2015/05/25

ケーリー・ハミルトンの定理(2次,3次,n次)

分野: 線形代数  レベル: 大学数学

ケーリー・ハミルトンの定理:
正方行列 $A$ に対して,$\det(A-\lambda I)$ という $\lambda$ の多項式の $\lambda$ の部分を $A$ に変えたものはゼロ行列になる。


ケーリー(Cayley)とハミルトン(Hamilton)の順番を入れ替えて「ハミルトン・ケーリーの定理」と言うこともあります。

二次の場合

ケーリー・ハミルトンの定理の意味を理解するために,2×2の場合について考えてみます。行列式についての知識が必要です。

この節では $A=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}$ とします。
固有多項式は,$\det(A-\lambda I)=\lambda^2-(a+d)\lambda+(ad-bc)\lambda^0$ です。
これは $\lambda$ についての二次多項式ですが,$\lambda$ の部分に強引に行列 $A$ を入れたものを考えるとゼロ行列になる,というのがケーリー・ハミルトンの定理です。

サイズ2の場合:
$A^2-(a+d)A+(ad-bc)I=O$

トレースと行列式を用いて $A^2-(\mathrm{tr}\: A)A+(\det A)I=O$ と書くこともできます。

サイズ2の場合については成分計算で簡単に証明できます。

証明

$A^2=\begin{pmatrix}a^2+bc&ab+bd\\ac+cd&bc+d^2\end{pmatrix}$
$-(a+d)A=\begin{pmatrix}-a^2-ad&-ab-bd\\-ac-cd&-ad-d^2\end{pmatrix}$
$(ad-bc)I=\begin{pmatrix}ad-bc&0\\0&ad-bc\end{pmatrix}$
これらを全て足すと確かにゼロ行列になる。

三次の場合

$A$ が3×3行列の場合は固有多項式 $\det(A-\lambda I)$ は $\lambda$ の三次多項式になります。計算はやや煩雑なので,結果のみ書いておきます。

サイズ3の場合
$A^3-(\mathrm{tr}\:A)A^2+cA-(\det A)I=O$
ただし,$c$ は $A$ の二次の主小行列式の和:$a_{11}a_{22}-a_{12}a_{21}+a_{22}a_{33}-a_{23}a_{32}+a_{11}a_{33}-a_{13}a_{31}$

n次,対角化できる場合の証明

ケーリー・ハミルトンの定理を証明します。

証明

$A$ を $n\times n$ 行列とし,その固有多項式を $\det (A-\lambda I)=\phi(\lambda)$ とおく。
$\lambda$ の部分に $A$ を入れたものを $\phi(A)$ と書く($\phi(\lambda)$ は多項式,$\phi(A)$ は行列)。

・ $A$ が対角化できる場合
$P^{-1}AP=\mathrm{diag}(\lambda_1,\cdots ,\lambda_n)$ なる正則行列 $P$ が存在する。ただし,$\mathrm{diag}(\lambda_1,\cdots ,\lambda_n)$ は対角行列で,対角成分には $A$ の固有値 $\lambda_1,\cdots,\lambda_n$ が並んだものである。

よって,任意の正の整数 $k$ に対して,$P^{-1}A^kP=\mathrm{diag}(\lambda_1^k,\cdots,\lambda_n^k)$ が分かる。
これらの線形結合をうまく取ることで,$P^{-1}\phi (A)P=\mathrm{diag}(\phi(\lambda_1),\cdots,\phi(\lambda_n))$ となるが,$\lambda_i$ は $A$ の固有値なので $\phi(\lambda_i)=0$ である。よって,上式の右辺はゼロ行列。
つまり,$P^{-1}\phi (A)P=O$ より,$\phi(A)=O$

・対角化できない場合
摂動を加えると対角化できる場合に帰着できる。摂動 $\to 0$ の極限を考えればOK($\det$ は連続関数)。

対角化できない場合をごまかしました。完璧な証明をご所望の方は線形代数の本を参照して下さい。

高校数学で行列を扱っていたころは,2×2のケーリー・ハミルトンが活躍していました。

Tag: 数検1級の範囲と必要な公式まとめ

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