2015/02/16

群の定義といろいろな具体例

分野: 代数,情報・暗号理論  レベル: 大学数学

集合 $G$ とその集合上の二項演算 $f$ の組がとある条件を満たすときに,そのペア$(G,f)$ を群と言う。

抽象代数学の最も基本的な概念の一つで,数学のいろいろなところに登場する「群」について。
まずは二項演算について説明し,群の定義,具体例へと進んでいきます。

二項演算

集合 $G$ の元を二つ入れたら $G$ の元が一つ返ってくるような関数を $G$ 上の二項演算と言います。

我々が普段使う足し算,引き算,かけ算,割り算など,二つの数から一つの数を決める演算を一般化した概念です。

二項演算は二変数関数なので $f(a,b)$ などど書くべきかもしれませんが,$a\cdot b,\:a\times b,\:ab$ のように書くことが多いです(一般の二項演算を $\cdot$ や $\times$ で表すことが多いです,二項演算子を省略することも多いです)。

なお,二項演算は必ずしも可換($f(a,b)=f(b,a)$)とは限りません。

群の定義

集合と演算のペアがいい感じの性質を満たしているときに群と呼ばれます。

集合 $G$ とその集合上の二項演算 $\:\cdot\:$の組が以下の三つの条件を満たすときに,そのペア$(G,\cdot)$ を群と言う。
G1.任意の $a,b,c\in G$ に対して$(a\cdot b)\cdot c=a\cdot (b\cdot c)$
G2.ある $e\in G$ が存在して,任意の $a\in G$ に対して $a\cdot e=e\cdot a=a$ を満たす。
G3.任意の $a\in G$ に対して $b\cdot a=a\cdot b=e$ を満たす $b\in G$ が存在する。

G1を結合法則,G2の $e$ を単位元と言います。また,G3の $b$ を $a$ の逆元と言い,$a^{-1}$ と書きます。

また「 $G$ は演算 $\cdot$ に関して群である」と言うこともあります。

余談:単位元が存在すれば一意,逆元が存在すれば一意であることがそれぞれ証明できるので,群の定義に「単位元の一意性」「逆元の一意性」は不要です。

群の簡単な具体例

群の定義だけを見てもピンとこないと思うので以下で具体例を見てみます。

例1

$0$ 以外の実数全体の集合 $\mathbb{R}\backslash \{0\}$ と通常の意味での積(かけ算)$\cdot$ のペアはG1〜G3を満たすので$(\mathbb{R}\backslash \{0\},\cdot)$ は群である。
(単位元は $1$,$a$ の逆元は $\dfrac{1}{a}$)

有理数全体から $0$ を除いたもの,複素数全体から $0$ を除いたものも同様に積に関して群です。


例2

実数全体の集合 $\mathbb{R}$ と通常の意味での積は $0$ が邪魔で群にはならない(G2とG3を満たさない)。


例3

整数全体の集合 $\mathbb{Z}$ と通常の意味での和(足し算)のペア$(\mathbb{Z},+)$ は群である。
(単位元は $0$,$a$ の逆元は$-a$)

有理数全体,実数全体,複素数全体も同様に和に関して群です。

さらなる群の具体例

例4

$n$ 次の置換全体の集合 $S_n$ は置換の積(合成)に関して群である。
置換については→置換と偶置換・奇置換に関する基礎的なこと参照。
対称群とか置換群などと言います。非常に重要な群です。


例5

$n\times n$ の直交行列全体の集合は行列の積に関して群である。
直交群と言います。


例6

$G=\{1,2\}$ は以下のように定義した演算 $\times$ に関して群である。
$1\times 1=2,\:1\times 2=2\times 1=2,\:2\times 2=1$


なお,考えている演算が文脈から明らかな場合は「$(G,\cdot)$ のペアが群」という代わりに簡単に「 $G$ が群」と言うこともあります。

半群,モノイド,可換群

群の紹介のついでに。

半群:集合と演算のペアでG1のみを満たすもの
モノイド:集合と演算のペアでG1とG2を満たすもの
可換群(アーベル群):群であり,さらに演算が可換(任意の $a,b\in G$ に対して $a\cdot b=b\cdot a$)であるもの

例えば整数全体の集合は和に関して可換群ですが,対称群は(置換の積が可換でないので)可換群ではありません(非可換群)。

群を理解すると数学がぐんぐんできるようになります。
分野: 代数,情報・暗号理論  レベル: 大学数学