楕円の周の長さの求め方と近似公式

楕円の周長

長軸の長さが 2a2a,短軸の長さが 2b2b である楕円: x2a2+y2b2=1\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1 の周の長さは,

L=2πa(t=0ct2ϵ2t12t)L=2\pi a\left(\displaystyle\sum_{t=0}^{\infty} c_t^2\dfrac{\epsilon^{2t}}{1-2t}\right)

ただし,ϵ\epsilon は離心率で,ϵ2=1b2a2\epsilon^2=1-\dfrac{b^2}{a^2} を満たし,

c0=1c_0=1ct=(2t1)!!(2t)!!=(2t1)(2t3)12t(2t2)2(t1)c_t=\dfrac{(2t-1)!!}{(2t)!!}=\dfrac{(2t-1)(2t-3)\cdots 1}{2t(2t-2)\cdots 2}\:(t\geq 1)

楕円の周の長さは高校数学+アルファで求めることができます。最後に楕円の周の長さを求める近似式も紹介。

楕円の周の長さ

  • 楕円の面積については「楕円は円を拡大,縮小したもの」と見ることで簡単に求めることができました。→楕円の面積公式の3通りの導出

  • 一方(円の周の長さは簡単に求まるのに)楕円の周の長さを求める公式は非常に複雑です。

  • 冒頭の公式は,aabb が分かれば ϵ\epsilon が分かり LL も(無限級数ですが)計算できるという流れです。

  • 上の公式は複雑でよく分からないので t=2t=2 くらいまで書き下してみます: L=2πa{1(12)2ϵ21(1324)2ϵ43}L=2\pi a\left\{1-\left(\dfrac{1}{2}\right)^2\dfrac{\epsilon^2}{1}-\left(\dfrac{1\cdot 3}{2\cdot 4}\right)^2\dfrac{\epsilon^4}{3}-\cdots\right\}

  • a=ba=b のときは ϵ=0\epsilon=0L=2πaL=2\pi a となり円周の長さの公式と一致します。

楕円の周の長さの導出

冒頭の公式を3段階に分けて証明します。3つの道具を知っていれば簡単です!

1.周長をとりあえず積分で書き下す。

使う道具:弧長積分の公式

まず,楕円を x=acosθx=a\cos\thetay=bsinθy=b\sin\theta と媒介変数表示する。

弧長積分の公式より

L=40π2(asinθ)2+(bcosθ)2dθ=4a0π2sin2θ+b2a2cos2θdθ=4a0π21ϵ2cos2θdθL=4\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sqrt{(-a\sin\theta)^2+(b\cos\theta)^2}d\theta\\ =4a\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sqrt{\sin^2\theta+\frac{b^2}{a^2}\cos^2\theta}d\theta\\ =4a\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sqrt{1-\epsilon^2\cos^2\theta}d\theta

これは(第二種)楕円積分と呼ばれるもので,一発で計算することはできません。→楕円積分の意味と身近な4つの例

2.ルートを級数展開する。

使う道具:一般化二項定理とルートなどの近似

一般化二項定理を用いて被積分関数を展開する:

1ϵ2cos2θ=t=0(1)t12Ctϵ2tcos2tθ\sqrt{1-\epsilon^2\cos^2\theta}=\displaystyle\sum_{t=0}^{\infty}(-1)^t{}_{\frac{1}{2}}\mathrm{C}_t\epsilon^{2t}\cos^{2t}\theta

ただし,

12Ct=12(121)(12t+1)t!=(1)(3)(2t+3)2tt!=(1)t1(2t3)!!(2t)!!=(1)t12t1ct{}_{\frac{1}{2}}\mathrm{C}_t=\dfrac{\frac{1}{2}(\frac{1}{2}-1)\cdots(\frac{1}{2}-t+1)}{t!}\\ =\dfrac{(-1)(-3)\cdots (-2t+3)}{2^tt!}\\ =(-1)^{t-1}\dfrac{(2t-3)!!}{(2t)!!}\\ =\dfrac{(-1)^{t-1}}{2t-1}c_t

以上より,L=4a0π2t=0(1)2t1ctϵ2tcos2tθdθL=4a\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sum_{t=0}^{\infty}\dfrac{(-1)}{2t-1}c_t\epsilon^{2t}\cos^{2t}\theta d\theta

ここで,積分とシグマを交換する(厳密には一様収束→項別積分可能を使う):

L=4at=0ctϵ2t2t10π2cos2tθdθL=-4a\displaystyle\sum_{t=0}^{\infty}\dfrac{c_t\epsilon^{2t}}{2t-1}\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\cos^{2t}\theta d\theta

3. cos2t\cos^{2t} を積分する。

使う道具:sinのn乗,cosのn乗の積分公式

cos\cosnn 乗の積分公式より

0π2cos2tθdθ=π2ct\displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\cos^{2t}\theta d\theta=\dfrac{\pi}{2}c_t となる。

よって,L=2πat=0ct2ϵ2t12tL=2\pi a\displaystyle\sum_{t=0}^{\infty}c_t^2\dfrac{\epsilon^{2t}}{1-2t}

楕円の周の長さの近似

冒頭の公式を適当な項で打ち切れば,楕円の周の長さを近似できます。例えば最初の項のみで近似すると 2πa2\pi a となります。

しかし,上記の無限級数は収束が遅いです。そこで,以下のような別の公式を使うと精度よく近似できます。

  • 楕円が円に近い場合:Gauss-Kummerの公式
    L=π(a+b){1+(12)2h2+(124)2h4+(13246)2h6+}L=\pi (a+b)\left\{1+(\frac{1}{2})^2h^2+(\frac{1}{2\cdot 4})^2h^4+(\frac{1\cdot 3}{2\cdot 4\cdot 6})^2h^6+\cdots\right\}
    ただし,h=aba+bh=\dfrac{a-b}{a+b}
    最初の項のみで近似すると π(a+b)\pi(a+b)

  • 楕円がつぶれている場合:Cayleyの公式
    log\log とかが入ってきて複雑なので略。最初の項のみで近似すると 4a4a

!!という記号は威圧感抜群ですね。