グレゴリー・ライプニッツ級数の2通りの証明

グレゴリー・ライプニッツ級数(マーダヴァ・ライプニッツ級数)

113+1517=π41-\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{5}-\dfrac{1}{7}\cdots=\dfrac{\pi}{4}

この式はしばしば「ライプニッツの公式」と称されます。積の nn 階微分に関するライプニッツの公式はライプニッツの公式の証明と二項定理を参照してください。

グレゴリー・ライプニッツ級数とは

  • グレゴリー・ライプニッツ級数は 「奇数ぶんの1を交互に足し引きしたら π4\dfrac{\pi}{4} になる」という等式です。円周率が出てくるのが面白いです。

  • シグマを使って書くと,
    k=1(1)k12k1=113+1517=π4\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}\dfrac{(-1)^{k-1}}{2k-1}=1-\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{5}-\dfrac{1}{7}\cdots=\dfrac{\pi}{4}
    となります。

  • 入試でもしばしば出題される,とても有名な無限級数です。

  • 入試でライプニッツ級数の証明を求められるときは誘導がつくと思います。たいてい(というか必ず?)以下の2つのいずれかの方法です。

ライプニッツ級数の証明1

方針

積分を用います。 01x2kdx=12k+1\displaystyle\int_0^1 x^{2k}dx=\dfrac{1}{2k+1} であることから強引に右辺を作り出します。

証明

fn(x)=11+x2{1x2+x4+(1)n1x2n2}f_n(x)=\dfrac{1}{1+x^2}-\{1-x^2+x^4-\cdots+(-1)^{n-1}x^{2n-2}\}

とおくと等比数列の公式より,

fn(x)=11+x2{1(x2)n1+x2}=(1)nx2n1+x2f_n(x)=\dfrac{1}{1+x^2}-\left\{\dfrac{1-(-x^2)^{n}}{1+x^2}\right\}=\dfrac{(-1)^nx^{2n}}{1+x^2}

これは nn が十分大きいと 0x<10\leq x < 100 に近づくことに注意すると,

01fn(x)dx01fn(x)dx<01x2ndx=12n+1\left|\displaystyle\int_0^1 f_n(x)dx\right|\leq\displaystyle\int_0^1 |f_n(x)|dx\\ <\displaystyle\int_0^1 x^{2n}dx\\ =\dfrac{1}{2n+1}

よってはさみうちの原理より

limn01fn(x)dx=0\displaystyle\lim_{n\to\infty}\int_0^1 f_n(x)dx=0

一方,01fn(x)dx\displaystyle\int_0^1f_n(x)dx を直接計算すると,

第一項は x=tanθx=\tan\theta と置換することにより,

0111+x2dx=0π4dθ=π4\displaystyle\int_0^1\dfrac{1}{1+x^2}dx=\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{4}}d\theta=\dfrac{\pi}{4}

後ろの項(カッコの中)は

k=1n(1)k12k1\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\dfrac{(-1)^{k-1}}{2k-1}

以上から,

limn{π4k=1n(1)k12k1}=0\displaystyle\lim_{n\to\infty} \left\{\dfrac{\pi}{4}-\sum_{k=1}^n\dfrac{(-1)^{k-1}}{2k-1}\right\}=0

となり π4\dfrac{\pi}{4} に収束することが証明された。

ライプニッツ級数の証明2

方針

tan2n\tan^{2n} の積分に関して漸化式を立てると右辺の各項 12n1\dfrac{1}{2n-1} が出現してくれます。

証明

In=0π4tan2nxdxI_n=\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{4}}\tan^{2n}xdx とおくと,

In+1=0π4(1cos2x1)(tan2nx)dx=12n+1InI_{n+1}=\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{4}}\left(\dfrac{1}{\cos^2x}-1\right)(\tan^{2n}x)dx\\ =\dfrac{1}{2n+1}-I_n

よって,

k=1n(1)k12k1=k=1n(1)k1(Ik+Ik1)=(1)n1In+I0=(1)n1In+π4\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\dfrac{(-1)^{k-1}}{2k-1}\\ =\displaystyle\sum_{k=1}^{n}(-1)^{k-1}(I_{k}+I_{k-1})\\ =(-1)^{n-1}I_{n}+I_{0}\\ =(-1)^{n-1}I_{n}+\dfrac{\pi}{4}

よって,あとは limnIn=0\displaystyle\lim_{n\to\infty}I_{n}=0 を示せばよい。

これは,0In12n+10 \leq I_n \leq \dfrac{1}{2n+1}

(右側の不等式は In+10I_{n+1} \geq 0InI_n の漸化式から成立)

とはさみうちの原理より成立。

関連する話題

  • ライプニッツ級数は2番目に有名な交代級数と言えるでしょう。1番はメルカトル級数です。

  • 右辺の無限級数を途中でうち切ったものを計算すれば円周率の近似値を求めることができます。ただし,収束が非常に遅いので実際は他の公式が用いられています。→円周率の求め方(いろいろな計算式)

  • Arctanのマクローリン展開の3通りの方法を用いてそれっぽい式を導出することもできますが,マクローリン展開は高校範囲でない上にこの方法では厳密な証明にはなりません。上記の2通りの証明はいずれも厳密です。

15世紀には発見されていた公式らしいです。

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