2016/11/14

アダマール行列の定義と性質

分野: 線形代数  レベル: 大学数学

各要素が $1$ または $-1$ で,各行が互いに直交するような正方行列をアダマール行列 (Hadamard matrix) と言う。

アダマール行列の例

サイズ1の例:$\begin{pmatrix}1\end{pmatrix}$,
サイズ2の例:$\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix}$,
サイズ4の例:$\begin{pmatrix}1&1&1&1\\1&-1&1&-1\\1&1&-1&-1\\1&-1&-1&1\end{pmatrix}$
はアダマール行列です。

$H$ がアダマール行列のとき,$\begin{pmatrix}H&H\\H&-H\end{pmatrix}$ もアダマール行列になります。

アダマール行列の性質

$H$ が $n\times n$ アダマール行列のとき,

性質1:$\det H=\sqrt{n^n}$
性質2:$H$ の各列も直交する
性質3:$H$ のサイズは $1$,または $2$,または $4$ の倍数

性質1の証明

アダマール行列の定義より,$HH^{\top}=nI$($I$ は単位行列)
よって(積の行列式は行列式の積なので),
$\det H\det H^{\top}=n^n$

また,$\det H^{\top}=\det H$
→転置行列の基本的な4つの性質と証明の性質2)
なので,
$\det H=\sqrt{n^n}$

性質2の証明

アダマール行列の定義より,$HH^{\top}=nI$ ($I$ は単位行列)
よって,$H$ の逆行列は $\dfrac{1}{n}H^{\top}$ となる。

よって,$\dfrac{1}{n}H^{\top}H=I$
$H^{\top} H=nI$
これは $H$ の各列が互いに直交することを示している。

アダマール行列のサイズ

サイズ3以上のアダマール行列のサイズが $4$ の倍数になることを証明します。

性質3の証明

$H$ のある列を $-1$ 倍しても行ベクトルの直交性には影響を与えない。よって,$H$ の各列について適切に $\pm 1$ 倍することで,一行目が全て $1$ であるアダマール行列 $H’$ を作ることができる。

また,列を交換しても行ベクトルの直交性には影響を与えないので,2行目が $1$ のものを左に集める。さらに,その中でも $3$ 行目が $1$ のものを左に集める。

アダマール行列の性質

4つのブロックのサイズを $a,b,c,d$ とおく。
1行目と2行目の直交性から $a+b=c+d$
1行目と3行目の直交性から $a+c=b+d$
2行目と3行目の直交性から $a+d=b+c$
以上から $a=b=c=d$ となる。

よって,$H’$ のサイズが $4$ の倍数なので $H$ のサイズも $4$ の倍数である。

参考文献:Peter J. Cameron
Hadamard and conference matrices

ちなみに,全ての4の倍数サイズのアダマール行列が存在するかどうかは未解決問題らしいです。

自分にはこの記事に書いた程度の知識しかありませんが,実はかなり奥が深い行列のようです。
分野: 線形代数  レベル: 大学数学