整数論のテクニック:平方数でないことの証明

平方数でないことの証明には,以下の2つが有効な場合が多い。

  1. 平方剰余を考える
  2. 両側から1違いの平方数で挟む

平方数でないことの証明は,入試や数学オリンピックの整数問題で頻出です。

1:平方剰余を考える

まずは両辺を 3344 で割った余りを考えて矛盾を示す方法です。

例題1

m2=3n1m^2=3n-1

を満たす自然数 m,nm,n が存在しないことを証明せよ。

解答

mm33 の倍数のとき m2m^233 の倍数。

mm33 で割って 11 余る場合 or 22 余る場合は,m2m^233 で割って 11 余る。

しかし,右辺: 3n13n-133 で割って 22 余るので等しくなることはない。

このように,平方数を kk で割った余りについては制約があります。可能な余りのことを平方剰余と言います。

例えば,上記の議論により 33 の平方剰余は 0,10,1 であることが分かります。

上記の例をはじめ多くの入試問題は平方剰余の議論で解決します。

より詳しくは平方剰余と基本的な問題を参照してください。

2:不等式で挟む

平方剰余でうまくいかないときはこちらの方針をトライしましょう。

基本的な考え方は,「平方数はとびとびにある」です。

つまり,うまく自然数 NN を持ってきて

N2<m<(N+1)2N^2 <m <(N+1)^2 を示せれば mm は平方数でないことがわかります。

さきほどより難易度の高い例題です。

例題2

f(n)=n4+2n2+n+5f(n)=n^4+2n^2+n+5 が平方数となるような正の整数 nn を全て求めよ。

解答

(n2+1)2=n4+2n2+1(n^2+1)^2=n^4+2n^2+1 (n2+2)2=n4+4n2+4(n^2+2)^2=n^4+4n^2+4

より,

(n2+1)2<f(n)<(n2+2)2(n^2+1)^2 <f(n) <(n^2+2)^2

っぽいと予想できる。

実際左側の不等式は明らかに成立。

右側の不等式は,2n2+n+5<4n2+42n^2+n+5 <4n^2+4 のとき成立。

実際 n2n\geqq 2 のときこの二次不等式は満たされる。

よって,n2n\geqq 2 のとき, (n2+1)2<f(n)<(n2+2)2(n^2+1)^2 <f(n) <(n^2+2)^2 となり f(n)f(n) は平方数とはならない。

n=1n=1 のときは f(1)=9f(1)=9 となり平方数となる。

補足

  • 平方数かどうか判定したいもの f(n)f(n)nn の偶数次の多項式で表されているときに有効な方法です(奇数次だとうまく平方式に直せない)。上記の例は 44 次式なので 22 次式の平方式で両側から挟むことができています。

  • 平方剰余による議論がもしうまくいくとすると,「任意の自然数 nn に対して f(n)f(n) は平方数でない」という結論が得られます。しかし,上記の例では n=1n=1 で平方数となっているので,平方剰余による議論はうまく行きそうにないことが分かります。

応用問題に挑戦

APMOの問題

2011年アジア太平洋数学オリンピック(APMO)第一問です。APMOにしては簡単な問題です。

問題1

a2+b+c,b2+c+a,c2+a+ba^2+b+c, b^2+c+a, c^2+a+b がいずれも平方数になるような自然数 a,b,ca,b,c の組が存在しないことを証明せよ。

解答

背理法で証明する。 a2+b+ca^2+b+ca2a^2 より大きい平方数なので, (a+1)2a2+b+c(a+1)^2\leqq a^2+b+c

よって 2a+1b+c2a+1\leqq b+c

同様にして 2b+1c+a,2c+1a+b2b+1\leqq c+a, 2c+1\leqq a+b

以上3つの不等式を足し合わせると 303\leqq 0 となり矛盾。

JMOの問題

2004年日本数学オリンピック(JMO)本選第一問です。

さすが数学オリンピックの問題,上記の方法に加えて一工夫必要です。

問題2

2n2+1,3n2+1,6n2+12n^2+1, 3n^2+1, 6n^2+1 がいずれも平方数になるような自然数 nn が存在しないことを証明せよ。

最初の部分が一番むずかしいです。

解答

平方数の積は平方数なので,もし 33 つの数がいずれも平方数であるとすると, f(n)=(2n2+1)(3n2+1)(6n2+1)f(n)=(2n^2+1)(3n^2+1)(6n^2+1) も平方数である。そのような nn は不等式で挟むことで限定できそう(以下分かるようにそのような nn は存在しない)。

あとは不等式で挟む方針を知っていれば簡単。

右辺を展開すると,

f(n)=36n6+36n4+11n2+1f(n)=36n^6+36n^4+11n^2+1

n6n^6n4n^4 の係数に着目して以下のような平方式を考える: (6n3+3n)2=36n6+36n4+9n2(6n^3+3n)^2=36n^6+36n^4+9n^2 (6n3+3n+1)2=36n6+36n4+12n3+9n2+6n+1(6n^3+3n+1)^2=36n^6+36n^4+12n^3+9n^2+6n+1 よって,任意の自然数 nn に対して (6n3+3n)2<f(n)<(6n3+3n+1)2(6n^3+3n)^2 <f(n) <(6n^3+3n+1)^2

よって f(n)f(n) は平方数でないので矛盾。

他の問題

問題3

2n+n2+m2^n+n^2+m が平方数になる整数の組 (m,n)(m,n) を求めたい。

  1. m=6m=6 のとき,nn の値をすべて求めよ。
  2. m=1m=1 のとき,nn の値をすべて求めよ。
  3. m=0m=0 のとき,nn の値をすべて求めよ。
  4. m=4m=4 のとき,nn の値をすべて求めよ。
略解
  1. 2n+n2+6=k22^n+n^2+6=k^2 について,44 で割った余りを考える。n2n\geqq 2 のとき,左辺は 44 で割って 22 余るまたは 33 余る。右辺は 44 で割って 00 余るまたは 11 余る。よって n=1n=1 のみ。

  2. 2n+n2+1=k22^n+n^2+1=k^2 について,44 で割った余りを考えると,nn は偶数または n=1n=1 になる。n=2Nn=2N とおくと,左辺は f(N)=4N+4N2+1f(N)=4^N+4N^2+1 となる。NN が大きいと (2N)2<f(N)<(2N+1)2(2^N)^2<f(N)<(2^N+1)^2 のように平方数で挟めることから NN が絞れる。答えは n=1,2n=1,2

  3. 2n+n2=k22^n+n^2=k^2 を変形すると 2n=(kn)(k+n)2^n=(k-n)(k+n) よって整数 AA を用いて kn=2A,k+n=2nAk-n=2^A,k+n=2^{n-A} とおける。これより n=2nA2A2n=\dfrac{2^{n-A}-2^A}{2} となる。nn を固定して右辺を考えると A=n21A=\dfrac{n}{2}-1 のときの値以上。よって, n12(2n2+12n21)n\geqq\dfrac{1}{2}(2^{\frac{n}{2}+1}-2^{\frac{n}{2}-1}) となるが,これは nn が大きいとき不成立であることから nn が絞れる。答えは n=0,6n=0,6

  4. 2n+n2+4=k22^n+n^2+4=k^2 について,nn が偶数なら小問2と同様に nn の範囲が絞れる。nn33 以上の奇数の場合は不適(※以下の2通りの方法で示せる)ので答えは n=4,8n=4,8

    • 方法1:左辺を 88 で割った余りは 55 になり右辺を 88 で割った余りは 11 になるので等しくならない。
    • 方法2:4(2n2+1)=(kn)(k+n)4(2^{n-2}+1)=(k-n)(k+n)
      より knk-nk+nk+n も素因数 22 をちょうど1つずつ持つ。kn=4A+2,k+n=4B+2k-n=4A+2,k+n=4B+2 とおくと n=2B2An=2B-2A より nn は偶数となり矛盾

mm によって解法が異なるのがおもしろいです。私の恩師 yama 先生と,その教え子による問題でした。

一般の mm について解けた人はぜひ教えてください。

整数問題の多くは剰余,不等式,因数分解のいずれかで解決します。

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