2倍角の公式とその証明

2倍角の公式

2倍角の公式は,2θ2\theta の三角関数θ\theta の三角関数で表す以下の公式です。 pic

倍角の公式(2倍角の公式)の意味,証明,および図形的な考察について紹介します。

2倍角の公式 (倍角の公式)とは

2倍角の公式(倍角の公式)を使うと,2θ2\theta の三角関数θ\theta の三角関数で表すことができます。

例えば,サインの2倍角の公式は

sin2θ=2sinθcosθ\sin 2\theta=2\sin\theta\cos\theta

です。sin60=2sin30cos30\sin 60^{\circ}=2\sin 30^{\circ}\cos 30^{\circ}

などが成立するというのは面白いですね。

2倍角の公式の証明

2倍角の公式は加法定理から導出できます。慣れれば本当に一瞬です。

sinの2倍角公式の証明

まず,sinの2倍角の公式

sinの2倍角の公式

sin2θ=2sinθcosθ\sin 2\theta=2\sin\theta\cos\theta

を証明します。

sinの2倍角の公式

sinの加法定理:

sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ\sin(\alpha+\beta)=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta

において α=β=θ\alpha=\beta=\theta とおくと,

sin2θ=sinθcosθ+cosθsinθ=2sinθcosθ\sin 2\theta\\=\sin\theta\cos\theta+\cos\theta\sin\theta\\=2\sin\theta\cos\theta

つまり,sinの2倍角の公式 sin2θ=2sinθcosθ\sin 2\theta=2\sin\theta\cos\theta を得る。

cosについての2倍角の公式

次に,cosの場合の2倍角の公式を証明します。sinの場合と同様に導出できます。

cosの2倍角公式の証明

cosの加法定理: cos(α+β)=cosαcosβsinαsinβ\cos(\alpha+\beta)=\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta

において α=β=θ\alpha=\beta=\theta とおくと,

cos2θ=cosθcosθsinθsinθ=cos2θsin2θ\cos 2\theta\\ =\cos\theta\cos\theta-\sin\theta\sin\theta\\ =\cos^2\theta-\sin^2\theta

つまり,cosの2倍角の公式 cos2θ=cos2θsin2θ\cos 2\theta=\cos^2\theta-\sin^2\theta を得る。

さらにこの式において,三角関数の相互関係(詳しくは三角関数の相互関係とその証明をご覧ください)のうち,sin2θ+cos2θ=1\sin^2\theta+\cos^2\theta=1 を使って sin2θ\sin^2\theta を消すと二つ目の式:

cos2θ=2cos2θ1\cos 2\theta=2\cos^2\theta-1

が得られ,同様に cos2θ\cos^2\theta を消すと三つ目の式:

cos2θ=12sin2θ\cos 2\theta=1-2\sin^2\theta

を得る。

補足:cosの2倍角公式は3つある

上で示した通り,cos\cos の2倍角公式は三つあります:

  • cos2θ=cos2θsin2θ\cos 2\theta=\cos^2\theta-\sin^2\theta
  • cos2θ=2cos2θ1\cos 2\theta=2\cos^2\theta-1
  • cos2θ=12sin2θ\cos 2\theta=1-2\sin^2\theta

3つとも全て重要です。 cosθ\cos\theta に統一したいときは二つ目の式を使い,sinθ\sin\theta に統一したいときは三つ目の式を使います。

tanの2倍角の公式の証明

最後に,tanの2倍角の公式も証明しておきましょう。

tanの2倍角公式の証明

tanの加法定理: tan(α+β)=tanα+tanβ1tanαtanβ\tan(\alpha+\beta)=\dfrac{\tan\alpha+\tan\beta}{1-\tan\alpha\tan\beta}

において α=β=θ\alpha=\beta=\theta とおくと,

tan2θ=tanθ+tanθ1tanθtanθ=2tanθ1tan2θ\tan 2\theta=\dfrac{\tan\theta+\tan\theta}{1-\tan\theta\tan\theta}=\dfrac{2\tan\theta}{1-\tan^2\theta}

つまり,tanの2倍角の公式 tan2θ=2tanθ1tan2θ\tan 2\theta=\dfrac{2\tan\theta}{1-\tan^2\theta} を得る。

このように,2倍角の公式は加法定理から一瞬で導出できるので覚えなくても構いません。ただし,頻繁に使う公式ですので,覚えない場合でも素早く導出できるようになっておきましょう。

2倍角の公式の応用例

2倍角の公式の応用はたくさんあります。応用例の1つとして三角方程式を紹介します。

例題1

sin2θ=sinθ\sin 2\theta=\sin\theta を満たす θ\theta0θ<π0\leq\theta<\pi の範囲で求めよ。

2θ2\thetaθ\theta の三角関数が混在した三角方程式を解きたい場合,2倍角の公式を使って θ\theta の三角関数に統一することが有効です。

証明

sin\sin の2倍角公式を使うと,方程式は 2sinθcosθ=sinθ2\sin\theta\cos\theta=\sin\theta となる。よって,sinθ=0\sin\theta=0 または cosθ=12\cos\theta=\dfrac{1}{2} となればよく,θ=0,π3\theta=0,\dfrac{\pi}{3} が答え。

他にも,複雑な三角関数の積分を行う際に,2倍角の公式を使って変形することがあります。具体的には,三角関数の次数を下げるのに2倍角の公式を用います。

例題2

0πcos2θdθ\displaystyle\int^{\pi}_{0} \cos^2{\theta}d\theta を求めよ。

解答

cosについての2倍角の公式を用いて,

0πcos2θdθ=0π1+cos2θ2dθ=[12θ+14sin2θ]0π=π2\displaystyle\int^{\pi}_{0} \cos^2{\theta}d\theta = \int^{\pi}_{0} \dfrac{1+\cos{2\theta}}{2}d\theta\\ =\left[ \dfrac{1}{2} \theta + \dfrac{1}{4} \sin{2\theta} \right]^{\pi}_{0} =\dfrac{\pi}{2}

図形を用いた2倍角の公式の導出

あまり美しくありませんが,図形的な考察によってコサインの2倍角公式(cos2θ=2cos2θ1\cos 2\theta=2\cos^2\theta-1)を 0<θ<π40 < \theta < \dfrac{\pi}{4} の場合について証明します。

証明

倍角公式の証明

図において cos2θ=ca\cos 2\theta=\dfrac{c}{a}cosθ=cb\cos \theta=\dfrac{c}{b} より証明すべき式は ca=2c2b21\dfrac{c}{a}=\dfrac{2c^2}{b^2}-1

つまり b2c=2ac2ab2b^2c=2ac^2-ab^2

ここで,三角形 AEDAEDABDABD は合同なので,ED=BD=b2c2ED=BD=\sqrt{b^2-c^2}

これと,三角形 CEDCEDCBACBA は相似なので,ac:b2c2=a2c2:ca-c:\sqrt{b^2-c^2}=\sqrt{a^2-c^2}:c

よって,(ac)c=a2c2b2c2(a-c)c=\sqrt{a^2-c^2}\sqrt{b^2-c^2}

両辺二乗して整理していく:

(ac)2c2=(a2c2)(b2c2)(a-c)^2c^2=(a^2-c^2)(b^2-c^2)

(ac)c2=(a+c)(b2c2)(a-c)c^2=(a+c)(b^2-c^2)

ac2=ab2ac2+b2cac^2=ab^2-ac^2+b^2c

b2c=2ac2ab2b^2c=2ac^2-ab^2

となり目標の式を得る。

なお,sinの2倍角公式(0<θ<π20 < \theta < \dfrac{\pi}{2})は頂角が 2θ2\theta の二等辺三角形の面積を二通りの方法で表すことで導出できます!(読者の方に教えてもらいました)

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT141では,倍角の公式を使う難しい問題と2通りの解答を紹介しています。

2倍角の公式を変な語呂で覚える必要はありません。

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