2014/10/13

バーゼル問題の初等的な証明

分野: 極限,微分  レベル: マニアック

バーゼル問題:平方数の逆数和は $\dfrac{\pi^2}{6}$ に収束する。つまり,
$\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}\dfrac{1}{k^2}=1+\dfrac{1}{4}+\dfrac{1}{9}+\cdots=\dfrac{\pi^2}{6}$

平方数の逆数和はいくつに収束するのか?という問題がバーゼル問題です。高校数学で理解できるバーゼル問題の証明を解説します。

級数が収束すること

一般に,$\zeta(p)=\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}\dfrac{1}{k^p}$ をリーマンのゼータ関数といいます。 $p=1$ のときは発散します。→調和級数1+1/2+1/3…が発散することの証明
バーゼル問題は $p=2$ のときのゼータ関数の値を求める問題です。

まず,この級数が発散せずに収束することは以下のように簡単に証明できます。非常に有名なテクニック:→部分分数分解など差に分解する4つの恒等式を用いて級数を上からおさえます。

証明

$1+\dfrac{1}{2^2}+\dfrac{1}{3^2}+\cdots+\dfrac{1}{n^2}\\
< 1+\dfrac{1}{1\cdot 2}+\dfrac{1}{2\cdot 3}+\cdots +\dfrac{1}{(n-1)n}\\ =1+(1-\dfrac{1}{2})+(\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{3})+\cdots +(\dfrac{1}{n-1}-\dfrac{1}{n})\\ =2-\dfrac{1}{n}$ より,バーゼル問題の級数は収束してその値は $2$ 以下であることが分かる。

バーゼル問題の証明の道具

バーゼル問題の級数の収束先が $\dfrac{\pi^2}{6}$ であることの証明はいろいろな方法があります。特に,サインのマクローリン展開および無限積展開を用いるオイラーの方法が有名です。

ここでは,大学数学の道具を使わず高校数学で理解できる方法で証明します。
使う道具は以下の3つです:

1:$0\leq x\leq \dfrac{\pi}{2}$ において $\sin x \leq x \leq \tan x$(有名不等式)
2:$(\cos\theta+i\sin\theta)^n=\cos n\theta+i\sin n\theta$(ド・モアブル)
3:解と係数の関係

1についてはsinx/xについて覚えておくべき2つのこと
2については,ドモアブルの定理の意味と証明を参照して下さい。

バーゼル問題の証明の前半

まずは部分和 $1+\dfrac{1}{2^2}+\cdots+\dfrac{1}{n^2}$ を上と下から三角関数ではさみます。

証明の前半

$k=1,\:2,\cdots,n$ に対して $\theta_k=\dfrac{k\pi}{2n+1}$ とおく。 $0\leq \theta_k\leq \dfrac{\pi}{2}$ より,
$\sin \theta_k \leq \theta_k\leq \tan \theta_k$ を得る。
各辺の逆数をとって二乗すると,
$\dfrac{1}{\tan^2\theta_k}\leq \dfrac{(2n+1)^2}{k^2\pi^2}\leq \dfrac{1}{\sin^2\theta_k}$
これを変形して平方数の逆数を作り出す:
$\dfrac{\pi^2}{(2n+1)^2}\cdot\dfrac{1}{\tan^2\theta_k}\leq \dfrac{1}{k^2}\leq \dfrac{\pi^2}{(2n+1)^2}(1+\dfrac{1}{\tan^2\theta_k})$
これを $k=1$ から $n$ まで足し合わせる:
$\dfrac{\pi^2}{(2+\frac{1}{n})^2n^2}\displaystyle\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{\tan^2\theta_k}\leq \displaystyle\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{k^2}\\\leq \dfrac{\pi^2}{(2+\frac{1}{n})^2}(\dfrac{1}{n}+\dfrac{1}{n^2}\displaystyle\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{\tan^2\theta_k})\:\cdots(※)$
よって,あとは $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{1}{n^2}\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{\tan^2\theta_k}=\dfrac{2}{3}$ を証明すれば,上記の不等式の極限を取ってハサミ打ちの原理を使うことにより収束先が $\dfrac{\pi^2}{2^2}\times\dfrac{2}{3}=\dfrac{\pi^2}{6}$ であることが分かる。

$(※)$ 補足:最右辺第一項は $1$ を $n$ 個足しあわせているので,$\dfrac{1}{n^2}\displaystyle\sum_{k=1}^n1=\dfrac{n}{n^2}=\dfrac{1}{n}$ となっている。

証明の後半:東工大の入試問題

目標は $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{S_n}{n^2}=\dfrac{2}{3}$ です。ただし,$S_n=\displaystyle\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{\tan^2\theta_k}$
これは,1990年東工大後期第二問と本質的に同じ問題になります。(東工大の入試問題では誘導がついていました。)

ド・モアブルの定理と解と係数の関係を使います!

証明

$\sin(2n+1)\theta_k=0$ より,
$z=(\cos\theta_k+i\sin\theta_k)^{2n+1}$ の虚部は $0$ である。
また,$\sin\theta_k\neq 0$ なので,$z$ を $\sin^{2n+1}\theta_k$ で割ることにより,
$z’=(\dfrac{1}{\tan\theta_k}+i)^{2n+1}$ の虚部は $0$ である。
この $z’$の虚部は $\dfrac{1}{\tan^2\theta_k}$ の $n$ 次多項式とみなせる!
つまり,この $n$ 次多項式を
$f(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_0=0$ とおくと,$k=1,2,\cdots,n$ に対して
$f(\dfrac{1}{\tan^2\theta_k})=0$ である。

すなわち $n$ 次方程式 $f(x)=0$ の解が $n$ 個全て構成できたので解と係数の関係より,
$S_n=-\dfrac{a_{n-1}}{a_n}$
実際,二項定理を用いて計算すると,
$a_n=2n+1,\:a_{n-1}=-\dfrac{(2n+1)(2n)(2n-1)}{6}$ なので
$S_n=\dfrac{n(2n-1)}{3}$
よって,$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{S_n}{n^2}=\dfrac{2}{3}$ が示された。

なお,フーリエ展開を用いた別証もきれいです!→フーリエ級数展開の公式と意味の記事末

思ったより長く険しい証明になってしまいました。

Tag: 無限和,無限積の美しい公式まとめ

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