2014/03/24

公式を丸暗記すべきかそのつど導出すべきか


公式を丸暗記するのか,そのつど導出するのか,みなさん自分の流儀があると思います。実際多くの人は暗記すべき公式とそのつど導出している公式を無意識のうちに分類しているように感じるので,少し整理してみます。


(注意点)

  • 具体例として三角関数の三倍角の公式 $\sin 3x=3\sin x-4\sin^3 x$ を扱います。
  • 最後に結論を書いています、全部読むのがめんどくさい人は最後の部分だけ読んでみてください。
  • このページの内容は僕の経験と知識と少しの偏見に基づく内容です,納得できた部分のみ採用してください。

公式を丸暗記する〜シンタックス

公式の意味を考えずに全て丸暗記する方法です。数式の意味を考えず機械的に処理することをシンタックス(syntax, 構文論)と呼ぶことにします。公式の丸暗記であるシンタックスは教育現場で嫌われがちです。意味を考えないと応用問題に対応できないから最低限の公式以外丸暗記はよくないと思われがちですが,シンタックスにもメリットはあります。

シンタックスのメリット

・A1:時間短縮になる
複雑な公式になればなるほど丸暗記するメリットは大きくなります。例えば,三倍角の公式は慣れても導出に30秒くらいはかかるでしょう。その30秒が大事かどうかはその人の価値観によります。

・A2:数学公式の丸暗記はコスパがよい
英語や日本史など文系科目に比べて数学は暗記事項が少ないです。日本史の用語を100個覚えても点数アップへの貢献は微々たるものですが,数学の公式を100個覚えれば相当な効果があるでしょう。

A3:見通しが良くなる
公式を丸暗記しているとその1手先まで考えることができます。
例えば3倍角の公式を丸暗記していると,$\sin 3x$ が $\sin x$ を因数として持つことが瞬時に分かり,問題が解けたりします。このメリットはあんまり意識されていませんが,本質的に思考の幅が広がるので一番重要だと思います。

意味を考えてそのつど導出する〜セマンティクス

公式の導出方法をなんとなく覚えておいて使うときに毎回導出します。意味を考えて公式を導出することをセマンティクス(semantics, 意味論)と呼ぶことにします。三倍角の公式の場合だと「 $3x=x+2x$ だから,加法定理を用いることで三倍角の公式を導出できる」と覚えるのがセマンティクスです。

セマンティクスのメリット

・B1:応用,拡張問題にも対応できる
例えば,三倍角の公式を丸暗記しているだけでは四倍角の公式は導出できませんが,導出方法を覚えていれば四倍角にも対応できます。

・B2:そのつど導出していると計算に慣れる
公式の導出,証明にはより基本的な公式や手法を用いることが多いので,公式の導出自体が訓練になります。例えば三倍角の公式を導く途中で三角関数の加法定理を使うので,加法定理にも慣れることができます。

・B3:公式を覚える量が減るから楽
シンタックスだと係数の符号など記憶があいまいな部分があると不安になりますが,セマンティクスは記憶があいまいでもその場で導出してしまえば公式の正しさは確認できるので安心できます。

結論〜折衷案をねらう

シンタックスとセマンティクスのメリットを見てきましたが,実戦では両方のいいとこどりをすればよいと思います。どちらか一方ではなく両方やればよいと思います、それだけの価値はあります。特に,A3:「見通しが良くなる」,B1:応用問題に対応できる」が非常に重要です。

基本的にはセマンティクス、つまり全ての公式の導出方法を理解して素早く導出できるようになるのが前提で,その後丸暗記も軽視せずに出来る限り公式をインプットしていくというのがオススメの戦法です。

その際,導出に時間がかかる公式から丸暗記するのがよいです。
「公式を丸暗記するのはよくない」とか「時間短縮のために全部の公式を完璧に覚える」とか極端にどちらかに偏るのは危険です。

丸暗記もしてるしすぐに導ける2刀流になろう