2015/03/13

因数定理とその重解バージョンの証明

分野: 方程式,恒等式  レベル: 最難関大学

因数定理:
多項式 $f(x)$ が$(x-a)$ を因数に持つ $\iff f(a)=0$

教科書にも登場するおなじみの因数定理です。この記事では因数定理とその拡張を証明します。

因数定理の証明

因数定理の証明方法は剰余の定理と全く同じです(というよりも剰余の定理の特殊ケース)。→剰余の定理の証明と応用

因数定理の証明

多項式 $f(x)$ を$(x-a)$ で割ったときの商を $Q(x)$,余りを $R$ とおく。すると,
$f(x)=(x-a)Q(x)+R$
両辺に $x=a$ を代入して,$f(a)=R$

よって,$f(x)$ が$(x-a)$ を因数に持つ(つまり $f(x)$ が $x-a$ で割り切れる)必要十分条件は $R=0$ 。つまり,$f(a)=0$ である。

因数定理の応用

三次以上の多項式を因数分解したり,三次以上の方程式を解くときに因数定理の $\Leftarrow$ 向きが重宝します。

例題

三次方程式 $x^3-6x^2+11x-6=0$ を解け。

解答

$f(x)=x^3-6x^2+11x-6$ とおく。 $f(1)=1-6+11-6=0$ より $f(x)$ は$(x-1)$ を因数に持つ。実際割り算を行うと,$f(x)=(x-1)(x^2-5x+6)$ となる。さらに因数分解すると,$f(x)=(x-1)(x-2)(x-3)$ を得る。
よって,求める解は $x=1,2,3$

注:因数定理を適用するときの $a$ の見つけ方は方程式の有理数解を参照して下さい。

因数定理の拡張

因数定理の $k$ 重解バージョンです。

$f(x)$ を $n$ 次多項式,$k$ を $n$ 以下の正の整数とする。このとき,
多項式 $f(x)$ が$(x-a)^k$ で割り切れる $\iff f(a)=f'(a)=\cdots =f^{(k-1)}(a)=0$

$f^{(t)}(x)$ は $f(x)$ の $t$ 階微分を表します。

$k=1$ の場合が普通の因数定理です。

$f(x)=x^3-2x^2+x$ とすると,$f'(x)=3x^2-4x+1$ である。 $f(1)=f'(1)=0$ なので $f(x)$ は$(x-1)^2$ を因数に持つ。

証明

因数定理の重解バージョンを証明します。細部まできちんと理解するのはけっこう大変です!

まずは高校数学の範囲で証明します。

証明

$f(x)$ を$(x-a)^k$ で割った商を $Q(x)$,余りを $R(x)$ とおく。 $R(x)$ は $k-1$ 次以下の多項式なので,適切に係数 $c_i$ を定めることで $R(x)=\displaystyle\sum_{i=0}^{k-1}c_i(x-a)^i$ と書ける(→注1)。

よって,$f(x)=(x-a)^kQ(x)+\displaystyle\sum_{i=0}^{k-1}c_i(x-a)^i$

両辺を $x$ で $t\:(0\leq t\leq k-1)$ 回微分して $x=a$ を代入すると(→注2),$f^{(t)}(a)=t!c_t$

したがって,
$f(x)$ が$(x-a)^k$ で割り切れる
$\iff c_0=c_1=\cdots =c_{k-1}=0$
$\iff f(a)=f'(a)=\cdots =f^{(k-1)}(a)=0$

注1:$k-1$ 次多項式は $\displaystyle\sum_{i=0}^{k-1}b_ix^i$ と表すのが一般的だが,この各項を以下のように変形することで $R(x)=\displaystyle\sum_{i=0}^{k-1}c_i(x-a)^i$ の形で表示することもできる。
$b_ix^i=b_i(x-a+a)^i=b_i\displaystyle\sum_{t=0}^i{}_i\mathrm{C}_ta^{i-t}(x-a)^t$

注2:$(x-a)^kQ(x)$ の部分は積の微分公式を使うことにより $0$ となることが分かる。後ろの部分は$(x-a)^i$ の微分が $i(x-a)^{i-1}$ であることを使うと,ほとんどの項($i=t$ の項以外)が $0$ になることが分かる。


次に別の証明方法。上記の証明方法と似ていますが,こちらではテイラーの定理を使います。テイラーの定理の例と証明

証明

$f(x)$ が $n$ 次多項式のとき,テイラーの定理より($x=a$ でテイラー展開する),
$f(x)=\displaystyle\sum_{t=0}^{n}\dfrac{f^{(t)}(a)}{t!}(x-a)^{t}$
($n+1$ 次導関数は $0$ となることに注意)

よって,$f(x)$ を$(x-a)^k$ で割った余りは $R(x)=\displaystyle\sum_{t=0}^{k-1}\dfrac{f^{(t)}(a)}{t!}(x-a)^{t}$ である。

したがって,
$f(x)$ が$(x-a)^k$ で割り切れる
$\iff R(x)=0$
$\iff f(a)=f'(a)=\cdots =f^{(k-1)}(a)=0$

久しぶりに「高校数学+アルファ」な記事が書けました。

Tag: 数学2の教科書に載っている公式の解説一覧

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