2015/01/14

Arctanのマクローリン展開の3通りの方法

分野: 極限,微分  レベル: 最難関大学

$y=\tan x$ の逆関数 $y=\mathrm{Arctan}\:x$ のマクローリン展開($x=0$ でのテイラー展開)は,
$\mathrm{Arctan}\:x=\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{(-1)^{n-1}}{2n-1}x^{2n-1}=x-\dfrac{x^3}{3}+\dfrac{x^5}{5}-\dfrac{x^7}{7}+\cdots $
である(収束半径は $1$)。


この公式を3通りの方法で証明します!

前提知識

やや高校範囲を逸脱するので,記事を読むのに必要な前提知識を。

  • $y=\tan x$ の逆関数を $y=\mathrm{Arctan}\:x$ と書きます。逆三角関数の重要な性質まとめ
  • 特に,$y=\mathrm{Arctan}\:x$ の微分が $\dfrac{1}{1+x^2}$ となることを使います。

・関数 $f(x)$ が与えられたとき,$n$ 階微分の $x=0$ での値が分かれば $f(x)$ を以下のようにべき級数で表すことができます:
$f(x)={\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}}f^{(k)}(0)\dfrac{x^k}{k!}=f(0)+f'(0)x+\dfrac{f”(0)}{2!}x^2+\cdots$
→マクローリン展開

等比級数の公式を用いる方法

(導出1)
無限等比級数の公式より,$|x| <1$ の範囲では
$\dfrac{1}{1+x^2}=1-x^2+x^4-x^6+\cdots$
である。この両辺を $0$ から $x$ まで積分(注)すると,
$\mathrm{Arctan}\:x =x-\dfrac{x^3}{3}+\dfrac{x^5}{5}-\dfrac{x^7}{7}+\cdots$
となり題意の公式を得る。

注:厳密には極限と積分の交換操作(項別積分)を行っても問題ないことを言わないといけません。

ライプニッツの公式を用いる方法

方針:$f(x)=\mathrm{Arctan}\:x$ の $n$ 階微分の $x=0$ の値を求めればマクローリン展開できます。
そのために,積の微分公式 $\{f(x)g(x)\}’=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)$ の発展形($n$ 階微分バージョン)であるライプニッツの公式を用います:
$(fg)^{(n)}={\displaystyle \sum_{k=0}^{n} {}_n\mathrm{C}_kf^{(k)}g^{(n-k)}}$
→ライプニッツの公式の証明と二項定理

(導出2)
$f'(x)=\dfrac{1}{1+x^2}$ なので $f'(x)(1+x^2)=1$ である。
この両辺を $n(\:\geq 2)$ 回微分する。右辺は $0$ になり,左辺はライプニッツの公式より,
$(1+x^2)f^{(n+1)}(x)+{}_n\mathrm{C}_12xf^{(n)}(x)+{}_{n}\mathrm{C}_22f^{(n-1)}(x)$

よって,
$(1+x^2)f^{(n+1)}(x)+2nxf^{(n)}(x)+n(n-1)f^{(n-1)}(x)=0$
(ここで,$1+x^2$ を三回以上微分すると $0$ になるので先頭の3つの項しか残らないことに注意。)

両辺に $x=0$ を代入すると,$f^{(n+1)}(0)+n(n-1)f^{(n-1)}(0)=0$

この漸化式と初期条件 $f'(0)=1,\:f”(0)=0$(注)を使うことで $f^{(n)}(0)$ が以下のように求まる!

  • $f^{(2n)}(0)=0$
  • $f^{(2n-1)}(0)=-(2n-2)(2n-3)f^{(2n-3)}(0)\\=\cdots=(-1)^{n-1}(2n-2)!f^{(1)}(0)=(-1)^{n-1}(2n-2)!$

よって,マクローリン展開の式に $f^{(n)}(0)$ の値を代入することにより,
$f(x)={\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}}f^{(k)}(0)\dfrac{x^k}{k!}\\=\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}(-1)^{n-1}(2n-2)!\dfrac{x^{2n-1}}{(2n-1)!}\\
=\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{(-1)^{n-1}}{2n-1}x^{2n-1}$
となり目標の式を得る。

注:$f”(x)=\dfrac{-2x}{(1+x^2)^2}$ です。

n次導関数を求める方法

当サイトでは複素関数の微分をきちんと扱っていないので厳密さに欠けますが,なんとなく納得していただけるでしょう。

方針:部分分数分解を用いて $f(x)$ の $n$ 次導関数を直接求めます。

(導出3)
$f'(x)=\dfrac{1}{1+x^2}=\dfrac{1}{2i}(\dfrac{1}{x-i}-\dfrac{1}{x+i})$

ここで,分数関数 $\dfrac{1}{x}$ の $n-1$ 次導関数は$(-1)^{n-1}(n-1)!x^{-n}$ であることが帰納法で簡単に証明できるので,
$f^{(n)}(x)=\dfrac{(-1)^{n-1}(n-1)!}{2i}\{(x-i)^{-n}-(x+i)^{-n}\}$
$n$ 次導関数が求まったのであとは $x=0$ を代入して計算していけば $f^{(n)}(x)$ が求まり $\mathrm{Arctan}\:x$ の級数展開を得る(詳細は省略)。

けっこう大学内容ですが高校生にも読んで欲しいので緑記事にしました。

Tag: マクローリン展開の応用例まとめ

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