体 ABCDABCD について V=13rSV=\dfrac{1}{3}rS を証明する。

内接球の中心 II から各頂点に線分を引いて四面体を4つの小さな四面体 ABCI,BCDI,CDAI,DABIABCI,BCDI,CDAI,DABI に分割して体積を求める。

内接球

三角形 ABCABC の面積を ABC|ABC| と表し,四面体 ABCIABCI の体積を ABCI|ABCI| などと表すと,

V=ABCI+BCDI+CDAI+DABI=13rABC+13rBCD+13rCDA+13rDAB=13rS\begin{aligned} V&=|ABCI|+|BCDI|+|CDAI|+|DABI|\\ &=\dfrac{1}{3}r|ABC|+\dfrac{1}{3}r|BCD|+\dfrac{1}{3}r|CDA|+\dfrac{1}{3}r|DAB|\\ &=\dfrac{1}{3}rS \end{aligned}

四面体でなくても同じように証明できます。ただし,面の数が5以上になると一般的に内接球は存在しません(全ての面から等しい距離にある点は一般的に存在しない)。

2次元バージョンの場合

実は,内接球の半径を求める公式は,「内接の半径を求める公式:S=12r(a+b+c)S=\dfrac{1}{2}r(a+b+c)」の3次元バージョンです(ただし,SS は三角形の面積で rr は内接円の半径)。

よって,2次元バージョン,つまり内接円の半径を求める公式の証明を理解できれば内接球もすぐに理解できます。

2次元バージョン(内接円の半径公式)の証明

内接球の半径と面積の関係

内接円の中心 II から各頂点に線分を引いて三角形を3つの小さな三角形に分割して面積を求めると,

S=BCI+CAI+ABI=12ar+12br+12cr=12r(a+b+c)\begin{aligned} S&=|BCI|+|CAI|+|ABI|\\ &=\dfrac{1}{2}ar+\dfrac{1}{2}br+\dfrac{1}{2}cr\\ &=\dfrac{1}{2}r(a+b+c) \end{aligned}

となる。

内接球の公式の観察と注意

  • 対称性の高い凸多面体の一種の極限として球が考えられますが,球の表面積 S=4πr2S=4\pi r^2 と,球の体積 V=43πr3V=\dfrac{4}{3}\pi r^3 についても関係式 V=13rSV=\dfrac{1}{3}rS が成立していることが分かります。
  • この公式においての SS は多面体の表面積です。たまに誤って SS を多面体の1つの面の面積としてしまう場合があるので注意してください。

これで球の表面積と体積の公式がごっちゃになっても安心です!