2014/08/13

恒等式に関する入試問題のパターンと背景

分野: 方程式,恒等式  レベル: 入試対策

恒等式の問題は不等式の問題に比べて簡単な場合が多いです。多くの入試問題は機械的な計算で解くことができます。

コンテンツ

1:恒等式の証明問題
2:恒等式となるように係数を定める問題
2−1:部分分数分解する問題
2−2:$x=a$ で展開する
2−3:完全平方式にする問題

恒等式の証明問題

「以下の恒等式を証明せよ」というタイプの問題は,両辺を展開することで必ず証明することができます。

恒等式 $(a^2+b^2)(c^2+d^2)=(ac-bd)^2+(ad+bc)^2$ を証明せよ。

解答

左辺も右辺も頑張って展開すると $a^2c^2+a^2d^2+b^2c^2+b^2d^2$ となるので恒等式となっている。

  • (左辺)を変形して(右辺)に持っていく方法を考えるよりも機械的に確実に解くことができるので,「恒等式の証明問題は式を展開する問題」と覚えておきましょう。(場合によっては両辺を二乗してルートを消したり分母を払う作業も必要になります)
  • これくらいの難易度だとどの方針でも簡単に証明できますが,より複雑な式になったときに格好いい方法を考えるよりもひたすら展開する方が確実に解けるのでおすすめです。
  • このようにただ展開するだけで解くことができるので恒等式の証明問題は簡単な場合が多いです。
  • ちなみに上記の例題はブラーマグプタの恒等式と呼ばれる有名な恒等式です。

恒等式となるように係数を定める問題〜部分分数分解

例2

$\dfrac{1}{(x-2)(x-5)}=\dfrac{a}{x-2}+\dfrac{b}{x-5}$ を満たす $a.b$ を求めよ。

まずは解答です。分母を払って展開すると,
$1=(a+b)x-5a-2b$
係数比較して,$a+b=0,-5a-2b=1$
これを解いて $a=-\dfrac{1}{3}, b=\dfrac{1}{3}$

  • このように,恒等式となるように係数を定める問題は,「式を整理→係数比較→連立方程式を解く」という手順で確実に解くことができます。
  • 場合によっては係数比較より特定の数値を代入したほうが少し早く解けますが,係数比較で100%解けるので迷う暇があれば愚直に係数比較して連立方程式を解きましょう。
  • ちなみに,この問題の背景は部分分数分解です。→部分分数分解の3通りの方法

$x=a$ で展開する

次のパターンも入試では頻出です。

例3

$x^2+{2}x-3=(x-2)^2+a(x-2)+b$ を満たす $a,b$ を求めよ。

解答

まずは右辺を展開します。
$x^2+{2}x-3=x^2+(a-4)x+4-2a+b$
係数比較すると $a-4=2, -2a+b+4=-3$
これを解いて $a=6, b=5$

  • 定石通り「式を整理→係数比較→連立方程式を解く」で解けます。
  • このように $x$ の多項式を $\displaystyle\sum_{k} c_k(x-a)^k$ の形で表すことを $x=a$ で展開すると言います。
  • このタイプの問題はマクローリン展開と関係しており,実は簡単に解くことができます:
    ($x=a$ における関数の値,微分係数,二回微分係数 $\cdots$ を比較すればよい)
    例えば上記の問題:左辺を $f(x)$ とおくと,$b=f(2), a=f'(2)$ が答えになっている!

完全平方式にする恒等式

例4

$x^4-4x^3+ax^2+x+b$ がある整式の平方となるような定数 $a,b$ の値を求めよ

解答

左辺$=(x^2+cx+d)^2$
が恒等式となるような $a,b,c,d$ を求めればよい(2次の係数が1なのは両辺の4次の項を見れば分かる)。
定石通り展開して係数比較する:
$-4=2c$, $a=2d+c^2$, $1=2cd$, $b=d^2$
これを解いて,$c=-2, d=-\dfrac{1}{4}, b=\dfrac{1}{16}, a=\dfrac{7}{2}$

ある多項式の二乗の形で表される多項式を完全平方式と呼びます。完全平方式$=0$ の形の方程式は解くべき方程式の次数を下げることができるという嬉しさがあるので一般の多項式よりは嬉しいわけです。
そのような嬉しい多項式に変形できるような $a,b$ を求めようという趣旨の問題でした。

大学入試の背景を考えるのは楽しいです。
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