複素数平面における三角形の面積

複素数 α,β\alpha,\beta に対応する二点 A(α),B(β)A(\alpha),B(\beta) と原点 OO でつくられる三角形 OABOAB の面積は,

14αβαβ=12Im(αβ)\dfrac{1}{4}|\alpha\overline{\beta}-\overline{\alpha}\beta|=\dfrac{1}{2}|\mathrm{Im}(\alpha\overline{\beta})|

この公式の使い方と2通りの証明を解説します。

複素数平面における三角形の面積

  • Imz\mathrm{Im}z は複素数 zz の虚部を表しています。任意の複素数 zz に対して Imz=zz2i\mathrm{Im}z=\dfrac{z-\overline{z}}{2i} が成り立つので上の2つの表式:14αβαβ,12Im(αβ)\dfrac{1}{4}|\alpha\overline{\beta}-\overline{\alpha}\beta|, \dfrac{1}{2}|\mathrm{Im}(\alpha\overline{\beta})|は等しいです。

  • 実際に計算するときは 12Im(αβ)\dfrac{1}{2}|\mathrm{Im}(\alpha\overline{\beta})| を用いるのが早いです。

O(0),A(1+2i),B(2+3i)O(0),A(1+2i),B(-2+3i) のとき三角形 OABOAB の面積は,

(1+2i)(23i)(1+2i)(-2-3i) の虚部の絶対値の 12\dfrac{1}{2} 倍なので,72\dfrac{7}{2}

  • 面積を求めたい三角形の頂点が原点を含まない場合は平行移動すればOKです:

A(1+2i),B(3+5i),C(2+3i)A(1+2i), B(3+5i), C(-2+3i) のとき三角形 ABCABC の面積は,AA を中心になるように平行移動した三角形 ABCA'B'C' の面積と等しい: A(0),B(2+3i),C(3+i)A'(0), B(2+3i), C(-3+i)

よって,α=2+3i\alpha=2+3iβ=3i\overline{\beta}=-3-i として公式を使うと,面積は 112\dfrac{11}{2} となる。

三角形の面積公式の証明1

サラスの公式で紹介した「直交座標における三角形の面積公式」を認めてしまえば,証明は簡単です。

証明

A(a+bi),B(c+di)A(a+bi), B(c+di) とすると直交座標では A(a,b),B(c,d)A(a,b), B(c,d) となる。

直交座標の面積公式より,三角形 OABOAB の面積 SSS=12adbcS=\dfrac{1}{2}|ad-bc| となる。

一方,(a+bi)(cdi)(a+bi)(c-di) の虚部は bcadbc-ad となるので,

S=12Im(a+bi)(cdi)S=\dfrac{1}{2}|\mathrm{Im}(a+bi)(c-di)| と表せて証明完了。

この証明から分かるように,複素数平面における三角形の面積公式は直交座標における面積公式とほとんど同じものです。しかし,直交座標を忘れて複素数のまま計算できるので嬉しいです。

三角形の面積公式の証明2

複素数平面の計算に慣れるために,もう1通り証明を解説します。

証明

OAOAOBOB のなす角を θ\theta とおくと,求める面積 SS は,

S=12αβsinθS=\dfrac{1}{2}|\alpha||\beta|\sin\theta

あとは sinθ\sin\theta を求めればよい。

OABOAB が時計回りの順にあるとき(反時計回りのときも同様),

θ\thetaαβ\dfrac{\alpha}{\beta} の偏角。

よって,sinθ=Im(αβ)αβ=βαIm(αβ)\sin\theta=\dfrac{\mathrm{Im}(\frac{\alpha}{\beta})}{|\frac{\alpha}{\beta}|}=\dfrac{|\beta|}{|\alpha|}\mathrm{Im}(\dfrac{\alpha}{\beta})

ここで,ββ=β2\beta\overline{\beta}=|\beta|^2 より,1β=ββ2\dfrac{1}{\beta}=\dfrac{\overline{\beta}}{|\beta|^2} なので,

sinθ=1αβIm(αβ)\sin\theta=\dfrac{1}{|\alpha||\beta|}\mathrm{Im}\left(\alpha\overline{\beta}\right)

以上により目標の式が示された。

証明1の方が簡潔ですが,証明2には複素数平面の計算のエッセンスが詰まっています。

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