放射性炭素年代測定法の原理と微分方程式

動物や植物などが死んでからどれくらい経過したのかを推定する方法である「放射性炭素年代測定法」について解説します。簡単な微分方程式が登場します。

年代測定法の原理

  • 炭素原子の多くはC12(原子核に陽子6個,中性子6個)ですが,ごくわずかに放射性同位体C14(陽子6個,中性子8個)が存在します。

C14年代測定法

  • 動植物でのC14の存在割合は一定値 r0r_0(約1兆分の1)ですが,死亡するとC14は放射性崩壊により減少していきます。C12は減少しません。
  • C14の存在個数の時間変化は微分方程式を用いて説明できます(後述)。そして,半減期が約5730年であることを利用して動植物が死んでからのおおよその年数を推定することができます。

C14の存在割合が約8兆分の1→その個体は死亡してから約 5730×3=5730\times 3= 1万7千年 くらい経過している。

微分方程式の導出

動植物が死んでから放射性炭素がどのように減少していくのか考えてみます。

時刻 tt における放射性炭素C14の個数を N(t)N(t) とすると,dN(t)dt=λN(t)\dfrac{dN(t)}{dt}=-\lambda N(t) が成立する(λ\lambda は崩壊のスピードを表す定数)。

炭素が減っていくスピードは今残ってる数に比例することを意味しています。これで納得できる方は以下スルーしてもOKです。

導出

一つの放射性炭素C14がいつ放射性崩壊するかは「ランダム」である。つまり,残っているC14について,これから Δt\Delta t の間に崩壊する確率は(Δt\Delta t が十分小さいとき)いつでも λΔt\lambda \Delta t である。

N(t)N(t) 個ある放射性炭素の中でこれから Δt\Delta t の間に崩壊するものの数 XX は確率変数だが,もとの炭素の数が多いとき,大数の法則より X=N(t)λΔtX=N(t) \lambda \Delta t とみなせる。

このとき,N(t+Δt)=N(t)N(t)λΔtN(t+\Delta t)=N(t)-N(t)\lambda \Delta t

変形すると,N(t+Δt)N(t)Δt=λN(t)\dfrac{N(t+\Delta t)-N(t)}{\Delta t}=-\lambda N(t)

Δt0\Delta t\to 0 の極限を取ると求める微分方程式を得る。

微分方程式を解く

非常に基本的な変数分離形微分方程式です。→変数分離形の微分方程式の解法と例題

微分方程式を解く

両辺を N(t)N(t) で割ると,

1N(t)dN(t)dt=λ\dfrac{1}{N(t)}\dfrac{dN(t)}{dt}=-\lambda

両辺を tt で積分すると,logN(t)=λt+C\log N(t)=-\lambda t+CCC は積分定数)

よって,N(t)=N(0)eλtN(t)=N(0)e^{-\lambda t}

半減期を用いて表す

以上の結果で十分ですが,λ\lambda の意味が分かりにくいので半減期 τ\tau を用いて上式を表現してみます。

半減期の定義より N(τ)=12N(0)N(\tau)=\dfrac{1}{2}N(0) であることと,上式より N(τ)=N(0)eλτN(\tau)=N(0)e^{-\lambda \tau} なので,12=eλτ\dfrac{1}{2}=e^{-\lambda \tau}

よって,λ=log2τ\lambda=\dfrac{\log 2}{\tau}

もとの式に代入すると N(t)=N(0)2tτN(t)=N(0)2^{-\frac{t}{\tau}}

C12の存在数から N(0)N(0) が推定できます。 N(t)N(t) は測定できます。半減期 τ\tau は定数として求まっています。

よって,経過年数 t=τlog2N(0)N(t)t=\tau \log_2 \dfrac{N(0)}{N(t)} が推定できるのです!

年代測定法については高校の日本史でサラッと習った記憶があります。