漸化式で表される数列の極限

漸化式で表される数列の極限を求めるタイプの入試問題は頻出です。問題の背景にはバナッハの不動点定理と呼ばれる素敵な定理があります。

漸化式で表される数列の極限

a1=a,an+1=f(an)a_1=a,a_{n+1}=f(a_n) で表される数列の極限を求めよ」

という問題について考えます。

この手の問題は必ず以下の2ステップで解くことになります。

ステップ1: 0k<10\leq k <1 なるある kk と,α=f(α)\alpha=f(\alpha) を満たす α\alpha に対して,anα<kan1α|a_n-\alpha| <k|a_{n-1}-\alpha| が成立することを示す。

ステップ2:この不等式を繰り返し用いて,はさみうちの原理を使うと limnan=α\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha が分かる。

ステップ2は機械的な作業です。ステップ1でうまいこと kk を持ってきて不等式を示すのがこの問題の核心部分です。 不等式の証明に関しては誘導問題がついているはずです。

以下,具体例で解説していきます。

漸化式から極限を求める例題

問題

a1=1,an+1=an+6a_1=1,a_{n+1}=\sqrt{a_{n}+6} で表される数列 ana_n の極限値を求めよ。

方針

計算すると α=3\alpha=3 が分かります。そこで,an3<kan13|a_n-3| <k|a_{n-1}-3| を示すことが目標になるので,漸化式を用いて an3a_n-3 を評価します。評価の際に分子を有理化する場合が多いです。

解答

方程式 α=α+6\alpha=\sqrt{\alpha+6} の解は α=3\alpha=3 であるので an3a_n-3 を評価する。

an3=an1+63=an13an1+6+3a_n-3=\sqrt{a_{n-1}+6}-3\\ =\dfrac{a_{n-1}-3}{\sqrt{a_{n-1}+6}+3}

よって,

an3<13an13|a_n-3| <\dfrac{1}{3}|a_{n-1}-3|

あとは,この不等式を繰り返し用いて,

an3<13n1a13|a_n-3| <\dfrac{1}{3^{n-1}}|a_1-3|

この式で nn\to\infty とすればはさみうちの原理より limnan3=0\displaystyle\lim_{n\to\infty}|a_n-3|=0

つまり,limnan=3\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=3

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT75では,類題と計算ミスを減らすコツを紹介しています。

バナッハの不動点定理

上記の問題の背景には「バナッハの不動点定理(またの名を縮小写像の原理)」というものがあります。

バナッハの不動点定理は大学数学の関数解析という分野で学びます。不動点定理は方程式の解の存在を保証してくれたり極限値を構成してくれたり素敵な定理です。

応用上も非常に重要な定理なので入試問題のテーマにされやすいのでしょう。

というわけで,(知っていると有利になることはありませんが)素晴らしい定理なので紹介しておきます。

バナッハの不動点定理(実数,1次元の場合)

不動点定理

定義域と値域が同じ閉区間Mである関数 ff について考える。

ある実数 k(0k<1)k (0\leq k <1) が存在して,任意の2点 x,yx,y に対して

f(x)f(y)<kxy|f(x)-f(y)| <k|x-y|

を満たすとき,

  • f(α)=αf(\alpha)=\alpha を満たす α\alpha(不動点)が一意に存在する。
  • M上のどの点 a0a_0 から初めても limnf(n)(a0)=α\displaystyle\lim_{n\to\infty}f^{(n)}(a_0)=\alpha

ただし,ここで f(n)f^{(n)}ffnn 回合成したものを表します。

どこから初めても同じとこに収束するというのは素晴らしい性質です

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