2014/08/06

1984年IMO第1問の解説

分野: 難問・良問  レベル: 数学オリンピック

1984年国際数学オリンピックチェコスロバキア大会の第1問です。

問題

$x+y+z=1$ を満たす非負の実数 $x,y,z$ に対して以下の不等式を証明せよ:
$0\leq xy+yz+zx-2xyz\leq\dfrac{7}{27}$

不等式証明の重要なテクニックが凝縮された良問です。

まずは斉次式化

三変数の対称な不等式の証明問題は数学オリンピックで超頻出です。様々なテクニックがありますが多くの道具は斉次式に対してしか使えないので,与えられた不等式と条件式を用いて斉次式化します。
→不等式証明のコツ2:斉次式化

(斉次式化)
$x+y+z=1$ であることに注意すると与えられた不等式は
$0\leq (xy+yz+zx)(x+y+z)-2xyz\leq\dfrac{7}{27}(x+y+z)^3$
と同値。

これは三変数三次対称斉次式で非常に扱いやすい形の不等式です。
三変数三次対称斉次式は気合いで整理してSchurとMuirheadで証明できるという原則があります。
→Schurの不等式の証明と例題
→Muirheadの不等式と具体例

全ての不等式がこの方法で解決するかどうかは分かりませんが,僕の経験上成功率100%です。

展開して整理

そこで,少し険しいですが頑張って展開します。

(式の展開,整理)
中辺$=xyz+x^{2}y+y^{2}x+y^{2}z+z^{2}y+z^{2}x+x^{2}z$
これが非負であることは自明なので左側の不等式は完了!

右辺$=\dfrac{7}{27}(x^3+y^3+z^3+3(x^{2}y+y^{2}x+y^{2}z+z^{2}y+z^{2}x+x^{2}z)+6xyz)$

示すべき右側の不等式は以下のようになる:
$7(x^3+y^3+z^3)+15xyz\geq 6(x^{2}y+y^{2}x+y^{2}z+z^{2}y+z^{2}x+x^{2}z)$

SchurとMuirheadを理解していればこの不等式は瞬殺です。

最後にSchurとMuirhead

SchurとMuirheadの組み合わせ方で二通りの方法が考えられます。

(方法1:まず $15xyz$ を作り出す)
Schurの不等式より
$5(x^3+y^3+z^3)+15xyz\geq 5(x^{2}y+y^{2}x+y^{2}z+z^{2}y+z^{2}x+x^{2}z)$
よって,残りの部分は
$2(x^3+y^3+z^3)\geq x^{2}y+y^{2}x+y^{2}z+z^{2}y+z^{2}x+x^{2}z$
だがこれは $[3,0,0]\succeq [2,1,0]$ よりMuirheadの不等式から成立。

(方法2:まず右辺を作り出す)
Schurの不等式より
$6(x^3+y^3+z^3)+18xyz\geq 6(x^{2}y+y^{2}x+y^{2}z+z^{2}y+z^{2}x+x^{2}z)$
よって,残りの部分は
$x^3+y^3+z^3-3xyz\geq 0$
これは有名不等式。相加相乗でもMuirheadでも因数分解でも簡単に示せる。
→因数分解公式(3つの立方和)

三変数三次対称斉次式の不等式が成立する条件

三変数三次対称斉次式はSchurとMuirheadを使えば証明できるという話でしたが,面白い定理を見つけたので紹介しておきます。

定理:
非負の実数$(a,b,c)$ に関する三次対称斉次式が絶対不等式である必要十分条件は,
$(a,b,c)=(1,1,1),(1,1,0),(1,0,0)$ で不等式が成立すること。

必要条件なのは自明ですが,十分条件でもあるというのは感動です。

実際,上記の不等式:
$0\leq (xy+yz+zx)(x+y+z)-2xyz\leq\dfrac{7}{27}(x+y+z)^3$
が$(x,y,z)=(1,1,1),(1,1,0),(1,0,0)$ で成立することは簡単に確認できるのでこの定理を認めれば不等式が証明されました。

→初等的な不等式
(上記定理の詳細は5ページです)

SchurとMuirheadのコンビネーションは三次でなくても使えます!

Tag: 国際数学オリンピックの過去問

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