複素数の存在意義と様々な例

複素数の存在意義・必要性について解説します。

複素数がなぜ必要なのか

複素数がなぜ必要なのか?

→複素数は,自然界の法則や数学の定理を記述するのに非常に便利だから。

負の数も直接目で見ることはできませんが,負の数を考えることでいろいろありがたいことがあります。

それと同様に,複素数を考えることでいろいろありがたいことがあります。

実数(負の数を含む)の方が意味付けが分かりやすく,身近で実感しやすいだけです。複素数にもたくさんの意味付けがあり,様々な場面で自然に登場する数と言えます。

ここからは「複素数が様々な場面で自然に登場する」の具体例をいくつか紹介します。

複素数は方程式の解である

まずは「複素数が様々な場面で登場する理由」に関係する定理を紹介します。

代数学の基本定理

複素数係数の nn 次方程式は,複素数の解を(重複度込みで)nn 個持つ

方程式の解は実数の範囲だと存在しないことがありますが, 複素数まで範囲を広げれば必ず存在します。 →代数学の基本定理とその初等的な証明

方程式は,数学において最も基本的な道具の1つです。また,物理学などで重要な微分方程式も方程式に帰着される場合が多いです。

その解は一般的に複素数となるので,「複素数が様々な場面で自然に登場する」と言えます。

複素数を使えば指数関数と三角関数を同一視できる

複素指数関数は z=x+iyz=x+iy に対して ez=ex(cosy+isiny)e^{z}=e^{x}(\cos y+i\sin y) と定義されます(このように定義される理由は「解析接続」という考え方と関係しています)。

これによって 「三角関数の加法定理」と「指数関数の指数法則」を同一視できます。→オイラーの公式と複素指数関数

一般的に,加法定理の計算は煩雑ですが指数法則の計算はシンプルです。

よって,実数の三角関数の計算の代わりに複素指数関数を用いれば,記述が大幅に簡単になります。交流回路などの電気工学がその一例です。

その他の複素数のメリット

  • 複素数平面を考えると「複素数の積」が「回転」に対応します。そのため実数の範囲では煩雑な回転の計算が楽になります。
  • 実数関数の定積分で,複素数の世界を考えることで簡単に値を求められるものがいくつも存在します。これは複素関数論の留数定理という強力な定理によっています。
  • 量子力学という現代物理の分野では,状態を複素数で表すことがあります(古典力学では「状態」は位置や速度などの実数で表します)。

複素数の恩恵をありがたく享受しましょう!

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