原始関数の定義といろいろな例

原始関数とは

微分すると f(x)f(x) になるような関数 F(x)F(x)f(x)f(x) の原始関数と言う。

前半は簡単な具体例です。後半は原始関数が初等関数で表せない具体例を紹介します。

簡単な具体例

x3x^3 を微分すると 3x23x^2 なので F(x)=x3F(x)=x^3f(x)=3x2f(x)=3x^2 の原始関数(の1つ)。

x3+100x^3+100 を微分すると 3x23x^2 なので F(x)=x3+100F(x)=x^3+100f(x)=3x2f(x)=3x^2 の原始関数(の1つ)。

exe^x を微分すると exe^x なので F(x)=exF(x)=e^xf(x)=exf(x)=e^x の原始関数(の1つ)。

他にもいろいろな関数の原始関数を積分公式一覧で紹介しています。

原始関数の自由度

原始関数には定数差の自由度があります。つまり,F(x)F(x)f(x)f(x) の原始関数なら,任意の定数 CC に対して F(x)+CF(x)+Cf(x)f(x) の原始関数です。

逆に,それ以外の自由度はありません。

F1(x)F_1(x)F2(x)F_2(x) がともに f(x)f(x) の原始関数ならば,(F1(x)F2(x))=f(x)f(x)=0(F_1(x)-F_2(x))'=f(x)-f(x)=0 より F1(x)F_1(x)F2(x)F_2(x) は定数の差しかない)

原始関数の存在

連続関数には原始関数が必ず存在することが知られています。

ですが,不連続関数の場合,原始関数が存在するとは限りません。

また,原始関数が存在しても,それが初等関数で表せるとは限りません。そのような例を以下に示します。

ex2dx\displaystyle\int e^{-x^2}dx-\infty から \infty での定積分はガウス積分

sinxxdx\displaystyle\int \dfrac{\sin x}{x}dx00 から \infty での定積分はディリクレ積分)

sinx2dx\displaystyle\int \sin x^2dx-\infty から \infty での定積分はフレネル積分

1logtdt\displaystyle\int\dfrac{1}{\log t}dt00 から xx までの定積分は対数積分と呼ばれる xx の関数)

ettdt\displaystyle\int\dfrac{e^t}{t}dt-\infty から xx までの定積分は指数積分と呼ばれる xx の関数)

1k2sin2xdx\displaystyle\int\sqrt{1-k^2\sin^2x}dx00 から π2\dfrac{\pi}{2} までの定積分は第二種完全楕円積分と呼ばれる kk の関数)→楕円積分の意味と身近な4つの例

14t3atbdt\displaystyle\int\dfrac{1}{\sqrt{4t^3-at-b}}dtxx から \infty までの定積分は xx の関数で,ワイエルシュトラスのペー関数の逆関数)

補足

原始関数の厳密な定義は下記です:

F(x)F(x) が開区間 (a,b)(a,b) 上で連続かつ微分可能なとき,その導関数を f(x)f(x) とおく。このとき,F(x)F(x)f(x)f(x) の原始関数と言う。

例えば,y=1x2y=-\dfrac{1}{x^2} という関数は x=0x=0 で定義されていないので,

  • 区間 (2,3)(2,3)(3,2)(-3,-2) で考えれば原始関数 y=1x+Cy=\dfrac{1}{x}+C を持ちますが,
  • 区間 (1,1)(-1,1) では原始関数を考えません。

原始関数は英語で antiderivative, primitive function などと言います。antiderivative の方がメジャーっぽいです。

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