2015/10/23

単振り子の周期(近似解と厳密解の比較)

分野: 物理  レベル: 最難関大学

単振り子の周期は
$T=4\sqrt{\dfrac{l}{g}}\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{d\phi}{\sqrt{1-\sin^2\frac{\theta_0}{2}\sin^2\phi}}$

やりたいこと

振り子の最大角 $\theta_0$ が微小なとき,単振り子の周期 $T$ は $2\pi\sqrt{\dfrac{l}{g}}$ である,というのが高校物理で習う公式です。この記事では $\theta_0$ が微小でない場合にも成立する厳密な式を導出し,近似解と比較します。

なお,空気抵抗は無視します。

単振り子の周期(厳密解)

$g$ は重力加速度,$m$ は質量,$l$ は振り子の長さ,$\theta_0$ は振り子の最大角,$h_0$ は振り子の最大の高さとします。近似は一切しません。

周期の導出

単振り子の周期

最下点から $h$ だけ上がった点での速さを $v$ とすると,エネルギー保存則より
$\dfrac{1}{2}mv^2+mgh=mgh_0$

次に上式において,$h=l(1-\cos\theta)$,$h_0=l(1-\cos\theta_0)$ という関係式を使って高さを角度に変換すると,
$\dfrac{1}{2}v^2+gl(1-\cos\theta)=gl(1-\cos\theta_0)$

これを $v$ について解くと,$v=\sqrt{2gl(\cos\theta-\cos\theta_0)}$

また,時間が $\Delta t$ 変化するときに角度が $\Delta\theta$ だけ変化したとすると,$v\Delta t=l\Delta \theta$ である。よって,周期は
$T=4\int_0^{\frac{T}{4}}dt\\
=4\displaystyle\int_0^{\theta_0}\dfrac{ld\theta}{v}\\
=\displaystyle\dfrac{4l}{\sqrt{2gl}}\int_0^{\theta_0}\dfrac{d\theta}{\sqrt{\cos\theta-\cos\theta_0}}$

楕円積分へ変形

周期を求めるための式を導出できましたが,右辺の定積分は簡単に計算することはできません。そこで,楕円積分と呼ばれる有名な積分(これも厳密に計算できるわけではないが計算機に投げやすい形)に帰着させます。

具体的には $\sin\dfrac{\theta}{2}=\sin\dfrac{\theta_0}{2}\sin\phi$ と $\theta$ から $\phi$ へ変数変換します。計算はただめんどくさいだけなので省略しますが,変数変換の結果,
$T=4\sqrt{\dfrac{l}{g}}\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{d\phi}{\sqrt{1-\sin^2\frac{\theta_0}{2}\sin^2\phi}}$
となります。

この右辺の定積分は第一種完全楕円積分と呼ばれる定積分です(ちなみに楕円の周の長さに登場する楕円積分は第二種です→楕円の周の長さの求め方と近似公式)。

最大角 $\theta_0$ が微小なら被積分関数は $1$ と近似でき,$T\simeq 2\pi\sqrt{\dfrac{l}{g}}$ となります。高校物理で習う式です!

近似解と厳密解の比較

(厳密解)÷(近似解)$ =\dfrac{2}{\pi}\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{d\phi}{\sqrt{1-\sin^2\frac{\theta_0}{2}\sin^2\phi}}$ をいろいろな $\theta_0$ に対して計算してみました。

$\theta_0$,(厳密解)÷(近似解)
5°,1.0005
10°,1.0019
20°,1.0077
30°,1.0174
45°,1.0400
60°,1.0732
90°,1.1803

近似解の精度がけっこういいですね!なお,計算にはWolfram AlphaのEllipticK関数を使いました。

高校物理で習ううさんくさい近似式もそんなに悪くはないということですね。
分野: 物理  レベル: 最難関大学