2015/01/07

ディリクレ関数の定義と有名な3つの性質

分野: 解析  レベル: 大学数学

ディリクレ関数:
実数全体で定義され,有理数のときに $1$,無理数のときに $0$ を取る関数をディリクレ関数と言う。
$ f(x) = \left\{ \begin{array}{ll}
1 & (x\in \mathbb{Q}) \\
0 & (\mathrm{otherwise})
\end{array} \right.$


ディリクレ関数について,以下の話題を解説します。

1:いたる所不連続
2:$\cos$ と極限で表せる
3:リーマン積分不可能,ルベーグ積分可能(高校範囲外)

連続性

ディリクレ関数はいたる所不連続である。

これは以下の二つの事実から分かります。

  • 有理数 $q$ を一つ固定すると,$q$ にいくらでも近い無理数を取ってこれる
  • 無理数 $r$ を一つ固定すると,$r$ にいくらでも近い有理数を取ってこれる
ディリクレ関数のグラフ

ディリクレ関数は「任意の点で関数のグラフがつながっていない」という不思議な関数です。グラフを強引に書こうとすると図のようになります(点同士が重なり合って線みたいに見える)。

cosと極限で表せる

ディリクレ関数 $f(x)$ は以下のように表せる:
$f(x)=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\{\lim_{k\to\infty}\cos^{2k}(n!\pi x)\}$

かなりかっこいい式です!

証明

中括弧の中は $n$ と $x$ のみに依存することに注意して,
$a_n(x)=\displaystyle\lim_{k\to\infty}\cos^{2k}(n!\pi x)$ とおく。

・ $x$ が有理数のとき
$n$ が十分大きければ $n!x$ は整数,つまり $\cos(n!\pi x)=\pm 1$
よって,$n$ が十分大きいとき $a_n(x)=\displaystyle\lim_{k\to\infty}1^k=1$
つまり,$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n(x)=1$

・ $x$ が無理数のとき
任意の $n$ に対して $n!x$ は整数でない,つまり$-1 <\cos(n!\pi x) <1$
よって,任意の $n$ に対して $a_n(x)=0$
つまり,$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n(x)=0$

リーマン積分とルベーグ積分

積分には二種類:リーマン積分とルベーグ積分があります。高校数学で扱う普通の関数については,両者は一致します。

厳密な説明は長くなるのでできませんが,大雑把にはリーマン積分は「縦に細かく切って足し合わせる」,ルベーグ積分は「横に細かく切って足し合わせる」というイメージです。

ディリクレ関数は「リーマン積分はできないけどルベーグ積分はできる」関数として超有名です。このような関数が存在することは,ルベーグ積分の必要性の一つの根拠になっています。

ディリクレ関数の積分

ディリクレ関数 $f(x)$ の区間 $[0,1]$ 上での積分を考えてみます。大雑把な説明です。

(リーマン積分不可能)
縦にいくら細かく切っても,長方形の縦の長さを $0$ にしてよいか $1$ にしてよいのかが決まらない(上リーマン和と下リーマン和の極限が一致しない)。
よって,ディリクレ関数は $[0,1]$ 上でリーマン積分不可能。

(ルベーグ積分可能)
$[0,1]$ 区間において,
$f(x)=0$ を与える $x$ たち(無理数の集合)が占める区間の「大きさ」(ルベーグ測度)は $1$ である(注)。
$f(x)=1$ を与える $x$ たち(有理数の集合)が占める区間の「大きさ」は $0$ である。
よって,ルベーグ積分の値は $0$ である。

(注)直感的には $[0,1]$ 区間内の実数のほとんどが無理数であることから。
厳密には測度の完全加法性より可算集合のルベーグ測度が $0$ であることから(有理数は可算無限集合)。→集合の濃度と可算無限・非可算無限

このようなヤバい関数が楽しい!という人もいますし,ヤバい関数は実際出てこないから都合のいい関数だけ考える,という人もいます。
分野: 解析  レベル: 大学数学