2015/08/05

ブロック行列の行列式,逆行列の公式と証明

分野: 線形代数  レベル: 大学数学

この記事では大きな行列を四つに区切ったブロック行列 $T=\begin{pmatrix}A&B\\C&D\end{pmatrix}$ について考えます。
$A$ と $D$ は正方行列とします。

ブロック行列の行列式

$T$ の行列式を,$A,B,C,D$ を用いて表す公式です!

$A$ が正則なとき, $\det T=\det A\det (D-CA^{-1}B)$
$D$ が正則なとき, $\det T=\det D\det (A-BD^{-1}C)$

〜公式の覚え方〜
2×2行列の行列式が $ad-bc=a(d-\dfrac{bc}{a})$ と書けることを意識すると覚えやすいです。
$D-CA^{-1}B$ なのか $D-BA^{-1}C$ なのか迷いがちですが,行列のサイズを意識すると前者が正しいと分かります。また「時計回り」と覚えてもよいです($C,A,B$ が時計回りの順になっている)。

〜公式が活躍する例〜
例えば行列の性質を数学的帰納法で証明するときに活躍します($B$ が縦ベクトル,$C$ が横ベクトルのとき,$T$ のサイズは $A$ のサイズより1大きいです,また $D-CA^{-1}B$ はスカラーとなり扱いやすいです)。

行列式の公式の証明

二つ目の式も同様なので,一つ目の式のみ示します。証明だけなら簡単です。

証明

$\begin{pmatrix}A&B\\C&D\end{pmatrix}\\=\begin{pmatrix}I&O\\CA^{-1}&I\end{pmatrix}\begin{pmatrix}A&O\\O&D-CA^{-1}B\end{pmatrix}\begin{pmatrix}I&A^{-1}B\\O&I\end{pmatrix}$
が成立する(右辺を計算すれば簡単に分かる,余談も参照)。

積の行列式は行列式の積であり,右辺の一つ目と三つ目の行列の行列式は $1$ なので,
$\det \begin{pmatrix}A&B\\C&D\end{pmatrix}=\det A\det (D-CA^{-1}B)$ を得る。


〜余談(なぜこのような変形が思いつくのか)〜
まず,$\begin{pmatrix}A&B\\C&D\end{pmatrix}$ の $A$ を使って $B$ を消します(列変形のノリ):
$\begin{pmatrix}A&B\\C&D\end{pmatrix}\begin{pmatrix}I&-A^{-1}B\\O&I\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}A&O\\C&D-CA^{-1}B\end{pmatrix}$
次に,$A$ を使って $C$ を消します(行変形のノリ)
$\begin{pmatrix}I&O\\-CA^{-1}&I\end{pmatrix}\begin{pmatrix}A&O\\C&D-CA^{-1}B\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}A&O\\O&D-CA^{-1}B\end{pmatrix}$

この二つを合わせた式に,左から $\begin{pmatrix}I&O\\-CA^{-1}&I\end{pmatrix}^{-1}=\begin{pmatrix}I&O\\CA^{-1}&I\end{pmatrix}$
右から $\begin{pmatrix}I&-A^{-1}B\\O&I\end{pmatrix}^{-1}=\begin{pmatrix}I&A^{-1}B\\O&I\end{pmatrix}$
をかけると目標の式を得ます。

ブロック行列の逆行列

$T$ の逆行列を,$A,B,C,D$ を用いて表す公式です!

$A$ と $S=D-CA^{-1}B$ が正則なとき,
$T^{-1}=\begin{pmatrix}A^{-1}+A^{-1}BS^{-1}CA^{-1}&-A^{-1}BS^{-1}\\-S^{-1}CA^{-1}&S^{-1}\end{pmatrix}$

なお,さらに $D$ が正則なら逆行列の補助定理を使うことで左上部分は$(A-BD^{-1}C)^{-1}$ と簡潔に書くことができます。

逆行列の公式の導出

行列式のときに得た式を使えばあとは計算するのみです。

証明

行列式のときに得た式より,
$\begin{pmatrix}A&B\\C&D\end{pmatrix}^{-1}\\=\begin{pmatrix}I&A^{-1}B\\O&I\end{pmatrix}^{-1}\begin{pmatrix}A&O\\O&S\end{pmatrix}^{-1}\begin{pmatrix}I&O\\CA^{-1}&I\end{pmatrix}^{-1}\\
=\begin{pmatrix}I&-A^{-1}B\\O&I\end{pmatrix}\begin{pmatrix}A^{-1}&O\\O&S^{-1}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}I&O\\-CA^{-1}&I\end{pmatrix}\\
=\begin{pmatrix}A^{-1}+A^{-1}BS^{-1}CA^{-1}&-A^{-1}BS^{-1}\\-S^{-1}CA^{-1}&S^{-1}\end{pmatrix}$

見た目はゴツイですが,導出の考え方は難しくありません。
分野: 線形代数  レベル: 大学数学