2015/07/08

複素数型のフーリエ級数展開とその導出

分野: 解析  レベル: 大学数学

フーリエ級数展開には
実三角関数 $\sin nx,\cos nx$ で展開する表現と
複素指数関数 $e^{inx}$ で展開する表現がある。

今回のメインは複素数型のフーリエ級数展開です。

実三角関数によるフーリエ展開

まずは実三角関数によるフーリエ級数展開の復習です。詳しくはフーリエ級数展開の公式と意味をどうぞ。

なお,この記事を通じて $f(x)$ は周期 $T$ の「まともな」実数値関数とします。

実三角関数型のフーリエ級数展開:
$f(x)=\dfrac{a_0}{2}+\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\left(a_n\cos \dfrac{2\pi n x}{T}+b_n\sin \dfrac{2\pi nx}{T}\right)$
ただしフーリエ係数は,
$a_n=\dfrac{2}{T}\int_0^{T}f(x)\cos\dfrac{2\pi nx}{T}dx$
$b_n=\dfrac{2}{T}\int_0^{T}f(x)\sin\dfrac{2\pi nx}{T}dx$


特徴など

  • 実三角関数の実数倍の和で関数を表現する。
  • 実数の世界のみの議論なので分かりやすい,導入にはよい。

複素指数関数によるフーリエ展開

次に,複素数型です。 $e^x$ を $\exp (x)$ と書きます。

複素指数関数型のフーリエ級数展開:
$f(x)=\displaystyle\sum_{n=-\infty}^{\infty}c_n\exp\left({\dfrac{2\pi inx}{T}}\right)$
ただしフーリエ係数は,
$c_n=\dfrac{1}{T}\int_0^Tf(x)\exp\left(-\dfrac{2\pi inx}{T}\right)dx$

注:複素関数 $g(x)$ の実数での積分は定義していませんが,
$\displaystyle\int g(x)dx=\displaystyle\int \mathrm{Re}\:g(x)dx+i\int \mathrm{Im}\:g(x)dx$ と理解してください。 $c_n$ は一般に複素数になります。


特徴など

  • 複素指数関数の複素数倍の和で関数を表現する。
  • $\cos$ 側と $\sin$ 側に分けて考える必要がないので計算が楽,美しい。

実数型と複素数型の関係

実三角関数と複素指数関数の間には $e^{ix}=\cos x+i\sin x$ →複素指数関数とオイラーの公式)という関係があります。

上の関係式を使うだけで実数型と複素数型のフーリエ展開は片方からもう片方が導出できます。つまり,実数型と複素数型は同じことの異なる表現に過ぎないというわけです。

実数型から複素型の導出

実際に実数型のフーリエ展開から複素数型のフーリエ展開を導出してみます。

(導出)
複素指数関数と実三角関数の関係から $\cos\theta=\dfrac{e^{i\theta}+e^{-i\theta}}{2}$,$\sin\theta=\dfrac{e^{i\theta}-e^{-i\theta}}{2i}$ である。これらを実数型のフーリエ展開の式に代入すると,
$f(x)\\=\dfrac{a_0}{2}+\dfrac{1}{2}\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\left\{a_n\left(\exp (\frac{2\pi inx}{T})+\exp(\frac{-2\pi inx}{T})\right)
\\\dfrac{b_n}{i}\left(\exp (\frac{2\pi inx}{T})-\exp(\frac{-2\pi inx}{T})\right)\right\}$

ここで,$e^{+}$ 側と $e^{-}$ 側に分けると上式は,
$\dfrac{a_0}{2}+\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\left(\frac{a_n-ib_n}{2}\right)\exp\left(\dfrac{2\pi inx}{T}\right)\\+\displaystyle\sum_{n=-\infty}^{-1}\left(\frac{a_{-n}+ib_{-n}}{2}\right)\exp\left(\dfrac{2\pi inx}{T}\right)\\
=\displaystyle\sum_{n=-\infty}^{\infty}c_n\exp\left({\dfrac{2\pi inx}{T}}\right)$
となる。ただし,複素フーリエ係数 $c_n$ は,

・ $n=0$ のとき,
$c_0=\dfrac{a_0}{2}=\dfrac{1}{T}\int_0^{T}f(x)e^{0}dx$

・ $n > 0$ のとき,
$c_n=\dfrac{a_n-ib_n}{2}\\
=\dfrac{1}{T}\int_0^Tf(x)\cos\dfrac{2\pi nx}{T}-if(x)\sin\dfrac{2\pi nx}{T}dx\\
=\dfrac{1}{T}\int_0^Tf(x)\exp\left(-\dfrac{2\pi inx}{T}\right)dx$

・ $n <0$ のときも同様に,
$c_n=\dfrac{1}{T}\int_0^Tf(x)\exp\left(-\dfrac{2\pi inx}{T}\right)dx$

なお,$c_n$ と $c_{-n}$ が互いに共役な複素数であることも分かります。

あえて複素数を使うことで表現がきれいになるというパターンですね。
分野: 解析  レベル: 大学数学