2015/12/07

チェザロ平均の性質と関連する東大の問題

分野: 極限,微分  レベル: 最難関大学

チェザロ平均についての定理:
数列 $a_n$ に対して,$c_n=\dfrac{a_1+a_2+\cdots +a_n}{n}$ をチェザロ平均という。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha$ なら $\displaystyle\lim_{n\to\infty}c_n=\alpha$

この定理に関連する東大入試の問題,およびこの定理の証明を解説します。

定理について

数列がだんだん $\alpha$ に近づいていけばそのチェザロ平均も $\alpha$ に近づいていくという定理です。

直感的には納得しやすい定理だと思いますが,一応厳密な証明を記事末に載せておきます(極限に関する定理なので厳密な証明には $\varepsilon-\delta$ 論法を使います。高校数学範囲外です)。

なお,定理の逆は成立しません。例えば $1,-1,1,-1,\cdots$ という数列を $a_n$ とすると,そのチェザロ和(チェザロ平均の収束先)は $0$ ですが,$a_n$ は収束しません(振動します)。

東大2006年理系第5問

本当は(3)までありますが,ここでは(2)までのみ扱います。

問題

$a_1=\dfrac{1}{2}$ とし,数列 $a_n$ を漸化式 $a_{n+1}=\dfrac{a_n}{(1+a_n)^2}\:(n=1,2,3,\cdots)$ によって定める。
(1)$b_n=\dfrac{1}{a_n}$ とおく。 $n > 1$ のとき $b_n> 2n$ を示せ。
(2)$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{a_1+\cdots +a_n}{n}$ を求めよ。

解答

(1)まず,帰納的に $a_n > 0$ であることが分かる。よって,
$b_{n+1}=\dfrac{1}{a_{n+1}}\\
=\dfrac{(1+a_n)^2}{a_n}\\
> \dfrac{1}{a_n}+2\\
=b_n+2$
これと $b_1=2$ であることから(帰納的に)$b_n > 2n$ が分かる。

(2)$0\leq a_n \leq \dfrac{1}{2n}$ なのではさみうちの原理から,$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=0$
よって,冒頭の定理より $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{a_1+\cdots +a_n}{n}=0$

補足

(2)は冒頭の定理を使わなくても $1+\dfrac{1}{2}+\cdots +\dfrac{1}{n} < 1+\log n$ であることを使えば解けます。

ちなみに,2014年理系第2問(3)も冒頭の定理を知っていればすぐに答えが出せます。

定理の証明

証明

定理の条件より
任意の $\varepsilon > 0$ に対してある $N$ が存在して,$n > N$ なら $|a_n-\alpha| < \varepsilon$

よって,$N$ より大きい $n$ に対して
$|c_n-\alpha|\\
=\left|\displaystyle\sum_{k=1}^n\dfrac{a_k-\alpha}{n}\right|\\
\leq \dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{k=1}^n|a_k-\alpha|\\
=\dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{k=1}^N|a_k-\alpha|+\dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{k=N+1}^n|a_k-\alpha|\\
< \dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{k=1}^N|a_k-\alpha|+\dfrac{(n-N)\varepsilon}{n}\\
< \dfrac{1}{n}\displaystyle\sum_{k=1}^N|a_k-\alpha|+\varepsilon$

よって,$\dfrac{1}{n_0}\displaystyle\sum_{k=1}^N|a_k-\alpha|\leq \varepsilon$
となるくらい大きい整数 $n_0$ を持ってくれば,$n> n_0$ なら $|c_n-\alpha| < 2\varepsilon$
が成立する。

「チェ」とスムーズに入力するの,意外と難しいです。

Tag:東大入試数学の良問と背景知識まとめ

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